文在寅氏当選:THAAD・慰安婦合意は見直し、太陽政策に回帰か

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 文在寅(ムン・ジェイン)政権発足と同時に、外交・安保政策は大きな枠組みの変化が予想される。第19代韓国大統領選に当選した文在寅氏側は「韓米同盟に基づいて国益を最優先する実用路線をとる」としながらも、朴槿恵(パク・クネ)政権が推進した在韓米軍による終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備、開城工業団地稼働中止、韓日慰安婦合意などを挙げて「外交・安保・南北関係を台無しにした事例だ」と批判してきた。

■THAAD配備過程を調査か

 文在寅氏がこれまでの公約を実行するには、まずTHAAD配備が問題になる。文在寅氏と所属政党の「共に民主党」はこれまで「配備を中断し、次期政権の国会批准同意を経て決定すべきだ」と主張してきた。THAAD配備決定は拙速だったという認識が強いことから、どんな形であれ政策決定過程に対する調査が行われる可能性が高い。しかし、既に初期稼動に入ったTHAADの砲台を実際に撤収させるのは現実的に見て容易ではない。文在寅氏側の関係者は「我々はTHAAD配備に何が何でも反対しているわけではない。北朝鮮の核問題に状況変化をもたらし、THAAD配備の名分を弱めるのが最も円満な解決方法だ」と語った。

 文在寅政権は米国側からの戦時作戦統制権移譲を任期内に推進する考えだ。朴槿恵政権は当初、2015年に予定されていた戦時作戦統制権移譲の時期を2020年代半ば以降へと事実上、無期延期した。朴槿恵政権は戦時作戦統制権移譲にあたり▲北朝鮮の核の脅威解消 ▲韓国軍の準備完了などを条件として付けていたが、文在寅政権はこの条件を70?80%満たした状態でも戦時作戦統制権移譲に踏み切る考えであることが分かった。現在1年9カ月間の兵役期間を1年6カ月に短縮する件については、段階的に進めてなるべく任期内に完了させることを目標としている。


■「太陽政策」回帰 開城工業団地再稼働

 文在寅政権の対北朝鮮政策は、大きな枠組みで見て金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の「太陽政策(対北朝鮮融和政策)」に回帰するものと予想されている。文在寅氏自身、対談集や複数のインタビューで「太陽政策継承」を宣言している。後に、「北朝鮮が核実験をしなければ…」などの条件を付けたが、「制裁・圧力よりも対話・交流」という対北朝鮮政策の基本理念は維持している。

 こうした見解は「外交・安保政策の成功は南北関係の回復から始まる」という信念に基づいている。文在寅氏側の関係者は「南北関係が行き詰まっていると、米中が韓半島(朝鮮半島)問題を扱う際、韓国の立場を尊重しない構造になっている。南北関係が開かれていてこそ、米中が北朝鮮やその核問題を取り上げる時、韓国と協議する余地が生じる」と語った。

 このため、文在寅政権はできるだけ早く北朝鮮に対話を提案するものと見られる。軍事的緊張緩和が南北交流・協力の出発点だという認識の下、軍事会談をまず提案することが検討されているという。文在寅氏が開城工業団地の再稼働や拡張を重ねて強調していることから、開城工業団地が初の南北対話の議題になる可能性もある。ただし、文在寅氏側の関係者は「昨年の国連安全保障理事会決議第2270号・第2321号採択など、国際社会の全体的な対北朝鮮制裁基調があるので、工業団地の早期再稼働は思っているほど容易でないとの認識は我々も持っている」と述べた。

 南北首脳会談と関連、文在寅氏は先日、米誌タイムのインタビューで、「北朝鮮の核問題解決に役立つ可能性があるなら、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に会う用意がある」と述べた。共に民主党関係者は「精巧かつ効果的な対北朝鮮政策を立てるには、金正恩委員長をさらに綿密に分析する必要がある。そのためにも、金正恩委員長に一日も早く会うべきだ」と述べた。


■慰安婦合意は再交渉

 共に民主党が公約集にうたった対米外交方針は、「軍事同盟と自由貿易協定(FTA)を基盤に戦略的関係を強化し、グローバルな次元での協力を拡大する」というものだ。文在寅氏も先月、本紙とのインタビューで、「早期に訪米し、韓米同盟を再確認する」と言った。しかし、共に民主党支持層の一部には反米感情があるため、こうした方針がどれだけ有効かは未知数との見方もある。何よりも同盟の価値より経済的効用を強調する米国のトランプ政権が韓米FTA再交渉を要求し、THAAD費用問題を取りざたすれば、韓米関係は困難な局面に陥る可能性がある。

 韓日関係では、2015年の韓日慰安婦合意が最大の争点だ。共に民主党は公約集で「慰安婦合意の再交渉などを通じ、慰安婦被害者たちが認め、国民が同意できる水準の合意を導き出す」としている。だが、外交関係者の間では、日本が再交渉に応じる可能性は低いと見られている。THAAD配備で急速に悪化している韓中関係は、文在寅政権発足を機にある程度、回復局面に入ったものと考えられる。