現在放映中のアニメ「エロマンガ先生」ってどんなアニメなの? と聞かれたらこう言いたい。
エンディングを見ろ。
カメラは固定。でっかいTシャツ1枚で、一人の少女が自分のぱんつを洗濯している横でリズムを取る。だんだんテンション上がってきて、飛び跳ねて元気に踊り始める。一人で。「飛ばせないエンディング」としてファンの間で大好評。
だって、彼女めちゃくちゃ「楽しそう」なんだもの。すごくない? 一人で、何もない洗濯機の前で「楽しい」を見つけて、最大限遊べるんだよ。彼女の頭の中は楽しいことでいっぱいなんだよ。
主人公・和泉正宗は、高校1年生のラノベ作家。挿絵イラストレーターは「エロマンガ先生」。正宗はエロマンガ先生と一緒に仕事できたことを誇りに思っていた。
正宗の家には、中1の引きこもりの義理の妹・和泉紗霧がいる。正宗は顔を合わせないまま、彼女のために毎日料理を作って部屋の前に置いていた。
ある日、紗霧がイラストレーターのエロマンガ先生だったことを知る……どんな確率だ!
原作者・伏見つかさの「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の妹ヒロイン・高坂桐乃と、序盤の設定だけ見ると外側は真逆。内面はかなり似ていると思います。
この2人の妹、「楽しい」「好き」に向ける情熱は似ています。エロゲーとか、イラストとか。好きなもののためなら、全力で頑張る。兄の立場として、形は違えども応援したくなる2人です。
兄の正宗は、紗霧のことがかわいくてかわいくて仕方ない。まじで目に入れても痛がらなさそう。リア充委員長・神野めぐみが来た時の、正宗による妹紹介がすごいので引用します。
「まず見た目はむちゃくちゃキレイでかわいい。パット見無表情でおとなしそうで、まさに可憐な乙女って感じなんだが、話してみるとコロコロ表情が変わって、愛嬌があるんだ」
とてもじゃないけど、好きだとしてもここまで言えない……。ひねくれやイヤミが一切ない。こういう誠実な言葉を紡げるところが、彼の作家性なのかな。
4話「エロマンガ先生」までが、いわば第一部といったところのこの作品。紗霧の出番は、意外とそこまで多くないです。
彼女のことを守ろうとする正宗、価値感が違う委員長の神野めぐみ、オリコン1位の高飛車金髪美少女ラノベ作家・山田エルフの方が目立つ。
周囲の人間のやり取りによって、紗霧=エロマンガ先生像が浮き彫りになっていき、兄妹の会話シーンで本心の答え合わせ、という間接的な手法で描かれていきます。
イラストレーター紗霧=エロマンガ先生は、実際に見て描かないと納得がいかない、というこだわり派。
1話ではエロ絵を描く時、尻をふりふり突き出しながら、写真を撮っています。4話では銃を描くために実際にモデルガンを構えます。戦闘シーンが苦手だからと、部屋にこもって格闘技の試合動画や武器の資料をネットで調べまくります。苦手だった巨乳も練習しました。
画力向上の努力は、最初は全部「楽しい」からできた。だから巨乳キャラは今までは描かなかった。でも面と向かって正宗にいろいろ指摘されたことで、悔しい、うまくなりたい、という気持ちが起きる。彼女は「苦手でも頑張る」境地に一歩進みます。
加えて彼女、現時点ではかなり嫉妬深い。兄さんが取られること+和泉マサムネ先生が別の人と仕事するのをものすごい嫌がります。このへん激情家で、喜怒哀楽の波がすごい。人に伝えるのが苦手なだけ。
ただし甘えん坊じゃない。わがままじゃない。山田エルフと正宗が仲良くしていた時、彼女は兄に当たるでも、山田エルフを責めるでもなかった。並び立てるよう、自分の画力を成長させました。
紗霧はOPでも、ネット配信の服装でモンキーダンスをしています。「楽しい」ことの定規は自分で明確にもっているので、人の価値観には左右されない。一人でも楽しいと思ったら、楽しめる。
だからOPで紗霧と正宗が完全並列で走っているのが、すごくいい。4話ラストでも語られますが、正宗の夢に紗霧がついて行くんじゃなく、2人で楽しいことを見つけた、夢を追いかけるって決めた。こういう「楽しい」の感情が純粋に伝わるから、エロマンガ先生は作家として人気で、みんな彼女と仕事したくなるんだろうな。
2人の間に恋愛感情があるかないかはモヤーっとしか見せられていません(っていうか正宗くん、君のは恋だよ)。
ただ、ライバル&友人的な位置の山田エルフがめっちゃいい子なんですよ……紗霧へのラブレターのような正宗の小説を読まされた時の気持ちを考えると、切なくなります。みんな頑張れ、ラノベ道も恋も。
あと和泉マサムネ先生と山田エルフ先生の新刊サイン入りでください。
(たまごまご)
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