京都に開発拠点。会員数300万人を誇るソーシャルゲーム開発会社
株式会社テクロスは、京都に開発拠点を置くゲーム会社である。スマートフォンやPCのブラウザでプレイするソーシャルゲームの開発・運営を主事業としている。パブリッシャーからの絶大なる信頼を得て、タイトルの企画が立ち上がる初期段階からプロジェクトに関わる。コンテンツの中身だけではなく、開発の予算、期間、リリース時期なども含め、完全提案型のビジネスで成長を遂げている。現時点でかかわっているタイトルは10タイトル。会員数は合計で約300万人に上る。
最大の特徴はゲームの開発・運営が社内で完全内製できる体制を整備していることである。現在(2017年4月1日)、京都オフィスには150名の社員が在籍。そのほとんどがゲーム開発に携わるクリエーターだ。職種も、エンジニア、イラストレーター、デザイナー、アニメーター、サウンドコンポーザー、プランナー、ディレクターとほぼ全てが揃う。人気が左右されるキャラクター制作を担当するイラストレーターも全社員の4分の1にあたる35名が在籍。多くのゲーム開発会社が抱えるクリエイティブの課題も難なくクリアしている。
もちろん頭数を揃えるだけではない。開発するゲームのクォリティの高さは折り紙付きだ。同社は現在、開発費5,000万から2億円といった大型タイトルに絞った開発を行っている。開発期間は10か月から1年半におよぶプロジェクトがほとんどだ。通常のパブリッシャーとデベロッパーの関係であれば、毎週、毎月といった高頻度の進捗報告を求められるが、同社の場合は、開発がスタートしてからリリースまで3回程度の打ち合わせを行うに過ぎない。全幅の信頼を勝ち得ている証である。
もともとWEBシステムの受託開発からスタートした同社がソーシャルゲームに参入したのは2012年。そこから実績を積み重ね、3年間で現在のポジションを確立した。2016年4月には90名だった社員数が、現在では東京オフィス(営業および外部開発会社との協業拠点を担う)を合わせると150名と、1年でおよそ4割増の規模にまで成長を果たしている。
クライアントからのニーズが増える一方で、新しいチャレンジもスタートしている。それは、スマートフォン向けのゲームアプリ開発である。こちらは自社完全オリジナルタイトルだ。そう遠くはない時期にリリースされることが見込まれる。
以上のような背景のもと、同社では、今後の飛躍的な成長を支えるエンジニアを積極的に採用しているところだ。
安定した経営基盤のもと、着実に実績を積むことでポジションを確立
テクロス社は2009年、WEBサービスサイトの受託開発や運営などを行う会社として東京で設立された。転機は2011年に訪れた。3月に発生した東日本大震災を機に拠点を関西に移転すると、その翌年、もともと取引のあったクライアントがソーシャルゲーム市場に参入。それに伴い、開発パートナーの1社としてゼロからソーシャルゲームの開発に取り組むことになった。もちろん競合はあったが、その中で他を圧倒するポジションを獲得したのには、京都という地域性が大きく影響している。
京都はもともとクリエーターが多く住む街だ。大学や専門学校が多いこともあって若年層の数も多い。その一方でゲームコンテンツを開発する会社がほとんどないため採用面における競争は激しくない。採用コストが下がり、コンテンツ制作に資本を集中させることができたことが飛躍的な成長をもたらす大きな要因となった。
クライアントであるパブリッシャーが安定した経営基盤を持っており、潤沢な資金を投下できたという事情もあった。当時からエンジニアの確保は難しかったものの、もともとソーシャルゲーム自体の歴史も浅く、転職市場に十分な経験を積んだ人材は多くは存在しない。その中でWEBシステムの開発経験を持つエンジニアを中心に採用し、安定した経営基盤を生かしてコツコツと、そして着実にスキルを積み重ねてきたことが成果につながったのである。
システム開発部マネージャー・立見氏は、WEBサービスサイトの開発を主軸事業としていた時代に入社し、同社におけるソーシャルゲーム事業の基盤づくりに貢献したエンジニアの1人だ。
「ソーシャルゲームとコンシューマゲームでは開発環境・技術は大きく違います。
ソーシャルゲームでは何万人ものユーザーが同時にアクセスしてゲームをプレイしますので、当然ゲームの作り方も変わってきます。弊社がソーシャルゲームに参入した当時、すでに勝ち組と呼ばれる企業はありましたが、その段階でもまだまだ新しい業界でした。手探り状態ではありましたが、クライアントと一緒にゲームの開発や運営のノウハウを構築しました」(立見氏)
この間、ユーザーのニーズは多様化し、よりリッチなクリエイティブが求められるようになるなど業界はめまぐるしく変化してきた。その隙間に生じる勝機を着実にキャッチアップすることで成長を遂げたのがテクロス社といえるだろう。
プロフェッショナルなクリエーターが落ち着いて仕事ができる会社
テクロス社における直近2年間の社員の定着率は90%という圧倒的に高い水準である。それは社員が落ち着いて仕事ができる働きやすい環境づくりを基本方針に掲げ実行してきた結果である。例えば1タイトルを担当する制作チームは余裕を持った人数を割り当て、無理のない開発体制を整備している。その一方で、年齢や経験年数、入社年次に捕らわれずに意見を言い、実行できるような組織風土を醸成してきた。精神論に立脚した「頑張り」や、上司の顔色を窺って行動することを評価するような風土はことごとく排除することで、それぞれがやるべき仕事に集中できる環境を構築してきたのである。
「働きやすい会社」「無理のない開発体制」という表現を使いはするものの、決して緩い雰囲気はない。同社は高いプロ意識を持ったクリエーターが集まる組織である。ゲーム会社としてより優れたサービスを作り続けるためにはどうすれば良いかを最優先に考える。その意識は経営者から入社数ヶ月の社員に至るまで全員が共有している。そのため就業時間のオフィスには張り詰めた空気が漂う。人事部ゼネラルマネージャー・大椛氏が語る。
「誰もが発言しやすい組織であることは事実です。しかし発言には当然責任が伴います。気安い感じで「こんなこと出来たらいいのに」といった瞬間に、周囲からは「それなら自分でやってみたら?」と反応されるのが常です。言い出しておきながら行動が伴わなければ周りからは「口を出したかっただけで本気で求めてはいなかったんだね」と評価されてしまうだけです。もちろん発言は大いに結構ですが、みな行動レベルを意識して発言するようになる。そういう意味では、どこよりもシビアな組織ですが、その中で個々人のレベルアップが図れるのです」(大椛氏)
採用のミスマッチが少ないことも、シビアさを保ちながら高い定着率を実現す要因の1つだろう。特にスピードが重要な中途採用では、経営者が書類選考を行い、その上でマネージャーが面接を行う。書類選考の段階で、しっかり目利きができる経営者が判断することでミスマッチの可能性は低くなる。また即日内定を出すことも可能なので、優秀な人材を取り逃がす確率も低くなる。
このような会社なので在籍するクリエーターのレベルは高い。入社時点でソーシャルゲーム業界の経験は浅くても、張り詰めた空気の中で緊張感とスピード感を持って業務に関わることで、経験値がどんどん上がっていく。技術だけではなく自律性もめきめきとついてくる。
もちろん理不尽な自己責任論を振りかざすブラックな社風ではない。人柄の良い社員が集まっているし、マネージャー層が社員一人ひとりの様子を見ながらフォローするというマネジメントもしっかり機能している。
ディレクター・鳥居氏は、テクロスがゲーム開発に携わることとなった2012年に入社した。
「ゲームそのもののディレクションだけではなく、プロジェクトがうまく回るよう、各セクションの力を120%引き出すことが私の仕事です。テクロスは、もともと自由な良い雰囲気の会社です。最高のコンテンツを実現するために、それを崩さずに組織化をしていきたいと考えています」(鳥居氏)
開発費2億円の規模のタイトルを企画から開発運営まで完全内製で手がける会社はごくまれな存在だ。クライアントからの信頼も厚く、しがらみのない環境なので、ユーザーに喜ばれるゲームコンテンツを実現することに集中できる。新しい技術や未経験の領域にも貪欲に挑戦できる環境もある。テクロス社は、より上のレベルで戦いたいクリエーターにとって魅力的な会社であることは間違いない。話を聞きに行くだけでも損はない。