2017年5月13日 更新

モードといろは長屋 初夏の根津 | 東京フリープラン

今、谷根千という通称で人気の谷中 根津 千駄木。 根津・谷中にスポットを当てて散策してみました。

根津 町のお寺

根津 町のお寺

百日紅か花桃らしき植栽が満開の根津。

岡場所、墓参り、根津権現 時代劇の「チョイ役」 根津

フジテレビ公式サイトより (24413)


根津と聞いて、時代劇と落語が好きな人が真っ先に思い浮かべるのは「いろは茶屋」「いろは長屋」「根津権現」じゃないんだろうか。
根津、谷中は江戸の昔は岡場所というお土地柄で、吉原と違って庶民的なそういうお店が集っていただとか。
駒込と上野の谷間の地理から谷中と呼ばれたこの街は、鬼平犯科帳でもいろは茶屋というエピソードで登場する下町でも特にディープな正統派の下町といえるのかも。

根津の喫茶店”カヤバ珈琲”

根津の喫茶店”カヤバ珈琲”

このレトロさを見てもわかるように「残ってる」街なのですね。
谷中商店街の夕暮れ

谷中商店街の夕暮れ

優しい雰囲気に満ち満ちた商店街。
「おかえり」があちこちで聞こえるそんな時間。
根津エリアは気楽な食事向き

根津エリアは気楽な食事向き

優しい灯りに袖引かれて入ったら、値段も味も優しいわけです。
飲まないわけには、いかんでしょう?

谷根千の一日散策


食べログ、ネット検索なしで東京を散策するという企画の東京フリープラン。
最初に選んだのが今、谷根千という通称で訪問者の増えている根津になりました。

谷中の肉屋 鳥勝

谷中の肉屋 鳥勝

焼き鳥、鳥チャーシュー、合鴨。
お惣菜がその場で食べられる鳥勝。
緑茶と塩おむすびがあったら◎なんだけど。

今回の取材先が根津になったのは、弥生美術館で開催されている、長沢節展に元々来る予定だったというものすっごくシンプルな理由で、単なる美術館訪問の足を少し伸ばそうという理由です。


長沢節展

長沢節展

完成度の高い笑顔を見せるセツ。
きっと知らない人が多いのだろうけど、日本のモードシーンの開祖なのです。

さて。
根津が下町の中でも風情が強く残ったのはなぜなのか?
それは戦災を運良くくぐり抜けていたから。
大正時代から残っている雨樋に緑青が吹いた沢山の建築物で、しっとりした情緒が体感できる散策向きの街なのです。

ご当地根津の有名スポット、根津権現はヤマトタケルが建立したという東京十社の厄除け神社。
その御利益は保証付きと言えるかもしれない。

根津の散策は今回、二回に分けてお送りします。


傍から見たら何の脈絡もなく突然店に入って行く台本が0の取材。
無茶振りをキャッチしてくれる同行者とまずは弥生美術館へ。

弥生美術館外観

弥生美術館外観

東京ではめったとない、情緒のある箱。
竹久夢二美術館

竹久夢二美術館

弥生美術館は竹久夢二の作品専門の美術館も併設。

生誕100年 長沢節展 流麗なる世界へコンニチハ

長沢節展で販売している絵葉書

長沢節展で販売している絵葉書

セツはこうしたイラストを、今から70年以上も前から毛筆と墨で書いていた。
(~1970年まで毛筆)
現地で販売中、@120円。
写真立てに入れれば立派なインテリアに。
長沢節展で販売している絵葉書

長沢節展で販売している絵葉書

かなりの数が絵葉書として販売中。
コンプリートする値打ちは十分あるのかも。


根津から始まった散策の目玉目的の長沢節展。「その人、誰?」と思ったそこの人。
長沢節は多才・多彩な芸術家で、エッセイや映画評論、水彩画までいろんな足跡を残している美の世界の巨人の一人。
一言で日本での彼の立ち位置を紹介すると、デザイン画の元祖と言うのが早いと思う。


デザイン画というと、アパレルやデザインの世界の人以外はピンと来ないかもしれない。
どんな服も製造される前に、工房の中の人達がこういうイラストを描き起こして、そこからパターンが起こされて縫製にまわり製品化されている。
バタフライエフェクトの最初の羽ばたきのような不思議なイラストがデザイン画。

一体日本では誰がはじめにこうしたイラストを描いたのか?
諸説あるのだとしても、間違いなくセツが「発信する目的」でイラストを描いたはじめの一人。
セツの殆どのデザイン画・イラストのモデルの表情は、解放感に溢れた顔だったり、自分がきれいであることを誇ったり楽しんだりしている。

それまでずっと社会に振り回されてきたファッションが自発的存在に変化したのは、日本ではセツの存在があってこそ。
何かの付属品に過ぎなかったファッションとアパレルが、魂を吹き込まれてレジスタンスや表現の一環に昇華したのです。

ところでなんで弥生なの?

弥生美術館はなぜ弥生なのか?

弥生美術館はなぜ弥生なのか?

一秒で理由が理解できた石碑。

ところで、道中「弥生美術館の弥生って何なのかね」と、なにか大げさな理由があるのだろうと思ってあれやこれやと妄想した秘密が散策の第一歩で判明。


シンプルすぎるその理由は「近所で弥生式土器が発見された」と言うもの。
2017年の肩透かしランキングで間違いなくTop10に入りそうな何の感動もない発見でした。


へそだし、見せ下着 流行を10年先取り

セツ・モードセミナー 公式ブログ

セツ・モードセミナー 公式ブログ
この場所が失くなるという事に激しい喪失感を感じる。


ところで、今回セツのデザイン画を時系列に並べた展示を見てしみじみスゴイなと思ったのが、御年70歳を過ぎてからもセツが描いたイラストは10年後に必ず実現していたこと。
デザイン画の淡い色合いの向こう側に未来が見えていた老人の脳内は一体どうなっていたのかと心底感心した。


昭和40年、50年のファッションショーの写真は、審美歯科がなかった時代を反映してモデルの歯に隙間があったり、表情が研究されていなかったのか個性的でネイキッドなものだった。
デザイン画に顔と表情があるセツにとっては、むしろ今の時代のショーはつまらないのかもしれないと少し考えた。


残念ながら、こういう企画展は中々目にする機会がありません。
理由は至って単純。
大きな都心の美術館でやるのには不向きな規模だから。
展示イラストのオーナーらしきクレジットもディオールとか錚々たる銘が入っているものの、点数や商業的価値(※)の諸事情があるわけです。。


弥生美術館の規模感あってこその企画なので、終了日の6月25日までにぜひ見にいかれたい。

※:美術品のオーナーはこうした企画展に作品を貸し出すことで、入場料売上をシェアしていたりします。金持ちは死んでも損しない、の典型例。


長沢節のイラスト

長沢節のイラスト

帰りに一服 ゆるさ満喫の下町カフェ 港や


散策取材ということで、他のカフェに行く予定もあり。
本当は入る気がなかった併設のカフェも、エントランスの雰囲気に惹かれて結局行っちゃいました。。
店で手持ち無沙汰だった人が仕込みなのか、家事の一環なのか、れんこんを剥いて水につけたりしているゆるさ。
めっちゃ気さくな接客も下町クオリティーで、この場所じゃないと存在し得ない空間。

大正時代くらいで時計の針が止まった窓の外の景色がこのまま残ってくれてることを願って今日はサヨウナラ

小腹も空いているし、次のお店へ・・・

続く


夢二カフェの窓から

夢二カフェの窓から

写真では伝わりきらないうるおいがある独特のファサード。
夢二カフェ 港や

夢二カフェ 港や

弥生美術館(竹久夢二美術館)併設の夢二カフェ。
都心ではまずありえないゆるさと、窓の外の景色が秀逸。

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この記事のキュレーター

マイケル マイケル