編集委員・伊藤智章
2017年5月10日14時11分
名古屋市名東区の平和資料館「ピースあいち」が今月、開館から10年を迎えた。10年間の入館者は延べ約6万4千人。民設民営の特徴を生かして、踏み込んだ内容の展示や、全国の平和資料館関係者の交流事務局を引き受けるなど、活動の幅を広げてきた。
「もっと真ん中に置いたら」「階段を上がるとすぐ目に入る」。4月末、憲法についてのパネル展示の準備をしていたのは、ボランティアの女性スタッフ2人だった。
有給の専従者は1人だけ。研究者から元市職員、印刷業者まで多彩な約20人の運営委員、19歳から80代まで100人弱のボランティアが交代で詰め、案内係、展示、企画まで担う。
約70人を擁する戦争体験の語り部ボランティアの存在が特徴的だ。平均83・8歳の語り部が注文に応じ、ミニ講演する。
近年は語り部の死去などで、講演内容は戦場体験より疎開、勤労動員、空襲体験などの比重が高くなったが、亡くなった元語り部の父親が残した沖縄戦の話を語る戦後生まれの女性もいる。自作の紙芝居、映像で説明する人も。愛知県の委託で学校に出前授業もしている。
語り手の会代表の斎藤孝さん(86)の出演は、延べ約90回に及ぶ。目撃したB29の撃墜場面、飛行場の防空壕(ごう)造りなどについて語る。自分の似顔絵を見せて笑わせてから本題に入るなど工夫する。終了後、小学生からサインを求められたことも。「運営委員などは今年で降りるが、語り部は辞めないつもりです」
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