なんと200年ぶりのことだ。
デンマークで野生の狼のパック(小規模の群れ)がさまよっている姿が発見された。若いメス1頭と5頭に及ぶオオカミがデンマーク西部、ユトランドにある農場付近に移り住んできたのである。
そのパックはドイツからはるばる500キロの旅路を経てたどり着いたそうだ。
スポンサードリンク
ドイツから狩場を求め移動してきたメスのオオカミ
オオカミについての研究を続けているデンマーク、オーフス大学の科学者、ピーター・スンデ博士によると、2012年から同国内でオスのオオカミの目撃情報があったという。
昨年秋、メスと一緒にいる姿がユトランド西部の農地で撮影され、今春の出産に期待が持たれていた。
今年、ユトランドで撮影されたメスのオオカミ
糞から採取したDNAからは、メスのオオカミは25キロ南にあるベルリンのパック出身であることが確認された。昨年春に家族から独り立ちしたと思われる。
数世紀にわたる迫害の時代を経たのち、人が住む地域にオオカミが帰ってきたことを示唆する証拠は他にもある。
フランスやドイツでもオオカミのパックが暮らし始めており、個体ならオランダやルクセンブルクでも目撃されている。
デンマークでは1813年に最後のオオカミが殺されて以来、約200年ぶりのオオカミのカムバックだ。
オオカミが長距離を移動してくるのは自然なこと
自然保護活動家が非公式にオオカミを自然に還したのでは?という推測もあった。だが、このメスの北への旅路はごく自然なものだ。
オオカミは1日で50キロ移動することが可能で、1998年にはドイツから1,000キロもの距離をヨーロッパを横切るように移動し、パックを作ったという記録も残っている。ドイツでは現在、毎年25〜30パーセントの割合で生息数が増加している。
調査からは、1平方キロ当たりの人口密度が3,050人という郊外ですらオオカミの生息が確認されている。専門家によると、オオカミはノロジカを食べ、人間の側から危害を加えようとしない限り、人がいる地域でも問題はないという。
デンマークのオオカミはヒースが生え、松の造林がある農場に定住した。アカシカやノロジカの生息数が急増している餌が豊富な地域だ。
デンマーク政府はオオカミ管理計画を策定
冬の間、オオカミが羊を殺したという報告もあるようだが、デンマーク政府は専門家と協議し、すでにオオカミの管理計画を策定した。これはオオカミの定住を可能にし、かつ人に近寄り過ぎないよう管理するためのもので、農家への補償や家畜用の防護柵を作る助成金制度も用意されている。
もちろん、オオカミに抵抗感を示す人たちもいる。人間の心理的な部分は厄介な問題で、オオカミに関する議論は、実際上の問題というよりも価値観によってなされているという側面がかなり大きい。
ヨーロッパ大陸(ロシア、ウクライナ、ベラルーシを除く)には12,000匹以上のオオカミが生息しており、EU法で保護されている。
彼らは北部よりは南部でより受け入れられているようだ。フィンランドやノルウェーといった比較的オオカミの生息数が少ない国では、賛否はあるものの毎年間引きが行われている。問題は人間がオオカミを受け入れるかどうかなのだ。
いずれにせよ、童話『赤ずきん』で描かれたような邪悪なオオカミは単なる作り話に過ぎず、本当は自然の一部に過ぎないのだということを忘れてはいけない。
via:Female wolf has come up from Germany to find a partner in Jutland・Wolves Have Returned to Denmark After Two Centuries of Absence・Denmark gets its first wild wolf pack in 200 yearsなど、/ translated hiroching / edited by parumo
▼あわせて読みたい
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
「絶滅・絶滅危惧種生物」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 2302 points | 額や腕に恥ずかしい紋様を入れられてしまう。江戸時代の「入墨刑」に関する事実 | |
2位 1555 points | 死後冷凍保存された脳を新しい体に移植し死者をよみがえらせる計画が3年以内に実施予定(イタリア脳神経外科医) | |
3位 1553 points | トンボのメス、交尾したくないオスに対し「死んだふり」をする(スイス研究) | |
4位 1233 points | 大好評につき続編です。あの頃と同じポーズでハイチーズ! | |
5位 996 points | 巨大だしオッドアイ。白いメインクーンのティホンさんは大きくても抱っこが大好き甘えん坊 |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
オオカミが来たぞー!
これは真実の話です。うそじゃありません
2. 匿名処理班
日本は本当にもったいないことをした
3. 匿名処理班
オオカミぐらい、受容できる器の大きい人間でありたい
4. 匿名処理班
おお、かみばっくしたのですな
5. 匿名処理班
デンマークにわずかに残ってた狼とかそういうのじゃないのかよ
6. 匿名処理班
すごいな、こんな時代でも長距離移動するんだな
うまく生態系をコントロールできればいいね
7. 匿名処理班
日本でも秩父や大台ケ原でニホンオオカミらしき動物を見たという、目撃情報があるけど生き残りがいるんだろうか?