そんな未来が来るかもしれなくて。
現在シアトルで開催中のMicrosoftの開発者向け会議「Build 2017」。初日のキーノートで発表されたテクノロジーを見ていると、将来的に大企業で働くことに多少の恐怖を感じます。だって、常に会社に見張られているようなんだもの。
現地会場入りしている米Gizmodoが、初日キーノートで注目したデモが2つありました。注目した理由は、将来の職場環境にモヤモヤとした不安を覚えてしまったから。それは、単純に見れば優れた便利な技術なのですが、ちょっと考えると企業という体制が恐ろしくなるような…。
こちらはTech Nationが公開したBuild 2017 1日目のキーノートの映像。
注目したデモの1つ目は、動画33:58からの工事現場をモニタリングするカメラテクノロジー。カメラはクラウドに接続されており、従業員のIDチェックから現場の道具にいたるまで、人工知能がリアルタイムでチェックします。担当作業員ではない人間が入り込んでいる、誤った方法で道具が使われているなど、事故が起きる可能性を察知できれば、現場の安全という点で非常に理想的なカメラです。
でも、ちょっと深く考えてみると怖いような。Microsoftのデモで工事現場というシチュエーションを選ばれたのは、きっと深い理由があってのこと。事故が起きることが多く、AI採用でそれを防止できるとなればありがたいことこの上ない工事現場。が、考えずにはいられません、オフィスにこれが導入されたらどうなるだろうと。セキュリティや事故防止が最優先の現場ではなく、いわゆるオフィスビルにある職場にカメラがあったら…。雇用者が従業員を必要以上に見張りまくるような状況になったら…。
友人をオフィスに招いておちおちランチもできません。だって、見られているかもしれませんから。「何遊んでるの?」と監視中の上司からすぐさまメールがくるかもしれませんから。ちょっと疲れているとき、トイレの時間が長くなったり、コーヒーブレイクが増えたり、ふらーっと気分転換にコンビニいってみたり、今までは「あれ?」ってな程度だったものに、AIの手が加わればどうなるか。行動パターンや休憩時間の頻度や長さが、細かく分析されてしまうでしょうね。
いや、雇い主にしたらありがたいと思いますよ。効率的に従業員の評価ができますから。ただ、ちょっとした息抜きは人生にはつきもの。常に監視されているとあれば、人としての余裕がなくなり、とても息苦しい職場になるようで不安だという話です。
Windows Developerが公開したキーノートで行なわれたデモ映像。
2つ目はCortanaの広がり方。ラップトップやスマートフォンだけに限らず、あちこちに出没(?)して、暮らしをスムーズ便利にしています。上の動画のデモでは、自宅のスピーカーでCortanaと会話をする女性が主人公。「今日、会議あり」とCortanaにリマインドされた女性は、慌てて車に飛び乗ります。すると、車でもCortanaが現れ、交通状況から会議に遅れると予想し、職場に連絡をいれ、会議の進捗状況まで教えてくれます。
これぞ有能パーソナルアシスタント。これぞデキるデジタルアシスタント。理想の形です。が、このデモでMicrosoftが触れなかったのは、この女性が会社のIDにてあちこちでログインしているということ。家でも車でも会社のIDログインです。ってことは、会社はやろうと思えば、家と車のデータにアクセスできる状況にあるということ。仕事とプライベート、ワークバランスなんて言葉はどこにいってしまうのでしょうか。
カメラモニタリングもCortanaも、素晴らしい技術です。よりテクノロジーに頼ることで、安全性や便利さが格段にアップしていきます。しかし、世の中はギブアンドテイク。便利さだけをテイクすることはできません。では、それと引き換えに何を失っているのか。言わずともわかりますね、プライバシーです。Microsoftが個人消費者ではなく、企業向けというビジネスに重きを置いていることを考えると、今回のキーノートでさらなる不安と恐ろしさを感じます。個人のデータを取得して広告を見せられるのとはわけが違います。だって、私のデータを取得するのは、私の雇用主ってことになるんですもん。
…嫌よね。
・Microsoft「Visual Studio for Mac」をとうとう正式リリース!
image: Microsoft
source: Tech Nation - YouTube, Windows Developer - YouTube
Alex Cranz - Gizmodo US[原文]
(そうこ)