人狼×JホラーADV レイジングループ 公式ケムコが送るアドベンチャーゲーム!レイジングループのレビュー行くぜ!
俺が遊んだのはVITA版ね。
メーカー:ケムコ
機種:VITA/PS4ダウンロード専用ソフト
ジャンル:ホラーサスペンスノベル
発売日:2017年1月11日(VITA) 2017年3月1日(PS4)
価格:3000円(税込)
備考:PS4版かVITA版のどちらかを買うともう片方が800円になる。トロフィーは共通。
PC版がSteam Greenlightに登録中。
人狼ゲームをモチーフにしたストーリーが展開されるJホラーでループ物なホラーサスペンスADV。
旅の途中に偶然訪れた山奥の村で「黄泉忌みの宴」という儀式に巻き込まれた主人公が、
一度死んでも特定のポイントからやり直せる「死に戻り」の力を使って
惨劇を繰り返しながら謎を解いていく。
古くからの風習が数多く息づく集落で展開される犯人捜しの殺人ゲーム!
脱出不可能な状況で、犯人を殺さなければ死体が増える!犯人当てを外しても死体が増える!
誰が犯人なのか!吹き荒れる疑心暗鬼の嵐!
スマホで好評を博したタイトルの移植版で、移植に当たり新規キャストも加えて全編フルボイス化され、
背景イラストや一枚絵の追加で演出の強化、
ボーナスボイスやおまけエンディングの追加なども行われたパワーアップ版になっている。
ケムコのADVは「トガビトノセンリツ」「デスマッチラブコメ」にと、
WiiUに移植されたタイトルはどちらもプレイ済みで面白かったので、
レイジングループも期待して購入。
結果、プレイ開始と同時に一気に引き込まれて睡眠時間ガリガリに削られるくらいにハマったわ!
練り込まれた人物描写と次々にひっくり返されるシナリオが圧巻。
ボリュームも十分だしこれが3000円とかありえない満足度だった。
正直、まだやってない人だったらこのレビュー読まずに即買って欲しいぜ。

ゲーム自体はオーソドックスなノベルADVで、
文章を読み進めつつ、たまに登場する選択肢を選んで進行させていく。
物語はバイク旅行者の「房石陽明」が道に迷って事故を起こし、
通りすがりの女子大生である「芹沢千枝実」に助けられるところから始まる。
古くからの迷信や風習が色濃く残る集落に案内され、
お約束通り村民から煙たがられているところで殺人事件が発生。
犯人は「おおかみ」であると断言され、
村人の中に紛れ込んだ「おおかみ」を探す殺人儀式が始まってしまう。

物語の核となるこの殺人儀式の「黄泉忌みの宴」は実在の人狼ゲームをモチーフにした儀式で、
村人の中に紛れた「おおかみ」を話し合いで決めて処刑していくものだ。
人間と「おおかみ」それぞれにルールがあって、
人間は話し合いで1日に1人殺せる。「おおかみ」は1晩に1人必ず殺さなければならない。
また、人間側にはランダムに振り分けられる加護がある。
一晩に1人だけ、選んだ人間が「おおかみ」かどうかを調べられる「へび」。
2人に与えられる加護で、お互いのことを知ることが出来る「さる」。
話し合いで殺された人間が「おおかみ」かどうかを知ることが出来る「からす」。
選んだ人間を1人だけ「おおかみ」から守る事が出来る「くも」。
この4種類。
人間側はこの加護を活用して早急に「おおかみ」を見つけて殺さなければならない。
さもなければ人間が全滅し、「おおかみ」の勝利となる。

自分たちの中に人間ではない存在が紛れ込んでいて、毎晩殺人を行う。
そんなバカな話があるか……と思うのが当然だし、村民たちの中にも半信半疑の人間がいる。
それでも殺人は起こるし、宴を終えるまで村から出ることが出来なくなるし、ありえない怪物も姿を見せるのだ。

主人公はこの状況で「一度死んでもバイクで道に迷う日時まで記憶を引き継いで戻れる」という能力をゲット。
このループ能力を活用して謎を解くことになる。
システムとしては単純で、特定のポイントである選択肢を選ぶと「KEY」が手に入り、
関連した場面で新しい選択肢がアンロックされる仕組みだ。
例えば、最初に到達した段階だと主人公が「絶対に出るな!」と言われた場所から出て殺されるけど、
やり直して同じ場所までたどり着くと出ない選択肢が選べるようになる、みたいな感じ。

親切なチャート機能があるので、
「KEY」の取り逃しや見ていないエンディングは簡単に確認できる仕様になっているぜ。

主人公は集落に渦巻く謎を解くために何度も何度も死んでループして、
糸のように細いヒントを必死でかき集めなければならないのだ。
シャドウゲイトのケムコらしくなってきたぞ!

宴を取り巻く村人達がまた一癖も二癖もある連中揃い。
こちらは主人公を偶然助けた女子大生の芹沢千枝実。
ノリが良くてエロエロなところもある明るい女の子だ。
でもちょっと明るすぎるかもしれないね!

ミステリアスな雰囲気の回末李花子。
神職で村に隠された多くの謎を知るキャラでもあるが、天然っぽいところもあってクソあざとい!
年齢設定も含めてあざとい!お気に入りのキャラです。

村には高校生たちもいる。
若いだけあって感覚的には主人公に近いが、
それぞれ普通の悩みから普通じゃない悩みまで色んなものを抱えている。
モッチーこと醸田近望の先が読めない言動や、
頭が良くしっかりと発言をする織部泰長によって宴は更に複雑なものになっていくのだ。

こちらは最初の出会いの印象が悪かったせいもあって、
やたら主人公に突っかかってくる女子高生の巻島春。春ちゃんだ。
このツンツンっぷりが可愛くて……非常に良し!

名家の次男である能里清之介。
いかにもな田舎の金持ち的なキャラで嫌味たっぷりに状況を引っ掻き回してくれる。
でも、登場人物の中で一番人間らしさが溢れている人でもあって、かなりお気に入りのキャラだ。
こういうキャラに弱いんだよなあ、俺。


村全体を統括する立場にあって宴の掟を遵守し、春ちゃんの祖父でもある巻島寛造と、
若手のまとめ役である室匠の立場の違いも見どころ。

他にも「狼じじい」と呼ばれる気が触れたジジイに、信心深くてキレるとめっちゃ叫ぶ婆さん。
突っ走りまくるヤンキー、2人の息子の事をいつも考えている女将、
正体不明の謎の幼女、ガラの悪いコンビニ店員と、実に個性的なメンバーが揃ってるぜ。

主人公と同じように外部から来た人間もいる。
フリーライターの馬宮久子とカメラマンの橋本雄大のコンビ。
この橋本雄大、見るだけで規格外な存在なのが分かるだろう……!
ゲーム内でどういう役割になるか是非実際にその目で確かめてもらいたい。

そして主人公の房石陽明。
頭の回転が速く知識量もあり、この常識が通じない状況下においても圧倒的なトーク力で場を切り抜ける!
頼もしくて最初はプレイしていて安心できるキャラではあるんだが、
「頼りになる」を通り越すような言動も多く、段々と不安な気持ちにさせられてくる。
っていうかこのゲーム、この主人公が一番頭おかしいのでそこも見どころです!
主人公が最強のゲーム!
色んな意味で本当にひどいキャラなんだが、同じくらい魅力的なキャラでもある。
こいつじゃなきゃ、このゲームの主人公は務まらなかったと断言できる。ステキな糞野郎だぜ。

この登場人物が入り乱れて進行する宴は混乱に次ぐ混乱!
「黄泉忌みの宴」をゲームと捉えるのならば、効率の良いやり方というのが存在する。
しかし実際に人が死ぬし、参加メンバーはほとんどが同じ村の住人。
人間関係が判断を狂わせ、家族関係が人を死なせる。
年少組と年長組による価値観の違いによる対立が起こったり、暴走する登場人物も出たり、
絶対に逃せないチャンスを様子見でふいにしてしまったりと事態は泥沼だ。
4種類の加護も有効に使える時もあれば、逆に状況を悪化させることも。
こりゃ困ったな!主人公に何度も死んでもらってどうにかしてもらおう!

ホラーだけではなく、合間合間にはギャグもあったりで一息つける構成。
ちょっとパロネタやテンション高すぎるノリがくどくて滑ってるところもあるが、
登場キャラがみんな濃いので、色んな意味で酷い会話が多くて笑わされたぜ。
特に李花子さんがひどすぎる……ひどすぎる以外のコメントが出来ない!でも好き。

遊んでいて引き込まれるのがゲームを進めるほどに様々なところで顔を出す「ズレ」。
記憶を引き継いだ主人公の行動で宴の内容や生き残る人間の順番が変化したり、
ループの繰り返し過ぎで主人公の感覚が他の人間とズレてきたりする。
そのズレが連鎖爆発のように予想外の事態を引き起こして、
「そこが変わったら全然違う話になっちゃうじゃん?!」「もう何のゲームだかわかんねぇ!」
と、こっちの度肝を抜いてくるのだ。そうなったらもう止まらない……!
定期的にこちらの頭をぶん殴ってくるような展開を差し込んでくるし、
物語はどんどん斜め上の方向に突き進んでいくので、続きが気になってぶっ通しで遊んでしまうぞ!

フルボイスで本編だけでも30時間以上掛かるボリュームだが、一度完全クリアすると暴露モードが解禁。
「あの時、この登場人物はこういうことを考えていた」
という文章が本編のあちこちに差し込まれるようになり、物語の裏側がより分かりやすくなるのだ。
なんという凝った仕様。
音楽も雰囲気にバッチリ合ってて、俺のお気に入りは推理シーンで流れるBGMかな。

大満足な内容だったが欠点もあったわ。
VITA版だとスキップが遅かったリ、全体的に処理が重めなところ。
既読スキップで暴露モードだけを読みたい時などにちょっと手間。ここはPS4版だと改善されている模様。
あと、デスマッチラブコメでもあったんだが、
物語の謎が明らかになる辺りで「主人公が何かを読んでいるだけ」なシーンが続いてちょっとダレるのと、
ネタバレになるので伏せるが一部キャラの設定が……ってとこだな。
遊んだ人からよく突っ込まれてる点なんだが、俺もファンサービスにしてはちょっとやり過ぎだったと思う。

人間についての物語であり、神についての物語であり、宗教についての物語であり、
最後はやはり人間の物語であった。
膨大なループで語られたすべての物語の終着点となるラストシーンは言葉が出ない。
ぶっ飛んでいて、それでいて圧倒的な筆力で描かれた間違いなく今のケムコの代表作。
イチオシだぜ!
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