(英エコノミスト誌 2017年5月6日号)

中国の「チェリーコーク」に著名投資家バフェット氏のイラスト

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏のイラストが描かれたチェリーコークのボトル。中国・北京のコンビニエンスストアで(2017年4月5日撮影)。(c)AFP/GREG BAKER〔AFPBB News

中国の荒々しい株式市場は、「オマハの賢人」よりもカウボーイに向いている。

 世界第2位の富豪として、そして投資の世界で半世紀もの間成功し続けている実績の持ち主として、ウォーレン・バフェット氏の名前は世界中に知れ渡っている。

 中国では、単なる有名人を超えた「セレブ」の扱いだ。今年3月には、この86歳の投資家の似顔絵をラベルに配した限定版「チェリーコーク」が中国の小売店に並んだ(バフェット氏は、砂糖をたっぷり含んだこの飲み物が大好物であるだけでなく、米コカ・コーラの筆頭株主でもある)。

 5月6日には、バフェット氏の持ち株会社バークシャー・ハザウェイの年次株主総会に出席するために、何千人もの中国人投資家が米ネブラスカ州オマハの地に降り立ったとされる。また、それをはるかに上回る数の人々が総会の生中継を見るためにインターネットに接続したはずだ。総会の模様が同時通訳されるのは、中国語(北京標準語)のみだった。

 この中継も見られないという人は、書店に足を運べばいい。中国では、お金もうけに対するバフェット氏のアプローチについて書かれた中国語の本が何百冊も出版されている。

 中国でバフェット氏が名声を確立したのは、タイミングが良かったためでもある。この国に近代的な株式市場が作られたのは1990年のこと。投資の初心者が企業の決算書と株価チャートを握りしめていたちょうどそのころ、世界一の株の目利きとしての「オマハの賢人」の名声が大きく高まっていたのだ。

 また、上昇局面と下落局面を繰り返す中国株式市場に比べると、バークシャー・ハザウェイ株の安定的なリターンは魅力的だ。大成功している中国人投資家にとって、「中国のウォーレン・バフェット」というあだ名を付けられることほど名誉な話はほとんどない。この称号を贈られたり自称したりしている大物は、少なくとも10人はいる。

 だが、その人たちは考え直した方がいいかもしれない。中国においてはここ数年間、バフェットのような運用成績を上げられると宣言することは、名誉のしるしというよりは、良からぬことの前兆になっている。弟子だと目された人々が、立て続けにトラブルに見舞われているのだ。株価操縦の罪で投獄された人もいれば、数カ月にわたって身柄を拘束されて外部との連絡を絶たれた人もおり、政府による捜査の一環で連行された人もいる。