本稿を寄稿したBobby Gill氏はニューヨークを拠点とするアプリ開発会社Blue Label Lab.の共同創業者兼CTO。
オンラインショッピングの体験をパーソナライズすることが、優れたサービスを提供することを意味しているかどうかはさておき、あらゆる企業は顧客の生活により関連性の高い情報を見つけたいと考えてることは間違いない。
Domino’s PizzaがAmazon Echoで注文できる機能を導入した際、明確な消費者にとっての利益、つまり、何もしてないのに好きなパイを注文できるという機能に注力していた。
こういった取り組みは、個別のユーティリティを顧客に提供することで、消費者の関わり方と意識を高めるために人工知能(AI)を活用した一例と言えるだろう。
AIは周辺のもので、そしておそらく若干の未来的なマーケティング戦術のような気がしていたかもしれないが、Amazon Echo(現在800万世帯に入ってる)やGoogle Homeのような家庭用機器によって、こうした体験を主流にしようとしている 。
より多くの消費者が家庭向けのサポートプロダクトに飛びつくことになれば、先進的な考え方の企業はこういった消費者の生活に適応するための新たな手法を考えることになるだろう。
こういった経験を通じてブランドが得られる利点というのは、おおよそ日々の作業を合理化したり簡素化したりといったものが中心で、それゆえにマーケターにとってはブランド化された便利なサービスを通じて利用ユーザーと繋がる絶好の機会になるのだ。
確かにEchoのようなデバイスは新たな「隠し芸」に最適だ。例えばこんな風に。
「Alexa! Queenの「Bohemian Rhapsody」を演奏して。 ボリューム 8で!」
さらに重要なのは、ハンズフリーコンピューティングを使って人々の生活を楽にしてくれる。電話に応答する、カレンダーイベントを入力する、またはやることリストの進捗状況を追跡するなどの単純なタスクは、物理的にコンピュータにコマンドを入力する必要がある場合は複雑になりがちだ。企業がAIボイスアシスタントを活用してその面倒を取り除くことで、真の(そして歓迎された)方法で消費者の日常生活にブランドを効果的に組み込むことができる。
マーケティング効果のための「使いやすさ」
AIの音声アシスタントはブランドを価値のあるものに結びつける素晴らしい機会を提供してくれる。AIはマーケティング目標を達成し、明確な消費者利益をもたらすことができる。すなわち真のwin-winの状況を生み出してくれるのだ。
例えばUberとLyftは顧客がコマンドを呼び出すだけでEcho経由で配車サービスに電話をするツールを提供している。ブランドは消費者行動にもっと浸透することで利益を勝ち取り、消費者はより直接的な方法で配車サービスを体験することで利便性を勝ち取ることになるのだ。
フォードは顧客に車内でAlexaの機能を提供する正式なパートナーシップを発表し、さらなるステップを踏み出した。もし2億5千万台の車両にAlexaが2020年までに完全に搭載されるという最近の予想に対して同意するのならこれは悪い賭けではない。Capital Oneもオンラインバンキングのトレンドを先取りしており、顧客は「Alexa、私は先週いくら使った?」という簡単なコマンドで週ごとの支出を確認することができるのだ。
断絶された広告体験によって消費者のブランドへの注目度が減少しつつある今、消費者の日々の生活に利益をもたらす(そして混乱させない)方法でブランドを注入することは、企業のマーケティングアプローチが大きくシフトしていることを表している。AIボイスアシスタント上に構築されたスキルのようなブランドのユーティリティ操作は、企業にとって有望な機会を提供する。ーーこれは皆さんが考える以上に可能性のある方法なのだ。
AIを使ったブランドユーティリティの構築
ボイス・パワー・アプリケーション(あるいはAmazon Echoの世界で言うところの「Alexa Skills」)の作成に関連するスキルセットは、他のタイプのアプリケーションを構築するために必要なスキルセットに似ている。コーディング言語とフレームワークは同じだ。さらにAIボイスアシスタントに関連するダイアローグや会話を企画開発することは、テキストベースのチャットボットに必要なものと同様である。唯一の違いはチャットボットには入力用のキーボードが必要であるが、音声AIには音声コマンドが必要な点である。
スキルはその複雑さに応じて開発やテスト、およびロールアウトにおおよそ2〜4週間かかる。このプロセスの最初のステップはAIアシスタントのダイアローグをスクリプト化することだ。そこから他のサードパーティ・テクノロジーやAPIとの必要な統合を検討する。スキルのスコープがおおよそできれば、次のステップは開発とテストを開始することだ。
自然言語処理には微妙な違いがある。コマンドをテストするときに特定の会話フローをより自然に聞こえるように調整する必要があることがわかる。アシスタントを育成する方法がどれほど優秀であっても、会話は顧客に提供する価値のあるものから始めなければならないことを覚えておこう。 つまりAI音声アシスタントがそのユーティリティの適切な手段であるかどうかを検討するということだ。 何か他のことをする前にその点を証明する。
AI音声アシスタントをもう少し後でやる予定のものだと思っているなら、もう一度考えてみて欲しい。GoogleのJaja Liao氏がVentureBeatに最近書いたように、1930年にはアメリカの家庭の40%しかラジオを持っていなかった。しかし10年後にはラジオがアメリカのリビングルームの80%以上に普及したためその割合は倍増したのだ。
Amazon EchoやGoogle Homeのようなボイスアシストのボットは、今日の新興テクノロジーの分野に堂々とはまっているが、今後数年のうちに急速に消費者にとってより自然で直感的に理解できるものになっているだろう。AI音声革命を計画する時は、将来ではなく現在なのである。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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