日本郵政が不動産大手の野村不動産ホールディングス(HD)を買収する検討に入ったことが12日、分かった。郵政グループで都市部に持つ商業施設を活用し不動産収入を伸ばすため、野村不動産の開発ノウハウを得て収益基盤を強化する狙いがある。買収に伴う株式取得額は最大で数千億円規模になりそうだ。
複数の関係者が認めた。野村不動産HDの時価総額は約3900億円で、2016年9月時点で、証券最大手の野村ホールディングスが関連会社を通じ33%超を保有する筆頭株主となっている。日本郵政は12日夜、「新たな資本業務提携について様々な可能性を検討しているところだ」とのコメントを発表した。
買収はTOB(株式公開買い付け)の実施が有力とみられるが、一部の株式の取得にとどめる選択肢もあり、規模と出資方法はともに今後詰める。日本郵政は出資先の海外子会社の減損処理をしたばかりで、慎重な対応を求める声もある。買収額などを巡って交渉が難航する可能性がある。
日本郵政の郵便事業は、宅配便が過去最高の配達数になる一方で、インターネットの普及で郵便物の取扱数は減少が続く。新たな収益源として、遊休地を活用した不動産開発を加速する方針を示していた。
JR東京駅前の旧東京中央郵便局を建て替え、大型商業ビル「JPタワー」として再開発した。ビル開発のほか、日本郵政の不動産関連事業としては都市部中心にマンションも展開する。07年の民営化以降、全国に2万以上ある郵便局をはじめ、国内に保有する不動産資産をどう活用するかが経営課題になっていた。
日本郵政側の狙いとしては、野村不動産と共同で不動産開発に取り組むことで、全国の都心部にある郵便局の再開発を通じ、収益力を一段と高められると判断したもようだ。
日本郵政は15年5月、海外事業を強化するため、オーストラリアの物流最大手トール・ホールディングスを買収したが、その後、巨額の損失が発生した。一連の損失を17年3月期に計上した影響で、連結最終損益は400億円の赤字に転落する。15年11月の上場以降株価が伸び悩むなかで、収益力とともに企業価値の向上も急務になっている。
野村不動産HDは、「プラウド」ブランドでマンションを販売し、野村不動産を中核とする持ち株会社。17年3月期の連結売上高は5697億円、営業利益は773億円だった。