通商政策で合意 中国、牛肉輸入解禁
【ワシントン清水憲司】ロス米商務長官は11日、米中両政府が貿易不均衡是正へ向けた「100日計画」の具体策について合意したと発表した。牛肉や液化天然ガス(LNG)の対中輸出を拡大する一方、中国が主導する経済圏構想「一帯一路」について米国が重要性を認め、14、15日に北京で開催される国際会議に代表団を送ることでも一致した。米中両国が通商や国際枠組みで接近した形で、トランプ政権が日本への要求を強める可能性もありそうだ。
米、「一帯一路」会議へ
4月の米中首脳会談で両国が合意した「100日計画」の第1弾。中国は米国産牛肉について過去の牛海綿状脳症(BSE)発生を理由に輸入を禁止してきたが、7月までに解禁するとみられる。米国からのLNG輸出も中国向けの承認手続きを緩和して輸出増を促す。中国が電子決済や信用格付けなど金融サービス業の一部で米企業の参入を認めるほか、米国が中国企業による対米投資を歓迎することでも合意した。ロス氏は記者会見で「非常に大きな動き」「米中通商史の中で成し遂げてきた以上のものだ」と成果を強調した。
国際的な枠組みでも協力関係を演出した。中国がアジア、欧州、アフリカへの影響圏拡大を目指す一帯一路構想について、「重要性を認める」として積極的に評価する姿勢に転じた。オバマ前政権は容認しつつも「国際的な融資・投資基準に沿うべきだ」とけん制し、構想の一環であるアジアインフラ投資銀行(AIIB)には主要7カ国(G7)中、米国と日本だけが参加していない。AIIB参加の可能性を問われたロス氏は「(首脳会談後の)短い期間では協議されていない」として明言を避けた。
トランプ大統領は選挙戦中、最大の貿易赤字相手国である中国への強硬姿勢を鮮明にしていたが、中国から牛肉や金融サービスなどの市場開放という成果を得たことで、態度を軟化させた形だ。ただ、鉄鋼や為替問題など両国の利害がぶつかる問題は先送りした。
一方、トランプ政権は日本に一段の市場開放を求めて2国間の通商協定交渉を要請する構え。中国との交渉結果をテコに要求水準を引き上げる可能性がある。