“山火事で放射性物質飛散” 批判受け新聞社が紙面で謝罪

“山火事で放射性物質飛散” 批判受け新聞社が紙面で謝罪
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東京電力福島第一原発事故の帰還困難区域で起きた山火事に関連して、放射性物質が飛散するおそれがあるとしたコラムを、和歌山県の新聞社が今月、掲載したところ「風評被害が助長される」といった批判が福島県の農家などから寄せられ、新聞社は9日の紙面で「放射線量に大きな変動はなく迷惑を与えた」と謝罪しました。
和歌山県田辺市の新聞社「紀伊民報」は、原発事故の影響で帰還困難区域になっている福島県浪江町の山林で先月、発生した山火事に関連して、東京電力の元社員の情報として「放射能汚染の激しい地域では森林除染ができておらず、火災が起きれば花粉が飛ぶように放射性物質が飛散するという」と書いたコラムを今月2日付けの紙面に掲載しました。

新聞社によりますと、これについて「風評被害が助長される」とか「デマを広めるな」など批判する電話やメールが合わせておよそ20件、福島県内の農家などから寄せられたということです。

このため、9日の紙面で「福島県の発表では火災現場周辺の空間放射線量には大きな変動がなかった。新たな拡散は心配するほどではなかったという。多くの方に心配をかけ、迷惑を与えたことになる」と謝罪しました。

一方で、2日のコラムの内容に誤りはないとして、インターネットなどでの掲載を続けるとしています。

紀伊民報は和歌山県の南部を中心に、およそ3万4000部を発行している地方新聞社です。

専門家「正しく伝わるよう報道を」

福島県で、原発事故による風評被害の調査を続けている、東京大学大学院の関谷直也特任准教授は今回の記事について「火災は、放射性物質に限らず有害物質を拡散させやすいので不安を口にするのは理解できるが、原発事故から6年が経過して、不安や懸念だけで記事にする時期は過ぎていると思う。事故のあとモニタリングの体制が整い、放射性物質が拡散しているかどうかは、線量を見ればわかるので、きちんと調べないで記事にする時点で非常に大きな問題を持っている」と述べました。

そのうえで「福島県外を中心に、6年前の原発事故が怖かったというイメージで止まっている人もいることが、今回の記事の遠因だと思う。福島県の現状をきちんと理解して、正しく伝わるよう報道してほしい」と話しています。