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【社説】

森林除染偽装 不正は絆を弱くする

 福島第一原発事故に伴う除染作業で不正請求があった。住民の安全と安心のために除染は必要だ。だが、費用は税金。関係者は不正が起きにくい仕組みを整え、チェックも厳しくしてほしい。

 問題が明らかになったのは、福島市松川町の森林除染。三次下請けのゼルテック東北が、通常の森林除染を工事単価の高い竹林と偽装していた。本紙の報道を受けて同市は十一日、記者会見して「過剰請求額は一千万円超。刑事告訴も検討する」と述べた。

 福島県内の除染作業は、旧警戒区域や旧計画的避難区域で放射線量が高い地域は国が実施計画を策定、実施する除染特別地域と、市町村が行う汚染状況重点調査地域がある。除染特別地域は大手ゼネコンなどが請け負い、市町村の除染は地元企業が多い。

 今回のケースも市内の企業三社がつくる共同企業体(JV)が二〇一四年から昨年まで約十八万平方メートルの除染を受注していた。

 ゼルテック東北は約二千六百平方メートル分について、工事完了報告書に短く切った竹を並べて竹林に見せ掛けたり、画像修整ソフトを使って写真を加工したりした。同市は「写真で確認し、疑いを持たなかった」と話す。

 しかし、現地を見た本紙の記者は「驚いた。写真の場所も、周りも、太い竹はなかった」と話している。除染の工事単価は一平方メートルあたり約五百円だが、竹林は伐採が必要なので約四千六百円が加算される。竹林だけでも現場をチェックするようにしていれば不正は防げたはずである。

 同市は昨年十一月に内部告発があるまで現地を見ていなかったという。これでは、不正は一社だけなのかという疑問も出てくる。他の事業者についても調査が必要ではないのか。

 東日本大震災の被災地復興のために今、国民は復興特別税を納めている。復興の役に立てばと思うから応じているのである。しかし、今年三月にも環境省の職員と業者が贈収賄で逮捕されるという事件が起きた。信頼を失うことがないように努めてほしい。

 今回の偽装の特徴は画像修整ソフトの使用である。写真の中のホワイトボードの数字が書き換えられていた。ソフトを使えば、写っていないものを加えたり、写っているものを消したりできる。最新の技術を使えば、音声も動画も加工できる。フェイクニュース(偽ニュース)だけでなく、偽データにも気をつけたい。

 

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