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彼女を愛しているのか、もうよくわかりません。
フェル先生、こんにちは。いつも楽しく拝読しています。私は34歳の社会人男性です。率直に言うと、私はいま妻と離婚しようか悩んでいます。
私は半年ほど前から海外駐在をしており、2週間に一度のペースで年間20回ほど、1〜2週間の海外出張を繰り返す生活をしています。仕事自体は昔からの夢であり、本当にこれ以上ないと思える職に就いていますし、ほとんど休日がない生活でもとても充実しています。
妻とは三年ほど前に知り合い、出会ってから約半年で結婚を決めました。結婚後すぐに子宝に恵まれ、いま一歳半の娘がいますが、妻と娘は数ヶ月後に渡航予定で、今は日本で母娘二人の生活をしています。
私は大学時代から8年弱付き合い結婚も考えていた女性と別れた後、何人かの女性と短い付き合いを繰り返すなかで、30歳を過ぎたあたりで妻と出会いました。共通の趣味があり意気投合したこともありますし、おっとりしてとても優しい子だなと思えたので、他にも良いかなと思える人がいる中で(その人は今思うと価値観が合っていたとは思うのですが、社内だったり金銭感覚が違っていそうという理由で諦めました)、思い切って彼女との結婚を決めました。
ただ、結婚して同棲を始めたあたりから妻の性格がかなり変わったように思え、付き合っていた半年間はほとんどなかった喧嘩が、多い時には週に3度以上あり、怒って深夜に家を飛び出すと言うこともしばしばでした。
私からすると、おっとりしていると思っていた妻が実は非常に気性が激い人で、特にネガティヴな方向に振れることが多いので、怒ったり泣いたりすることはあっても、笑ったり喜んだりすることはほとんどないような気がしています(本当に、少し病気ではないかと心配になるぐらいです)。
おそらく妊娠中や出産直後と言うこともあったと思いますし、彼女からすれば優しかったはずの私がちっともそんな人間ではなかったと言う言い分もあるようです。自分では意識してなくても、それも事実なのかもしれません。
喧嘩の理由の大半は本当に些細なことで、それこそよくあるような、洗濯物のたたみ方や洗い物の仕方だとか、そういう類の話から始まるのですが、そこからエスカレートしていき、互いに酷い言葉を吐いたり、私が軽く暴力を振るわれたりすることもしばしばです。彼女が折れることはないので、基本的に謝るのはいつも私です。
育休を終え、働きながら子供を育てること、ましてやいま私は駐在中なので、シングルマザー状態の生活を送りながら一歳過ぎの子供を相手に怒涛のような生活を送ってくれていることには本当に感謝しています。一方で、離れた生活でラインで連絡を取り合うだけの関係でも、些細なことで腹を立てられ、これまた私が折れないとどうにも収集がつかないような激しい喧嘩が2週間に一度くらいは発生します。
原因は色々あると考えていますが、根本的な部分での価値観が異なることが多く、例えば家族に対する考え方です。具体的には自分の親との距離感などが非常に違っていたり、子育てに対する考え方なども相容れない部分が多くあります。私の実家はいわゆる田舎の大家族で親戚一同仲が良い、一方で彼女は東京の核家族で親戚もほとんどおらず、かつ両親が毎日喧嘩を繰り返すような環境で育っているので、その辺りで埋められない差を感じています。
彼女は仕事を辞めてこちらに来るのですが、果たして娘と二人の時間がほとんどの海外生活に耐えられるのか、またそれ以上に、私と妻が喧嘩を繰り返す環境で育つ娘は幸せなのか。喧嘩がなくなるのが一番良いとは思うものの、おそらくこの二年の間で互いの愛情も薄れている状況で、互いに折れて現状を変えるのが難しいのではと思っています。彼女自身について色々と心配に思うことはあるものの、彼女を愛しているかと言われると、正直、もうよくわかりません。
このような状況なので、離婚をするにあたり、唯一の懸念は娘のことだと思っていますが、すでにこんなことを考えている夫婦の元で暮らすこと自体が幸せでないような気もします。一方で、母子家庭は(偏見かもしれませんが)色々と苦労が多いように思いますし、父親がいるに越したことはないようにも感じています。
妻は「離婚するならお金は要らないから今後私たちに関わるな」というようなことを言っていますが、話をつけるなら妻が退職して海外渡航をする前に決断しなければと思っています。
相思相愛の夫婦を見ると、なぜ自分たちにそれができないのか、情けないですし娘にも申し訳なく思うのですが、フェル先生、こんな私にご助言もしくは厳しいお言葉をいただけますと幸いです。
(34歳・男性・会社員)
A.このご相談は海外から頂いているのですね。当欄の読者層が、海を超えて広がっているのかと思うと、こりゃいい加減な答えはできんなぁとユルフンを締め直しています。いえ別にドメスティックなご相談を軽んじるつもりは無いのですが……。とまれ、不安も多い赴任先からのご愛読、感謝いたします。
34歳で海外赴任となり、そこを拠点に年間20回のペースで出張をこなされる、バリバリのビジネスマンさん。忙しくも充実した毎日を送っておられるのでしょう。文面からも貴君の確かな仕事ぶりが伝わってきます。社会人の生活も、10年を超えた辺りから漸く見えてくることがたくさん有りますからね。海外でみっちり修行を積んで、ビジネスマンとしてのキャリアを着実に積み上げていって下さい。お勤め先は“働き方改革などクソ食らえ”の商社でしょうか。貴君のようなモーレツ社員が、間違いなく我が国の経済を支えているのです。お国のためにもご自身のためにも、どうかこれからもお仕事に邁進されて下さい。 これからの10年の働き方で、貴君の人生は大きく変わります。気を抜かず、緊張感を持ってバシッと行きましょう。
しかし困りましたね。お仕事の方は順風満帆であるのに、日本に残してきた奥様との関係が今ひとつ芳しくない。 交際わずか半年で結婚を決めた奥様とは、同居を始めた直後からケンカが絶えず、その諍いは貴君が単身赴任しても収まる様子が無い。本来であれば、離れて暮らす二人の間には、「大好きよ♡」「僕もさ♡」なんていう、周りから見たら死ねバカ級の嬉し恥ずかしメールが行き交う筈なのですが、現状はLINEメールに於いても、お互いを傷付け合う罵詈雑言の応酬が続いている。これは早急に解決しなければなりません。
貴君は結婚してから奥様の性格が変わってしまった、と仰います。 恐らく奥様も貴君と同じように、貴君の性格が結婚して一緒に住み始めてからコロッと変わってしまったと思っている。 しかし、人間の性格はそう簡単に変わるものではありません。仲違いのお二人は、仲良く揃って結婚に対する“共同幻想”を抱いていたのではありますまいか。 貴君は商社マン(勝手に決めていますが、貴君のお仕事に合うようアジャストして読み進んで下さい)の嫁かくあるべし、とのスタンダードを持っている。夫のことを献身的に支え、健康で文化的な家庭環境を整える事こそが妻の役目だと思っている。貴君の仕事やプライベートには一切口出しせず、「男はオイ」「女はハイ」が有るべき姿だと思っている。
一方の奥様は、近代的な働く夫婦の夫はかくあるべし、と思っている。夫婦関係は基本的に対等であり、家事も育児も平等に分担する。双方ともに収入が有るのだから、家庭内は完全別会計で、値の張る物の購入は、双方協議の上、同意して決定する。そして個の尊重こそが、夫婦愛の究極の姿だと考えている。
結婚前の双方の思い違い、考え方の違いが、ここへ来て取り返しが付かぬほどの危機的状況を迎えてしまったのです。奥様の精神状態を、「少し病気ではないか」と心配なさっておられますが、なに、安心して下さい。奥様も同じように貴君のことを「あの人ビョーキじゃないかしら……」と心配しておられますから。冗談じゃない。俺は正常だ、狂っているのはアッチだ、とお思いでしょうが、その思いもまた、奥様は間違いなく貴君と同じボリュームで持っておられます。
お二人はいつも些細な事がキッカケで、壊滅的なケンカを始めてしまいます。 国家間の戦争でもそうですが、諍いはいつも些細な事が原因で始まります。 そしてその諍いに至るまでには、十分過ぎる「タメ」が有るということを忘れてはいけません。洗濯物のたたみ方や、洗い物のしかた。或いはセルビアの国家主義者が撃った弾丸(ご存知第一次大戦のキッカケとなったサラエボ事件です)は、単なるトリガーに過ぎないのです。長い時間をかけてジクジクと嫌な感じに腫れ上がってきた、タップリ膿を含んだ毒袋を、チョンと針で突いて破裂させてしまった、そんな感じです。破裂を防ぐには、トリガーとなった細かい針を見つけ出すよりも、毒袋の膨張を防ぐ作業に取り組むほうが先決でしょう。
離婚するべきかどうか。貴君は当欄の愛読者ですから、私の回答傾向を熟知しておられましょう。 私は同じようなケースでも、人によって答えを大きく変えることをご存知ですよね。 貴君は絶対に離婚すべきではない。ここは辛抱のしどころです。
核家族で親戚からのサポートも期待できない奥様は、日本で幼子を抱えて孤軍奮闘されている。その苦労は生半なものではありません。海外の最前線で働く貴君は、それこそ毎日が戦争でしょうが、奥様だってそれは同じです。毎日働きながら育児をし、慣れない大家族からの干渉に耐え、たった一人で頑張っている。
ここで奥様と別れるのは、単なる逃亡に過ぎません。 価値観が違う? 相手の両親が不仲? 子育てに対する考え方が違う? そんなことは始めから分かっていた事でしょう。それら全てを含めて、貴君は彼女を選んだのでしょう。 今さら価値観云々を理由にトンズラしようだなんて、それは卑怯というものです。
ここでトンズラ離婚をすると、私は貴君の今後の人生にとても悪い影響が出ると思います。今まで順調に回っていた仕事も、逃げ癖がつくと上手くいかなくなってしまいます。
ケンカ両成敗と言いますが、男と女じゃ男が悪いのです。たとえ多少の非が向こうにあったって、そこは貴君が飲み込みなさいよ。男なんだから。 複数いた女性の中から、何故彼女を選んだのか、今夜あたり胸に手をおいてジックリ思い返してごらんなさい。簡単に離婚を口にするものじゃありません。 気の強い女を選んでしまったのも自分の人生。ここは我慢、辛抱です。
そして良好な夫婦関係を維持するには、それなりに努力と我慢が必要であることを知って下さい。 貴君が相思相愛の夫婦を見て羨ましく思うのは、ベンチウォーマーがフィールドに出ている選手を闇雲に羨ましがるのと同じことです。フィールドに出る選手は、それ相応の努力と我慢をしているのです。
いまのゴタゴタは、3年もすれば笑い話になりますから。あのときはお互い若かったよな、と笑い合える日が必ず来ますから。ここは男気を見せて堪えて下さい。辛抱の先には必ず幸福が待っています。
フェル先生のお言葉
同級生が都民ファーストの会から都議会選に立候補することになりました。港区在住の方、清き一票を入江のぶこにお願いします。入江のぶ子、入江のぶ子でございます。