「苦しみの正体を教えてやろう、あほんだら」
「誰やねんお前、きゃりーぱみゅぱみゅみたいな格好しやがって、けったいなじじいやのう」
「黙れ、くそがきめ、苦しみの正体を教えてやろうって言うとんねん、知りたいやろ」
「お前みたいな奴に何がわかるねん」
「わしみたいな奴だからわかるんだよ。君はそうやって偏見を持って世界を観ているから何にもわからないんだよ。君は今苦しんでいるね。当たり前だよ、この世の一切は苦しみだからね。一切は苦しみ。一切皆苦。それなのに君は苦しみじゃないものがあると思って、苦しみと楽しみを分別している。だから知らず知らず楽しみに期待してしまう。そんなものあるはず無いのに」
「苦しみがあったら楽しみもあるやんけ、何を言うとんねんじじい」
「苦しみも楽しみも、正体は同じものなんだよ。夜と朝は違うものか?夜と朝はひとつながりだろ?どこからが夜でどこからが朝だなんて正確にわかるかい?」
「日が昇って明るくなったら朝やろが、なにボケたこと吐かしとんねん」
「じゃあ眼の見えないものにとって、朝と夜の違いはなんだ?」
「日が昇ったら暖かくなるし、日が沈んだら寒くなるやろ」
「そやね、じゃあ眼が見えないうえに温度感覚がなかったら?」
「それは、ずーと同じかもしれへんな。」
「見たり感じたりして、分別するから、朝と夜があるんだろ?苦しみと楽しみも同じように、見たり感じたりしたものを分別するから生まれるんだろ?」
「そうかもしらんけど、五感が働いてる限り、分別するなっちゅうのは無理な話やで」
「だから、その五感を無くせばええんじゃ」
「どういうこっちゃ、死ねっちゅうことか?」
「そういうこっちゃ」
「めちゃくちゃやな、このじじい」