彼女が去った訳は、彼の中で疑われない絶対的な正しさのため


ちょっと聞いてくださいよー

一時的に派遣されてきていた彼女は、ちょっと離れたところにいるひと仕事終えてだらだらしている私たちのところに延長コード貸してくださいとか用事を作っては来て、あの人ひどくないですかー!そんな教わってもないのに教えたでしょって知りませんよ!!とかなんとかいろいろ吐き出してからまた持ち場に戻っていく。

それで私たちは、あっはっは、そりゃひでえな。まあいちいち真に受けてたら身が持たねえから、スルーして。スルー、スルースキルを鍛えるのがこの世知辛い現代社会を生き抜いていくためのコツだよとかなんとか適当なことを言ってなだめる。

何度も繰り返された光景。私はその例のあの人とは業務上直接関わることはなかったが、同じフロアーで仕事していたので、その例のあの人が周りの人から避けられていく状況を私は何度も見させられていた。

そして、もう辞めるんです。あそこで働くのもう無理。いろいろ話聞いてくれてありがとうございました。お世話になりました〜

と言われたのが彼女と話した最後だった。

あとから何があったのか上司から聞いた。

積んであったダンボール箱が作業中の彼女に向かって崩れた。
それで例のあの人はすっ飛んで行った。

真っ先にチェックしたのは、彼女ではなく、ダンボール箱の中身の商品だった。

幸い彼女にケガはなかったし、命に別条はなかった。しかし、その対応は問題ではないか。彼女は派遣元に訴え、それで派遣元からこちらにクレームが来たとのことだった。

例のあの人は取引先の担当者には気に入られ、それである案件の管理者として業務を続けていた。

受け持った案件に対しての責任は十分過ぎるほど持っていた。もう何年も土日と正月以外一度も休んだことはなく、またミスを防ぐためのチェック体制を二重三重に構築し厳格に運用していた。

まじめで一生懸命な努力家なのは間違いない。
その行動は悪意から来ているわけではない。
だから、悪い人ではない。

業務の手順、運用は熟知し、完璧に動かしていた。
彼は正しいし、間違っていない。

もちろん、取り扱っている商品は、その業務において重要なもので、傷つけたり壊したりすれば大問題になる。
商品を気にするのは当然だしそれは正しい。

では何が問題だったのか?

通常通り業務が進行しているときであれば、問題はない。
でも予想していなかった緊急事態。
優先度を状況に応じて判断しなくてはいけない事態が起こる。

自分の受け持ちの現場で人が怪我したかもしれないことと、商品が破損すること、どちらが先に対処しなくてはいけないことなのか?

それを考えることができないほど、業務の遂行は彼の中では絶対的に重要なことになっている。

何かと比較してどの程度優先順位が高いのか、判断するという発想が彼の中にはない。

話し合ったとしても、彼の中で彼は絶対的に正しいので、間違っているなどということは受け入れられない。

以上、残念ながらどうにもならない。

ありきたりなやり方では。

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