【仏大統領選】ファーストレディーになるブリジットさん 「普通じゃないカップル」の理由

マクロン次期大統領夫妻 Image copyright Reuters
Image caption マクロン次期大統領夫妻

「ブリジット! ブリジット! ブリジット!」――。仏大統領選の夜、当選が決まったエマニュエル・マクロン氏と共に壇上に姿を現した妻のブリジットさんの名前を繰り返し叫ぶ支持者たちの姿があった。新しいファーストレディーはどんな人物なのか。

まず言っておこう。2人は普通のカップルではない。

マクロン氏自身による2人の結婚式での言葉を簡潔に言っただけだ。彼は自分たちについて、「あまりありふれていない、あまり普通じゃないカップル。こういう形容詞がとても好きなわけではないけれど、存在しているカップルです」と語った。

2人の年齢差は24歳。ドナルド・トランプ米大統領と妻メラニアさんとの年齢差と一緒だ。現在39歳のマクロン氏が63歳のブリジットさんに出会った時、ブリジットさんは彼の演劇の先生だった。

仏北部のアミアンにあるイエズス会が運営する私立校の生徒だった、当時15歳のマクロン少年が知的に早熟だったのは、周囲の誰もが同意するところだ。ブリジットさんは当時を振り返って、マクロン少年が10代の子供らしい話し方や行動をせず、「大人と対等に接していた」と話した。

ブリジットさんはさらに、「この少年の知性に完全にまいってしまった」と語った。

ブリジットさんの実家トロニュー家は、マカロンで有名なチョコレート菓子製造会社を経営しており、ブリジットさんはその跡継ぎだった。銀行家のアンドレ・オジエールさんと結婚しており、3人の子供がいた。

マクロン少年の両親は息子が恋をしていると気づいたが、その相手がブリジットさんだとは思っていなかったようだ。

伝記作家のアン・フルダ氏の著書によると、両親は当初、少年が恋心を抱いているのは同級生のローランス・オジエールさんだと思ったという。実際はローランスさんの母親だったわけだが。

そのことを知った両親は、息子が18歳になるまで近づかないようブリジットさんに求めた、とフルダ氏の本は伝える。ブリジットさんは「約束は何もできない」と答えたという。

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Image caption マクロン氏はブリジットさんがエリゼ宮(大統領府)で公の役割を持つだろうと語った

17歳になったマクロン少年はブリジットさんに、いつかあなたと結婚すると話したという。約束が果たされたのは、それから10年たった2007年のことだ。

マクロン氏の母親は現在、ブリジットさんのことを、義理の娘というより友人のように思っていると話す。

マクロン氏の義理の娘になったローランスさんは、同氏の最も有名な支持者の一人だ。投票日前にパリで最後に開かれた集会にも参加した。もう一人の義理の娘で弁護士のティファニーさん(32)は、マクロン氏の選挙運動本部のメンバーだ。

ルーブル美術館の前で開かれた大統領選の勝利を祝う集会では、夫妻の家族も登壇した。次期大統領には3人の義理の子供がおり、さらに、その子供たちを通じて7人の孫がいる。

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Image caption ローランス・オジエールさんにとっては、同級生が義理の父親かつフランス大統領になったわけだ

ブリジットさんは、マクロン氏の経済相就任に伴い教師の仕事から引退し、同氏が信頼を寄せるアドバイザーになった。

女性の政治参加に関するマクロン氏の意見にはブリジットさんの影響があるといわれる。同氏は、来月予定される議会選挙で自身の政党「前進」から出馬する候補の半数を女性にすると約束している。

さらに、ファーストレディーの役割を公式なものにしたいと表明している。マクロン氏は先月、雑誌バニティー・フェアとのインタビューで、「もし私が当選したならば、いやすみません、我々が当選した時には、彼女(ブリジットさん)が役割と場所を得て存在することになります」と述べた。

元教師のブリジットさんは、ファーストレディーとして若い世代への支援に力を入れたい考えかもしれない。具体的な内容は今後明らかになるだろう。

マクロン次期大統領はファーストレディーの新たな役割について、無給で、具体的な内容はブリジットさんが自ら決めることにしたいと語った。「彼女は存在感、発言力を持ち、意見を表明するだろう。これまでと同様、私のそばにいるが、公の役割も持つだろう」。

フランス国内の一部の風刺画家たちはブリジットさんを材料にして、マクロン氏が生徒のようにブリジットさんから指導を受ける姿を漫画にしている。大統領選でも、ライバルのル・ペン氏がテレビ討論会で、言葉を慎重に選びながら2人の出会いを暗に示唆する攻撃をした場面があった。

ル・ペン氏は手元のメモに目を落としながら、にやりとし、「マクロンさん、あなたは先生と生徒のような態度を取っているようですが、私に限って言えば、そういう趣味はありませんので」と述べた。

それでも、ブリジットさんは歳の差カップルであることを自ら冗談にする余裕があるところも見せている。ある本でブリジットさんは、「2017年(の選挙)に全力を出してもらわなくちゃいけません。だって2022年には私の顔が彼の足をひっぱることになるでしょうから」と語った。

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(英語記事 French election 2017: Meet Brigitte Macron, the new first lady

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