米Googleは、Androidプラットフォーム向けにVR技術「Daydream」を展開している。ハイスペックPCを使うVR技術が多い中、あえてモバイル向けに注力しているのは、より多くの人に使ってもらうことに焦点を当てているからである。
VRは「仮想現実」の略。「仮想」であるとはいえ、「現実」に即した体験を提供できなければユーザーの満足は得られない。
果たして、Daydreamではどのような工夫をして「現実」を提供しているのだろうか。5月8日に行われた開発者向けイベント「Unite 2017 Tokyo」において、同社のアレックス・リー氏がDaydreamで重要視している3つの「感覚」について解説した。
現実世界の物事はタイムラグなく目に映る。しかし、VRでは各種センサーが動きを検出し、それを画面に反映するまでにどうしてもタイムラグが発生する。現実世界のように「0ミリ秒」の反応はどうしても不可能なのだ。だからといってアクションに対するタイムラグが秒単位で発生してしまっては、「いるはずのない場所にあたかもいるかのような」VR体験は実現できない。
Googleが行った実験では、「20ミリ秒(0.02秒)」以内の遅延に収めることができれば人間の脳は「現実」として理解できるという結果が出たという。Android端末が「Daydream-ready」認証を取得する条件として定められた「20ミリ秒以内に反応すること」は、この実験結果から導き出されたものだ。
「20ミリ秒以内に反応すること」という条件を乗り越えるため、Daydream Ready端末では「低残像ディスプレイ」「高性能プロセッサ」「高品質・低遅延センサー」を搭載している。また、Android 7.x(Nougat)においてソフトウェアレベルでも最適化を行っている。そのため、Daydream-readyのスマホでも、機種によってはOSバージョンアップをしないとDaydreamは使えないので注意が必要だ。
VRにおける没入感をより高めるためには、音声が果たす役割が大きい。
リー氏によると、「たくさんのポリゴンで精巧に描写した木」だけを見せるよりも、「少ないポリゴンで描写したラフな木」に音声を加えて見せた方がより「現実」としての認識度が高まるという。「限られたリソースの中で(VRソフトを)開発するのであれば、オーディオを充実させることは1つの解決策」(リー氏)なのだ。
ただし、単に音声を加えれば良いというものではない。描写する場所に応じた「没入感を高める音声(immersive audio)」を組み合わせる必要がある。Googleでは部屋の大きさなどの条件を設定するだけで没入感を高める音声を作る機能を開発者向けのSDKに盛り込んでいるという。
Daydreamの世界では、頭や体の動きに合わせて景色や音声が変わる。しかし、その世界に「反応」をもたらすには、手足の動きも何らかの形で端末に伝達する必要もある。
そこで登場するのがBluetooth接続の専用コントローラーだ。このコントローラーにはモーションセンサーが仕込まれており、振ったり回したりひねったりする操作にも対応している。これにより、VRアプリにより「現実味」を持たせられるという。
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