スポンサードリンク

平成28年度から弁理士試験制度が一部変更になるとのことです。

弁理士法施行規則の一部を改正する省令が平成26年12月26日に公布され、平成28年1月1日に施行されます。
この度の法改正により、平成28年度弁理士試験から短答式筆記試験への科目別合格基準の導入及び、論文式筆記試験(選択科目)における選択問題の集約が行われます。

出典:平成28年度から弁理士試験制度が変わります | 経済産業省 特許庁

科目別合格基準

科目別合格基準は、5科目で計60問出題される短答試験で、今までは全体で基準点を超えれば合格であったところ、科目ごとの点数も基準を満たしていないと不合格となる、というものです。科目別合格基準は40%程度とのことです。

例えば、以下のような得点のAさんとBさんがいたとして、全体の合格基準点が40点だったとします。

出題 基準点 Aさん Bさん
特実 20 8 14 18
意匠 10 4 6 8
商標 10 4 8 9
条約 10 4 5 3
著不 10 4 7 7
合計 60 24 40 45

この場合、平成27年度まではAさんもBさんも合計点が合格基準点を超えているため2人とも合格になります。

一方、平成28年度以降ではBさんは条約で科目別基準点をクリアしていないため不合格になります。Aさんは全体でも科目別でも基準点を満たしているので合格です。

従来は論文で出題される上の3科目に集中して勉強した方が最終合格を狙いやすいとされてきましたが、今後は条約や著作権・不正競争防止法で足元をすくわれることもあるので、満遍なく勉強することが求められます。

論文選択科目

論文選択科目の集約は、文字通り選択問題が集約されて選択できる問題数が減るということです。

平成27年度まではこれだけの問題数が用意されていました。
h27sentaku
出典:平成27年度弁理士試験受験案内

平成28年度からはこれだけしか用意されません。
h28sentaku
出典:パンフレット「平成28年度から弁理士試験制度が変わります」

選択試験は免除制度があって、理工系の修士号か所定の国家資格を持っている人は選択試験を受ける必要がありません。免除者別の内訳では、修士号が65%で圧倒的に多く、理工系資格が30%強、文系資格が5%程度になっています。文系資格は、司法試験合格、司法書士、行政書士が免除を認められます。なお、司法書士と行政書士は試験合格のみではダメで、実際に登録が必要です。

こういう事情があるので、選択試験を受けるのは理工系の学部卒までの人か文系の人になります(一部大学中退の人とかもいますが)。従来は短答試験の試験範囲である著作権法と不正競争防止法が選択問題にあったので、文系の人の多くはこれらを選択していました。

ところが、今回の変更では法律科目は民法一択になってしまいました。これはかなりインパクトの大きい変更だと思います。文系出身者にとっては弁理士になるのはかなり厳しい状況となるでしょう。

実際問題として文系出身者が弁理士試験に合格しても就職状況は結構厳しいので、がんばって合格したけど何にもならなかったということになるよりは、最初から絞ってあげた方が本人にとってもよいかもしれません。一応、意匠や商標など文系出身者でもできる業務はありますけど、最近は食えない弁護士の人がそのへんに進出していて人材の供給は十分という事情もあるようです。

変更されるのは再来年、平成28年度からですから、今年は文系の人にとっては正念場になりそうですね。ご健闘をお祈りいたします。

LINEで送る
Pocket