フランソワ・オランド氏は5年間の任期を終え、近年のフランス史上最も不人気な大統領としてエリゼ宮(大統領府)から去ることになる。同氏のお粗末な評判は、部分的には、経済を復活させ、失業率に歯止めをかけ、公共支出を抑制するという公約を果たせなかったことへの反応だった。
しかし、オランド氏が後任に残した経済的なレガシー(遺産)は、同氏の支持率急落が示唆するほど悲惨なのだろうか。
次期大統領は、2008年の金融危機以降、ペースは鈍いが着実に成長してきた経済を受け継ぐ。オランド氏は2012年の大統領就任当初、フランスは不況から完全に立ち直ることを楽観していた。だが、緩やかな成長にもかかわらず、ドイツや英国、米国といった国々と比べると、フランスは後れを取った。
オランド氏の任期終盤にかけて、状況は上向き始めた。昨年の経済成長率は1.1%に達し、在任期間中で最高を記録した。だが、それでも欧州連合(EU)平均の成長率1.8%には届かなかった。2017年第1四半期には、成長率が前四半期の0.5%から0.3%へと減速し、アナリスト予想を下回った。
■雇用は増えるも、主に臨時採用
労働市場は政治色の強い問題だ。オランド氏は2012年の大統領選挙で、失業率が上昇しているときに就業機会を増やすという公約を掲げて勝利を収めた。
在任中にも失業率はじりじり上昇し続け、ピーク時には10%を突破した。これを受け、オランド氏は任期終盤に入り、自身が「経済的非常事態」と名付けた問題に取り組むために、より断固とした措置を講じた。すでに人件費に対する税額控除を導入していたオランド氏は、2016年に議会を飛ばし、人員の採用と解雇を容易にする雇用関連法案を押し通した。賛否が割れるフランスの週35時間労働制は守りつつ、職業訓練の機会と仕事に復帰する奨励策も増やした。
こうした対策は、実を結び始めたばかりだった。失業率は過去1年間で若干の改善を見せただけだが、データは、より多くの求職者に訓練を受けるよう促す政策が一定の成功を収めたことを示している。
だが、オランド氏の当初の提案は、その一部が左派の反発を招いたこともあり骨抜きにされた。