フランス音楽と言えばクリュイタンス・デュトワ・アンセルメそしてミュンシュだが、「お国柄」もあってかミュンシュはゲルマンの血が一番多く、血気盛んだ。
フルトヴェングラーの下でコンサートマスターをしていたのだからそれも無理からぬことだろう。
にしても、まぁ暴れん坊だ。
えらく長い指揮棒をこれでもかとブンブン振り回すから、アンサンブルはいつも覚束ない。
そしてリハーサルになかった即興表現も平気でぶっこんでくるので、スリリング極まりない演奏となる。
それでもオケが崩壊しないのは、確かな技術と教養があったからこそだろう。
そんな彼の得意としたのはベルリオーズ『幻想交響曲』。ピッタリだ。
クリュイタンスの日本公演も荒れ狂っていて素晴らしいが、ミュンシュの狂気はそれに勝る。
パリ管弦楽団の録音が名盤と呼ばれているが、僕はボストン響とTV収録したコンサートが大好きだ。
もうヤンチャもヤンチャ、メチャクチャしているのだが、オケが必死に付いていく。
この曲のクレイジーさを出している一番の演奏だ。これを一度聴いたら他のあらゆる演奏が一気に物足りなくなる。
彼の影響を受け、ボストン響を引き継いだ小澤征爾も悪くないのだが、彼はやっぱり世渡り上手。狂気を感じない。