築百年のライブハウス「磔磔」 京都の音楽ささえる
京都を代表する老舗ライブハウス「磔磔(たくたく)」(京都市下京区富小路通仏光寺下ル)の建物が今月、築100年を迎える。取り壊し寸前だった大正期の酒蔵を若者たちが改装して1974年に開業、のべ1万組を超えるアーティストが舞台に立ってきた。出演者名の入った手作り看板が壁に張り巡らされた空間は、木のぬくもりと溶け合った熟成感のある音を響かせる。12日から記念ライブがある。
磔磔のホームページには過去の出演者一覧が紹介されている。70年代から憂歌団、故やしきたかじんさん、上田正樹さんらが常連のように出演、その後もウルフルズやくるりなどの関西出身バンド、故忌野清志郎さん、奥田民生さんといった名が連なる。当初は落語会や舞踏の公演も開いており、笑福亭鶴瓶さんや世界的な舞踏集団「大駱駝艦(だいらくだかん)」も舞台に上がった。
元は清酒造りの酒蔵だった。棟木には「大正六年五月十五日」と上棟日を記した墨書が残る。70年代初め、酒蔵としての役割を終え、一部取り壊しが始まった時、近くに住んでいた眼科医の奥沢康正さん(76)=山科区=が持ち主に掛け合った。知人の米国人たちが「使い方はいっぱいある。何とか残せないか」と訴えたのを機に、借りて音楽喫茶を開くことに決めた。
酒だるをテーブルなどに再利用し、大提灯をつるすなど雰囲気ある空間をこしらえた。磔磔という名は漢詩から引用し「鳥の羽ばたき」「せせらぎで小石が転がる音」などの意味がある。当初はレコードを流すのみだったが、やがて生演奏が中心になった。
76年から磔磔で働き、79年に経営を継いだ水島博範さん(65)は「立ち見でも300人ほどしか入れない空間なので、演奏のうまい下手がよく分かる。でも、大切なのはプロアマ問わず面白いかどうか」と話す。今でも新たな若者が舞台に立ち続けており、13年前から運営に携わる次男浩司さん(35)は「今後もいろんなバンドを手助けしたい」としている。築100年記念ライブは12~15日。13~15日は完売。問い合わせは磔磔TEL075(351)1321。
【 2017年05月07日 21時10分 】