先日、約30年前のホームビデオを観たのであるが、そこに登場する僕の父はすでに禿げていた。
当時の父と今の僕の年齢はほぼ同じである。
父の父、すなわち僕の祖父も禿げていた。
父の兄、すなわち僕の叔父も禿げている。
つまり、僕は禿げの家系に生まれたということである。
禿げにも種類があるが、僕の家系の特徴を見ると、額から毛髪が抜け落ちいくパターン、つまり禿げ上がるタイプである。
まぁ、サザエさんの父、波平さんを想像していただければ間違いない。
父は今ではほぼスキンヘッド状態である。
僕が30歳くらいの頃だっただろうか、美容院で髪を切ってもらっていたところ、担当の美容師さんが、”あなたは禿げる髪質だ。今から何らかの対策を講じたほうが良い。”ということを言った。
僕は内心、”やっぱり。”と思った。
そしてムカついた。
ひとは図星を突かれるとムカつくのである、ということを学んだ瞬間だった。
そして、その美容院には二度と行かなかった。
なぜか、もう頭髪のことに触れられたくなかったからである。
しかし僕は、その美容師さんの言葉を受けて、アポジカという育毛剤を購入し、その日から使い始めたのである。
10年以上、15年くらい使い続けたかもしれない。
そして今、僕の毛髪はどうなっているか?
ちゃんと残っている!
娘からは、”お父さん、髪が残ってて良かったね。”と言われる。
そして、今ではむしろ白髪に悩んでいる。
極稀にではあるが、”毛量が多いですね。”と言われることさえある。
アポジカの効果がどのくらいあったのかは検証できないが、とにかく今となっては、何らかの対策を講じるようアドバイスしてくれた、あの美容師さんに感謝している。
あのアドバイスがなかったら、今頃僕は波平さんになっていたかもしれない。
今、僕の半生を振り返ってみると、常に禿げる恐怖との戦いだったような気がする。
今でも、春や秋、つまり頭髪が生え替わる時期、シャンプー後に排水口に流れていく自分の毛髪を見るとイヤーな気分になる。
そう、僕はいまだに禿げる恐怖と戦っているのである。
僕には長年乗っている愛車があるのだが、年式がかなり古くなってきたことと、今ではほとんど乗らなくなっていることから、それを売って、足代わりに使える小さなバイクを購入しようか、などと検討している。そこで問題になるのが、やはり禿げることなのである。
なぜなら、バイクに乗る際、ヘルメットを着用しなければならないわけだが、ヘルメットを着用すると、当然頭が蒸れる。蒸れるということは、頭髪にめっちゃ悪い影響を与えそうである。つまり、禿る要因となる、ってことで、なかなかバイクへのシフトに踏み切れないのである。
それほど、僕は禿げることに対して恐怖心を抱いている。
ふと横にいるミュウとシャケを見る。
なんとフサフサ、モフモフしていることか。特にミュウ!
ミュウのモフモフした毛を見ると、マジ羨ましいと思う。
僕は今55歳(今年56歳)。この恐怖はまだ続くのだろうか。