年始早々に世間をにぎわせた、文部科学省の組織的な天下り斡旋の報道は、記憶に新しいだろう。調査の結果、事務次官経験者8名を含め、37名が処分(うち懲戒相当16名)を受けた。
大量処分の発端となった、元高等教育局長の早稲田大学教授への天下りについては、以下のことがわかっている(ホームページ等による)。
(1)元局長側が文科省人事課を通じて履歴書を早大側に送り、大学の法人会議で採用が決まった
(2)元局長の大学での所属先は、「大学改革推進」を目的とする法人直轄の「大学教育総合研究センター」だった
(3)大学での主な職務のひとつは「文部科学省等の各種事業関係に関する連絡調整等への関与(大学への助言)を行う」ことだった
つまり、元局長は、文科省との連絡調整役を果たすことを期待され、総長らによって直接採用された。同僚教員で構成される人事委員会の専門的審査と教授会の議決を経て、総長が任命するという、通常の教員選考のプロセスを経なかったわけだ。
監督官庁である文科省から大学への天下りは、今回処分対象にならなかった事例を含めて膨大な件数にのぼる。国立大学では、教職員が非公務員化された2004年の法人化以降、かえって天下りが増加した。
政府・財務省から予算緊縮を求められた文科省は、国立大学法人の運営を支える交付金を年度ごとに1%ずつカットし、競争的な補助金(=各大学が応募書類を作成し、審査を経て支給/不支給が決定されるもの)にふり替えていった。加えて、6年単位の中期目標・計画を設定させ、膨大な実施状況報告を求めるようになった。
そうした国家管理が強まるなか、幹部事務職員や学長・副学長・理事、さらには教員ポストの一部までもが、文科省OBによって占められるようになっていった。
国立大学と同じく競争的な補助金の獲得を目指し、文科省との関係安定化を望む多くの私立大学でも、同じような事態が進行した。
こうした大学の国家統制強化と文科省による大学の省益化と連動して、教育・研究の場に大きな弊害が生まれてきている。
たとえば、明確なハラスメントや故意の研究不正行為とはとてもいえない教育上・研究上・校務上のケアレスミスや“でっちあげ” によって、大学教員が懲戒解雇や停職などの重い処分を受ける事例が頻発している。