■遅れてくる「お尋ね文書」
質問では、2つの論点が問題になった。1つは通常の相続税申告期限を超えて、2~3年後にお尋ね文書が来るのかどうか。もう1つはお尋ね文書が送られてくる基準であった。これに関して、まず数年後にやってくるお尋ね文書について回答が得られた。
「2〜3年してからということが実際にあるかどうかは分かりませんが、準確定申告(死亡した年の最初から死亡した月までの確定申告)が通常の確定申告の期限近くになってしまうと、通常の確定申告の処理に追われますので後回しになる可能性はあると思います」(merciusakoさん)
「税金の時効は5年(脱税など悪質なものは7年)ですから『2~3年』経過してお尋ねが来ることは珍しくありません」(Q_A_333さん)
回答の中で「相続税が発生しそうなケース」とあったが、これは基礎控除額を元に考えている。では、お尋ね文書の基準ともなる基礎控除額について、次項で詳しく見てみよう。
■大きく増税に動いた2017年の相続税
基礎控除額と言っても、その内容は毎年国税局から発表される税制大綱によって変更されることがしばしばである。そこで、今年の相続税の基礎控除額とお尋ね文書について、元国税調査官で税理士の松嶋洋氏に解説していただいた。
「平成27年1月1日から、相続税の課税最低限である基礎控除が6割に縮減するなどした大増税の関係で、相続税の申告をしなければならない方が非常に増えています。相続が開始した場合、その相続人などは、死亡の事実を知った日から7日以内に、市区町村役場に死亡届を提出する必要があるとされています。この死亡届が提出された場合、相続税法において、その提出を受けた市区町村は税務署に相続が発生したことを通知しなければならないとされています」(松嶋洋氏)
さらに、松嶋氏によると、
「この通知に加えて、被相続人の過去の所得税の申告状況などから被相続人に相当の財産があると見込める場合には、相続税の納税義務があると認められることから、その被相続人の相続人に対してお尋ねを発送することになります」
ということだった。
「とは言え、相続税のお尋ねはあくまでも納税者に対する行政指導という指導に過ぎませんので、それが来たからと言って確実に申告しなければならないわけではありません。相続税の申告義務は、相続により取得した財産が、基礎控除を超える場合に発生するとされていますので、基礎控除以下の財産しかないのであれば、申告する必要はありません。相続税の基礎控除は、以下の算式で計算されますので、例えば相続人が配偶者と子二人の家族であれば、4800万円までは申告する必要はありません。このため、この要件に該当するのであれば、申告する必要がないことについて、相続税のお尋ねに書かれた担当者に申し出れば問題ありません」(松嶋洋氏)
・基礎控除の計算式
3000万円+600万円×法定相続人の数
相続税が発生する下限である基礎控除額が提示されたが、松嶋氏は今一度、税務署から送付されるお尋ね文書に関して注意を促している。
「このように申し上げますと、相続税の申告義務があると認められる場合には、必ず相続税のお尋ねがくるとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、この文書はあくまでも国税が納税義務があると想定している方に対して発送するものです。このため、来ない場合でも納税義務がある場合がありますので、相続があった場合には、上記に照らして申告義務があるかどうか、きちんと検討する必要があります」
税務署からわざわざ書類が送られてくるなんて、自分はもしかしたらとんでもないミスを犯したのではないか、と焦ってはいけない。一方でこのような場面を想定して、相続の際に交わした書類などを、向こう数年のうちはすぐわかる場所に保管するよう心がけておくと良いだろう。
●専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供している。