驚異の繁殖で拡大 ナガミヒナゲシとは

驚異の繁殖で拡大 ナガミヒナゲシとは
道端や駐車場などで最近よく見かけるオレンジ色のかれんな花。
ナガミヒナゲシと呼ばれ、この季節に花を咲かせますが、実は外来植物で、在来の植物や作物に影響を与える可能性がある、ちょっと「やっかい」な植物なんです。いったいどんな植物なんでしょうか?
(首都圏放送センター:大野桃記者)
東京・府中市にある住宅街。

道端の塀と舗装の間、砂利がまかれた駐車場など、あちらこちらに咲くオレンジ色のかれんな花、ナガミヒナゲシです。

街の人たちに話を聞くと、「かわいいからよく摘んでいます」といった声や「最近よく見かけるようになった」といった声が聞かれました。
中には、「道端にあったのを娘さんがきれいだからと数本庭に植えたら、去年あたりから株が増えて芽を出してきて咲いている」といった声も。

実際に植えた場所とは別の場所にも生えていたのです。

住宅街のあちこちで咲くオレンジの花

東京・府中市にある住宅街。

道端の塀と舗装の間、砂利がまかれた駐車場など、あちらこちらに咲くオレンジ色のかれんな花、ナガミヒナゲシです。

街の人たちに話を聞くと、「かわいいからよく摘んでいます」といった声や「最近よく見かけるようになった」といった声が聞かれました。
中には、「道端にあったのを娘さんがきれいだからと数本庭に植えたら、去年あたりから株が増えて芽を出してきて咲いている」といった声も。

実際に植えた場所とは別の場所にも生えていたのです。

驚くほどの繁殖力

例年、5月のこの時期、かれんな花を咲かせるナガミヒナゲシ。
ケシ科の一種で、地中海沿岸が原産の外来植物です。

大きな特徴が繁殖力の強さです。
この花の生態に詳しい東京農工大学大学院の藤井義晴教授によりますと、ナガミヒナゲシは、日本では1961年(昭和36年)に東京・世田谷区で初めて発見されました。
その後、80年代には西日本や九州に広がり、さらに、この10年で生息の範囲が全国各地に広がったのが確認されています。
どうしてこんなに繁殖が広がったのでしょうか。

その理由、実は私たちの生活と深く関係していたのです。
ナガミヒナゲシは、一つの実に1600粒ほどの種が入っていて、多い時には1つの個体から15万粒ほどの種を放出します。
その種子の直径は0.6ミリほどと、ほかの植物に比べて小さいのが特徴です。
この種子が車のタイヤや靴底にくっついて運ばれ、道路沿いなどで繁殖するとみられているんです。

特に、これからの梅雨は種子ができる季節。
今よりもさらに分布が広がる可能性があるんです。

“ちょっと嫌がらせをする”作用も

ナガミヒナゲシは、国の特定外来生物や要注意外来生物には指定されていません。
栽培が許され、花として楽しむこともできますが、在来種などほかの植物に“ちょっと嫌がらせ”をして、影響を及ぼす可能性があるというのです。

藤井教授がその影響を調べた実験では、レタスの種を単独で植えたプランターとナガミヒナゲシを一緒に植えたものを用意し、その成長の違いを比較しました。
その結果、ナガミヒナゲシを一緒に植えたプランターのレタスの根が、単独で植えたものに比べて、あまり伸びていないのが確認されました。
ナガミヒナゲシのアレロパシー活性と呼ばれる作用が働いて、ほかの植物の成長、実験ではレタスの根の成長を抑えたと考えています。

藤井教授は「影響は農薬、除草剤ほど強い活性ではなく、ナガミヒナゲシがあるからといって周りの植物がばたばた死んじゃうとかはありませんが、少し成長を抑制する、嫌がらせをする感じだと思います」と話していました。

駆除するにも注意が必要!

「農地や庭などに生育しているのを見つけたら必要に応じて駆除する必要がある」と藤井教授は指摘しています。

取り除く際にも注意が必要です。

種が小さなナガミヒナゲシは、慎重に作業を行わなければ、取り除く際に種をまき散らして、逆に分布を広げてしまうことになるからです。

このため、本来は種ができる前に取り除くのが好ましいということですが、種をつけてしまった場合は、種をまき散らさないように、花がついている部分をまずは袋に入れて、その後で根を取ることがコツだということです。
そして、最後に、ナガミヒナゲシを取り除く際に、じかに手で根を引っこ抜くと手がかぶれることもあるそうなので、作業用手袋をつけることも忘れないようにしてください。