民主党政権で実施された高校授業料無償化。志ある若者が経済的理由で高校に行けなくなることがないようにとの考え方には異論はない。しかし、果たしてこの政策に年間4000億円もの税金を投入するだけの効果があるのか。この問題に対するわが党の考え方をまとめた。
昨夏の「3党合意」
民主の不誠実な対応
来年度予算を審議している衆院予算委員会が2月13日午後から15日まで空転した。質疑者はわが党の下村博文・党文部科学部会長。昨年8月、民主党と自民、公明両党は高校無償化の効果について検証し、その結果を来年度予算に反映させることで合意したが、民主党がその約束を反故にしていると指摘したことが発端だった。
1日半にわたって空転したのは、民主党が当時の担当者から話を聞いたり、善後策の作成に手間取ったことが原因で、わが党は一切、審議拒否をしていない。むしろ、わが党は早く検証作業に入り、問題点を徹底的に議論したいとの立場だ。
この政策に対するわが党の疑問点は7点。検証作業もその観点から行うべきと主張している。
第1は、はたしてこの政策によって教育上の成果(たとえば学力や教育内容の向上など)が得られるのかどうか。
第2に、高校をわが国教育制度の中でどう位置付けるのか。政府や民主党はこれについての考え方を全く示しておらず、場当たり的に無償化していると言わざるを得ない。
第3は所得の多い家庭の子供の授業料まで国が支援する必要があるのかという問題だ。
第4に、公立と私立との関係だ。例えば、経済的にゆとりのある家庭の子供は塾や予備校などにも通って偏差値の高い公立高校を目指すことができる。そして合格できれば無償。しかし、そうでない家庭もある。これではますます格差が拡大することになる。
第5は、海外の日本人が支給対象になっていないこと。
一方、6番目の問題点として朝鮮高校は対象に入っている。しかも、政府の対応が一貫していないため、北朝鮮に誤ったメッセージを送りかねない事態になっていることも看過できない。
7番目に定時制や通信制の場合、もともと安い授業料が無償化されても、特定扶養控除廃止による負担増の方が大きくなっているケースがある。これにどう対応すべきかー―。
所得制限を設けても
高校生5割をカバー
わが党はけっして問題点だけをあげつらっているのではない。具体案をもって議論に臨んでいる。
その骨子は(1)所得制限を設ける対象を世帯年収700万円以下に絞っても高校生の5割をカバーすることができる。そのうえで、(2)私立高校生の負担を軽減するため低所得者世帯を中心に公私の授業料の差額分を支給する(3)高校生を対象にした返済義務のない新たな奨学金制度を創設する(4)所得制限により単純増税となる世帯への負担緩和措置を設ける――の4点。
その基本的な考え方は、本当に支援が必要な家庭に対し手厚く支援することにある。わが党の試算によれば、2000億円で、これらの効果の高い政策が実行できる見込みだ。これに伴い現行の高校授業料無償化は廃止される。
資源のないわが国にとって、次代の人材を育成する教育は極めて重要だ。わが党が目指すのは世界トップレベルの学力と規範意識を養成し、日本文化を理解し、継承・発展させることができる人材を育成することにある。そのためには、限られた財源を有効に使うことが不可欠だ。
民主党は審議再開にあたって約束を破ったことを謝罪し、検証作業を開始し、その結果を「予算に反映することも含め、誠実に対応する」と約束した。これを受け、17日、初めての実務者協議が行われた。今度こそ、約束を誠実に守ってもらわなければならない。
機関紙「自由民主」第2498号掲載