【仏大統領選】当選したマクロン氏が直面する困難な課題

オランド現大統領(写真右)と共に無名戦士の墓で献花するマクロン次期大統領(8日、パリ) Image copyright AFP
Image caption オランド現大統領(写真右)と共に無名戦士の墓で献花するマクロン次期大統領(8日、パリ)

フランスの大統領選から一夜明けた8日、当選したエマニュエル・マクロン氏はパリ中心部の凱旋門前でフランソワ・オランド現大統領と並んで第2次世界大戦戦勝記念式典に出席し、無名戦士の墓に献花した。マクロン次期大統領は今、統治能力のある政権チームを作るという困難な課題に直面している。

名称を「前進」から「前進する共和国」に変更すると発表したマクロン氏の政党は、来月11日と18日に予定される議会選挙の候補者擁立を早急に進めなくてはならない。

マクロン氏は大統領選で、ライバルのマリーヌ・ル・ペン氏を得票率66.1%対33.9%で下した。しかし、低い投票率や記録的な数となった無効票や白票は、大統領選の選択肢に多くの有権者が失望していたことを示している。特に極左支持者の間ではそうだった。

ル・ペン氏は、所属政党の国民戦線(FN)で変更があると示唆した。党幹部からも政党名を変える話が出ている。しかし、ル・ペン氏は「新たな勢力」を率いて議会選に臨むと表明している。

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Image caption マクロン氏(写真左)とオランダ大統領

統治の難しさ

マクロン氏は主に2つの課題を抱える。議会に全く基盤を持たないことと、フランス社会の深刻な分断だ。

一部は嫌々ながらも主流派の社会党や共和党から支持を得たマクロン氏だが、多くの支持理由はル・ペン氏を負かしたいという動機からだった。保守派の共和党は議会選でも強い支持を集められると期待している。

各種世論調査から示されること

マクロン氏の勝利が判明して間もなく公表された世論調査では、マクロン氏の政党と連携する中道派政党モデムは来月11日の第1回投票で24~26%を獲得し、最大勢力になることが示されている。

共和党と国民戦線はそれぞれ約22%、極左の「屈しないフランス」は13~15%、オランド現大統領の不人気に苦しむ与党.社会党は9%を得る見通し。

しかし、比較多数得票制の下では議席数を予想するのは難しい。国民戦線の議会での議席数は、大統領選の勢いとは対照的に2議席のみ。ある世論調査では、次回選挙でも全577議席のうち国民戦線が獲得するのは15~25議席に留まると示している。

このような混沌とした状況では、マクロン次期大統領は公約に掲げた政策への支持を得るため相当な駆け引きを余儀なくされるかもしれない。

ル・フィガロ紙の世論調査によると、多くのフランス国民はそうした状況を歓迎しているもようだ。カンター・ソフレスワンポイントが実施した調査では、マクロン氏の政党が議会でも多数党になるのを期待しているのは、回答者のわずか34%だった。

Image caption 県ごとの得票率では、マクロン氏の最高得票率は90%近く。一方で、ル・ペン氏の最高得票率は55%を下回った

BBCのルーシー・ウィリアムソン記者は、マクロン氏は経済相として、個別政策について各党の合意を得るのがいかに大変で気が滅入るものか実感したと指摘する。今後の状況は、マクロン氏の政党が安定した連立を組めるかどうかにかかっている。

「前進する共和国」へ政党名を変更するのはなぜ?

リシャール・フェラン幹事長は、国民の支持拡大が目的だと説明する。マクロン氏は大統領就任を控え、党首を辞任した。

マクロン氏は議会選で全議席について候補を立てる予定で、政治に新風を吹き込むために半数は新人にすると表明している。

ほか半分は政党モデムやほかの政党の議員になる。それらの議員は離党する必要はないが、「前進する共和国」の候補として立候補することが求められる。

各国首脳とはどのようなやり取りがあったのか

米国のドナルド・トランプ大統領とは電話会談を行った。今月25日にブリュッセルで開かれる北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議で、再び会談することで合意している。

電話会談を受けた米政府の声明はほぼ型どおりで、両国間の「長年にわたる堅固な協調関係」を挙げた。一方で、マクロン氏の報道担当者は米CNNテレビに対し、電話会談で同氏が、地球温暖化対策の国際的な枠組みの「パリ協定」を擁護するとはっきり表明したと語った。パリ協定をめぐっては、トランプ大統領が離脱するのではと懸念が高まっている。

マクロン氏陣営によると、同氏はこれまでにドイツ、英国、トルコ、カナダの首脳とも電話会談したという。

国民戦線はどうなるのか

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Image caption ル・ペン氏は「根本的な変容」が必要だと語った

政党幹部たちは、同党も支持基盤を広げるため政党名を変更することを示唆している。

ル・ペン氏の取り組みにもかかわらず、国民戦線には父親のジャンマリー・ル・ペン氏の過去の極端な思想との関連が依然としてつきまとう。

ニコラ・ベイ幹事長はAP通信に対し、「昨晩(大統領選で)多くの有権者に訴えた以上に多くの人々を集め、より効率的になる手立てが国民戦線だ」と述べた。

ル・ペン氏は大統領選について、「歴史的な結果が出た」と歓迎したが、議会選に向けて「根本的な変容」が必要だと認めた。同氏は、「グローバリストたち」に対抗する「愛国者」の運動を率い続けると表明した。

(英語記事 Emmanuel Macron: Tough task ahead after victory in France

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