ツツミワークスの堤崇代表取締役にインタビュー
マンション大規模修繕専門工事会社として、順調に実績を伸ばしている株式会社ツツミワークス。東京都豊島区に本社を構える同社は、2016年7月期の売上が51億円に達した。
業界の風雲児と注目されている同社の堤崇代表取締役に、業績を伸ばした秘訣、常識を覆した発想、マンション住民目線に立ったサービスなどについて、お話をうかがった。
マンション修繕工事は「居ながら施工」「人間力が必須」
株式会社ツツミワークス 堤崇代表取締役
――ツツミワークスは創業から順調に業績を伸ばし、今期は売上51億円を達成しました。まずは会社設立の経緯について、教えて下さい。
堤 私はツツミワークスを起業する前に、塗装会社の施工部門で働いていました。当時は塗装会社がマンション修繕工事を片手間で請負うのが常識で、「営繕工事」と呼ばれていました。私はこの常識に対して、塗装会社に勤務していた時から疑問を持っていました。
――具体的には?
堤 マンションは外見から分からない状態で経年劣化が進みます。年数が経てば内外壁のひび、設備不良などが進み、住人の暮らしを脅かす可能性が高まります。しかし、マンションは高価な不動産ですので、古くなったからと言って簡単に改築や建替えを行うことができません。
そこで、マンションの大切な価値を保全しながら、外観をより美しくし、より長く安心して住めるような環境を整えるべきだと考えました。そして人間の身体をケアするように、マンションの大規模修繕が必要だという志を抱き、1997年4月、26歳でツツミワークスを立ち上げました。
――ちょうどバブルが崩壊し、マンション新築の需要が大幅に減少していた時代ですね。会社はお一人で設立されたのですか?
堤 はい、独立当時は1人でした。私は現場あがりの人間ですから、当時は1人でなんでもこなしてきました。マンション新築工事の需要が落ち込む中でも、修繕工事の需要は堅実に確保できたため、次第に業績も伸びるようになり、今の役員たちが手伝ってくれるようになりました。
売上は設立5年目に10億円、10年目に25億円と順調に伸び、2016年7月末に20期目を終えましたが、20期の売上は約51億円になりました。
ちなみに弊社の役員は全員、現場の出身です。今は現場に出ていませんが、長年の現場経験を活かし、経営にあたっています。
――ツツミワークスの成長の原動力や強みは、経営陣の現場経験のほかに何かありますか?
堤 人間力こそ弊社の宝だと思っています。マンションの大規模修繕工事と新築工事との大きな違いは、住民が「居ながら施工」する点にあります。そのため、われわれはマンション住民の方々と、より近い位置で仕事を進めなければなりません。
マンションに住んでいる方々に対して誠実に接し、住民の方々が快適な工事を実践する上で肝要なのは、やはり人間力、コミュニケーション力だと思います。工事の後に「ありがとう」と感謝される仕事を目指しています。
マンション大規模修繕の専門会社として業界をリード
ツツミワークスの設立20周年記念ポスター
――今後の見通しはいかがですか?
堤 現在、弊社の売上の半分以上は、マンションの大規模修繕です。民間工事が90%を占め、残り10%は、東京都住宅供給公社(JKK東京)や都市再生機構(UR都市機構)などの公共工事です。10年前までは、元請け会社からの下請率がほぼ100%でしたが、この10年間で元請化を進め、今は元請・下請の割合は半分ずつになりました。
日本におけるマンション大規模修繕の市場規模は、右肩上がりに伸び続け、現在は約6,500億円規模と言われています。大規模修繕に対する需要は今後も伸び、2025年には7,000億円近くに伸びていくという予測もありますが、弊社はマンション大規模修繕の専門会社として業界をリードしていく決意を抱いています。
ただし、会社の売上を55億、60億円と伸ばすというよりも、まずは、しっかりと足腰を強めていくため、50億円の売上をしっかりと安定的に確保していく体制を整備していこうと思っています。
――市場規模が拡大する中でも、会社の売上拡大は第一目標ではない?
堤 弊社は短期間で十分に成長し「量」の部分は達成しました。創業から20年間は大規模修繕を確立した年月でしたが、これからの5年間は「量」から「質」へ会社組織を再構築していく変革の時を迎えると考えています。
質の向上により、施主様やマンション住民の方々から信頼を獲得することが求められている時代です。当然のことながら、工事の品質確保や工期遵守はこれまで以上に追求しますが、それに加えて、安心感のあるマンション大規模修繕会社としてのポジションを確立していこうと思います。
――会社として次のステージにコマを進める段階にあるということでしょうか?
堤 はい、例えば弊社では、住民の方々に対して工事内容を「見える化」するため、他社に先駆けて独自に開発したデジタルサイネージ「PRETTO(プレット)」を現場に導入しています。
また、弊社の施工管理技士だけでなく、協力会社の建設職人の方々のマナー向上にも注力しています。住民の方々に対して欠かさず挨拶し、住民の皆様から安心感を持っていただけるマンション大規模修繕会社となるように努めています。
——「居ながら施工」では安全面も重要ですね?
堤 安全面には特に注力しています。住民の方々はもちろんのこと、作業員の事故、第三者災害の区別なく、事故を未然に防ぐことは、建設会社として当然のことだと肝に銘じています。
同時に協力会社の建設職人の方々への安全配慮、そして福利厚生にも力を入れております。
デジタルサイネージ「PRETTO」を現場に導入
デジタルサイネージ「PRETTO」
――デジタルサイネージ「PRETTO」の具体的な役割は何ですか?
堤 「PRETTO」はマンション大規模修繕工事の情報をディスプレイに表示する機械です。工事現場に設置することで、今どのような工事をし、今後どのような工事を行っていくかをマンションの住民の皆様に知っていただくため、目に触れやすいエントランスに設置しています。
「居ながら施工」でのマンション大規模修繕工事ですから、住民感情を様々な角度からフォローする必要があります。とりわけマンションの住民の方々が不安に覚えるのは「工事中でも洗濯物を干せるのか?」といった生活面への影響ですので、「PRETTO」を通じて、そういった情報をお知らせしています。スマホでもアクセスできますので、高層階に住まわれている方々も、わざわざエントランスに降りずに情報を得ることができます。
さらに「PRETTO」は、作業風景の写真や工事内容もわかりやすく図面をふんだんに使って解説しています。
――住民の方々の評判はどうですか?
堤 マンション住民の方々からは、「PRETTO」は分かりやすくて、便利だと好評です。
最近は副次的な効果も出てきています。例えばマンション住民の方々は普段、マンションの屋上に登ることはありません。「PRETTO」で屋上からの風景をお伝えすることもあり、それが斬新だということで、住民のマンションへの愛着が高まっているという報告もあります。「PRETTO」を囲んでマンション内で新しいコミュニティが生まれているという報告もありますので、こうした活用方法をさらに発展させ、マンション住民の方々のコミュニケーションツールとして活用しようと今検討している段階です。
コミュニケーション能力が高く人間力あふれた人材に期待
――事業成長に伴い、採用活動も拡大していますか?
堤 そうですね。以前は中途人材を中心に採用を幅広く行っていましたが、最近は新卒者も採用するようになりました。新卒採用を始めてから4年目になります。弊社には独自の育成プログラムがありますので、それに沿って採用活動を拡大しているところです。これからの担い手不足に備え、外国人技能実習生も活用しています。
――どのような人材を求めていますか?
堤 繰り返しになりますが、マンション大規模修繕工事は「居ながら施工」ですので、施工技術や現場力に加えて、高いコミュニケーション能力が求められます。足場、タイル、下地、シーリング、塗装、洗浄、防水、シートなどの数多くの専門職種に分類される建設職人の方々が作業しますが、その工程を把握し、マンション住民の方々が工事中でも快適に過ごせる環境を整備することが現場監督に求められます。事前の準備段階から打ち合わせをし、きめ細かくコミュニケーションを取り続けることで、ようやく工事の完了に至ります。そのため理系の学生に限らず、高いコミュニケーション能力を持っている文系の学生にも注目しています。
――実際、文系の学生を採用したことはありますか?
堤 はい。文系の学生も含め、弊社の新入社員は1年目から現場監督を経験し、早い時期に2級建築施工管理技士の資格を取得してもらいます。取得すれば、お祝い金として10万円支給しています。資格学校は総合資格さんを活用していますが、その学費も弊社が負担しています。もちろん、1級建築施工管理技士の資格取得も応援しています。
――ツツミワークスに入社するメリットを、施工管理技士に向かって一言お願いします。
堤 弊社は設立20年を迎え、順調に企業成長してまいりました。「居ながら施工」を行う弊社では住民対応が重要である反面、施主様やマンション住民の方々から感謝の言葉を頂戴したとき、力になれたという達成感をより強く実感できます。柔軟性を持ち時代の変化に敏感な技術者、常識を突き破るような情熱を抱く技術者、高いコミュニケーション力と人間力を持つ技術者にとっては、入社して良かったという体制を整えていますので、ぜひ一緒に会社を運営してまいりましょう。
――ありがとうございました!マンション大規模修繕企業としての成長を期待しています。
会社設立20周年を迎えたツツミワークスは、20周年記念のポスターやオフィスも今っぽくオシャレでした。こうした点にも、建設業の従来のイメージを変えようというツツミワークスの強い意識を感じました。「PRETTO」だけでなく、新しいことにチャレンジする姿勢が、優秀な人材採用と企業成長を成功させているのでしょう。