人と食事ができない会食恐怖症
更新日:2017/03/23
精神病・精神疾患の種類・症状・原因
他者とのコミュニケーションに強い恐怖や不安を感じる「社会不安障害」の1つに、「会食恐怖症」があります。会食恐怖症で人前での食事が困難になってしまう原因や治療法について、ドクター監修の記事でお伝えします。
この記事の監修ドクター
職場の付き合いやプライベートで自分以外の人と食事をすることは、きわめて日常的な行為です。しかし、さまざまなことが原因で他人との食事に強い恐怖や不安を感じてしまう「会食恐怖症」という病気になると、人前で食事をすることが困難になってしまうこともあります。ここでは、会食恐怖症の原因や治療法についてお伝えします。
会食恐怖症とは
会食恐怖症とは、他の人と一緒に食事をとることに強い苦痛を感じてしまう病気です。他人との食事に過剰に緊張してしまい、「自分の食事の仕方が人に不快な思いをさせているのではないか」と強い不安を感じます。その結果、食べ物がのどを通らなくなってしまい、少量しか食事をとることができなくなってしまうこともあります。
そのような状況に陥ると、「少量しか食べることができない自分を変に思われるのではないか」という不安が生じ、ますます緊張が高まって食事が難しくなってしまいます。食事がのどを通らない以外にも、箸やフォークなどを持つ手が震えて上手に食事ができなかったり、固形物が食べることができなかったりするといったケースもあります。
会食恐怖症の症状は、仕事の都合で会社の人たちと食事をしたり、友達や恋人と食事をしたりする場面で症状が顕著に表れます。自分のことを全く知らない大勢の中、一人で食事をとる場合はほとんど起こりません。これは、自分のことをよい・悪いで評価する可能性がある人との食事で強い緊張が起こるためであると考えられています。これは、食事の場面を通して自身が否定的な評価を受けることへの恐怖が根底にあるとも言えます。
対人恐怖症の一種
会食恐怖症は、対人恐怖症(社会不安障害)の一種であると考えられています。社会不安障害とは、人とのコミュニケーションをとる場や大勢の前で自分の意見を発表しなければならないときなどに、強い恐怖や不安を抱いてしまう病気です。人前に出る際に緊張してしまうことは誰にでもよくあることですが、社会不安障害の場合は過剰に恐怖や不安を感じてしまうので、日常生活に支障をきたしてしまうこともあります。「人より繊細なだけ」「気の持ちよう」といった問題ではなくれっきとした病気であるため、医療機関などで治療を受けることが可能です。
会食恐怖症の原因
会食恐怖症などの社会不安障害の原因はまだはっきりとはわかっていませんが、最新の研究では大きく分けて2つの原因があると考えられています。
脳内伝達物質の減少
1つ目の原因は、脳内物質の分泌バランスの崩れです。人間の脳の中には、さまざまな情報を伝達する脳内伝達物質が分泌されています。「セロトニン」や「ドーパミン」といった物質名を聞いたことがあるという方も多いでしょう。これらの物質は感情や自律神経などのはたらきをコントロールする役割を持っています。
脳内伝達物質がなんらかの原因で減少すると、目や耳、手足などから受け取った情報が調節されないまま大脳に届いてしまいます。大脳には、海馬や偏桃体といった「大脳辺縁系」という部分が存在し、ここが恐怖や不安などを引き起こすと考えられています。大脳辺縁系に調整されないままの刺激が伝わると、強い不安感を生み出します。
幼少期からの環境など
2つ目の理由は、幼少期の生育環境や嫌な目に遭った体験の影響です。人前で食事をする場面で非常に恥ずかしい思いをさせられたり、厳しく叱責されたりといった経験は、「嫌な目に遭った」ということが非常に強く記憶に残り、大人になってからも尾を引いてしまう傾向があります。
もちろん、人前での食事で嫌な経験をしたことがあるすべての人が会食恐怖症になるわけではありません。しかし、二度と同じような嫌な目に遭わないよう、無意識に人前での食事を避けるようになると会食恐怖症につながってしまうケースも多々あります。会食恐怖症になってしまうと会食の場面を避け続けるようになり、ますます人と食事をすることが難しくなってしまうこともあります。
他にも、生まれ持った性格や遺伝的要因などで会食恐怖症などの社会不安障害に陥る可能性もあります。人によって原因はさまざまですので、心療内科などの医療機関に相談しましょう。
会食恐怖症の治療
会食恐怖症の治療には、大きく分けて3つの方法があります。
薬剤による治療
社会不安障害の原因と考えられる脳内伝達物質の分泌バランスを整えるため、主にSSRI系の抗うつ薬を使用します。その他にも、抗うつ薬の補助として抗不安薬を使用したり、「βブロッカー」という交感神経の働きを抑える薬を使用したりする場合もあります。
カウンセリングや認知行動療法
カウンセリングなどを用いて、なぜ会食恐怖症になってしまったのか、強い恐怖や不安の原因は何なのかを紐解いていくことも大切な治療の一つです。自身の考え方や性格、過去の経験などを通して、どういった場合に会食恐怖症の症状が出てしまうのかを考えます。さらに、認知行動療法では、こうした傾向を把握することで自分の気持ちをコントロールすることができるようにしていく治療で、薬剤の使用とあわせて行うとより高い効果が期待できます。
会食恐怖症の克服法
薬剤の使用やカウンセリングなどの他にも、日頃から心がけておくと会食恐怖症の克服に効果が期待できるポイントもあります。少しずつ生活に取り入れ、改善を目指しましょう。
日ごろから自分自身で気をつけておくべきこと
会食恐怖症などの社会不安障害の改善で大切なことは、自分の現状を認め、ありのままを受け入れることです。「人前で食事ができない」「会食が怖い」といった気持ちが起こってしまうことで自分を責めずに、できないことを認め、原因を把握して自分の心と冷静に向き合いましょう。できる範囲で、少しずつ自分の心の状態を知ることが会食恐怖症の克服の大きな一歩となります。
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