「公害の原点」ともいわれる水俣病は1日、公式確認から61年を迎え、熊本県水俣市で犠牲者慰霊式が開かれた。患者や遺族ら約700人が犠牲者の冥福を祈った。熊本・鹿児島両県では今なお2千人を超える人が認定審査を待ち、認定基準を巡る訴訟も各地で相次ぐ。高齢化が進む被害者の苦悩は深い。
慰霊式では午後1時半ごろ、「水俣病慰霊の碑」そばの鐘の音が鳴り響き、出席者は約1分間黙とうをささげた。
公式確認から2カ月後に生まれた胎児性患者、滝下昌文さん(60)はあいさつで「これからの生活に大きな不安を抱えている」と述べる一方で「過去は変えられないが、私たちが精いっぱい生きることが、息子や誰かの心の支えになればと思う」と話した。
山本公一環境相は「国として責任を持って問題解決にとりくむ」と述べた。熊本県の蒲島郁夫知事は「(自らの)任期中に認定を待つ人の審査を終えられるよう努力する」と話した。
水俣病は原因企業チッソが海に流したメチル水銀が原因で発生した。認定患者は熊本・鹿児島両県で約2200人。両県で約2100人が審査待ちの状態で、救済を求めて訴訟を起こす患者も後を絶たない。
患者団体は広域での健康調査や、水俣病の詳細な病態の研究を国に求めている。水俣病不知火患者会(水俣市)の森正直原告団長は1日の山本環境相との面会で「早く調査してもらいたい」と求めたが、環境相から時期は明示されなかった。
患者の高齢化も進み、患者団体同士が連携する動きも進む。水俣市などの団体が3月に「水俣病被害者・支援者連絡会」を結成し、4月末時点で30超の団体が参加した。署名活動や自治体への申し入れを通じ被害者救済の拡充を目指している。