【動画】絶滅寸前のアムールヒョウ、貴重な母子の姿

野生環境での生息数は60頭未満、自動撮影装置でとらえたレア映像

2017.05.11
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【動画】アムールヒョウ
世界で最も希少なネコ科動物の一つ。ロシアの「ヒョウの森」国立公園のカメラトラップ(自動撮影装置)が母親と2頭の子どもの姿をとらえた。2017年4月28日撮影。(解説は英語です)

 現在、野生に残されているアムールヒョウは60頭未満といわれている。世界で最も絶滅に近いネコ科動物の一つだ。

 アムールヒョウが人前に姿を現すことはほとんどない。しかし最近、カメラトラップ(自動撮影装置)が2頭の子どもとその母親の姿をとらえた。小さな岩場の洞窟でカメラの視界に入ってきたのは、2頭の子ヒョウ。その倍ほどの大きさの母ヒョウは、洞窟の外で待っていた。(参考記事:「黒いサーバルの撮影に成功、小型野生ネコ、ケニア」

 動画が撮影されたのは、中国との国境に近いロシアの沿海地方にある「ヒョウの森」国立公園。この公園は、ロシア連邦政府と世界自然保護基金(WWF)が共同で2012年に設立したもの。現存するアムールヒョウの生息地の60%が含まれている。

 WWFの発表によると、動画に映った子ヒョウは生後約4カ月。ここまで成長すれば、一人前のヒョウの仲間入りをする可能性が高い。(参考記事:「【動画】激闘!ヒョウ vs 巨大ニシキヘビ」

 とはいえ、野生環境での生活は決して生易しいものではない。公園の職員によれば、子ヒョウは他の肉食動物に狙われることもあり、母親は子どもを守るために一瞬たりとも警戒を緩めないという。

 動きに反応するカメラトラップは、アムールトラシベリアトラとも)などの捕食動物の姿もとらえている。子ヒョウがこういった動物に襲われる可能性もあるということだ。(参考記事:「ロシアで野生トラが増加、500頭超に」

 4歳になる母ヒョウには、ベリーという名前が付けられている。このベリーはすでに、ひそかな人気者になっている。2014年、思春期のベリーの姿をカメラトラップで撮影したドキュメンタリーがインターネットで配信され、林の中で1人で転がったりはしゃいだりするベリーは、一躍ネットで話題となった。

絶滅が危惧されるアムールヒョウ

 ヒョウの森国立公園は、2620平方キロメートルほど(東京都の約1.2倍)の広さを持ち、アムールヒョウの存続に関わる重要な保護区域となっている。

 国際自然保護連合(IUCN)は、ヒョウの生息数は世界中で減少していると警鐘を鳴らす。その主な原因は、密猟と生息地の消失だ。さらに、人間との争いも深刻な影響を与えている。人間の居住地への脅威と見なされ、成長する前に殺されるヒョウも多い。(参考記事:「密猟される動物たち」

 なかでも、最も絶滅が危惧されているのがアムールヒョウだ。IUCNのレッドリストでは「近絶滅種(critically endangered)」に指定されている。

 WWFロシア・アムール支部のシニア・アドバイザーは、野生環境で暮らすベリーの姿をとらえたことは大きな成果だとプレスリリースで述べている。「野生に生息する本物のヒョウの家族は、今まで誰も見たことがなかったものです。それが初めて撮影されたのです」(参考記事:「ナショジオだから撮れた!ビッグキャットたち」

文=Sarah Gibbens/訳=鈴木和博

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