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“不親切すぎる二条城” 文化財活用へ
更新:05/05 19:52
東大卒で大蔵省出身。去年、7期目で初入閣した山本幸三地方創生担当大臣。先月、大津市で行った文化財の活用についての講演に、批判が相次ぎました。
「一番のがんは文化学芸員と言われている人たち。この連中は普通の観光マインドが全くないですから。この連中を一掃しないといけない」(山本幸三地方創生相)
資料の収集や展示などを担う学芸員を「がん」で「一掃すべき」と発言。翌日には謝罪と発言撤回に追い込まれましたが、発言の意図を説明する中で気になる発言が…
「私の20年来の友人のイギリス人の文化財・観光に造詣が深い友人からうかがったことを申し上げたが…」(山本幸三地方創生相)
「20年来の友人のイギリス人」。実はそれがデービッド=アトキンソンさんのことだったのです。アトキンソンさんは去年、発売した著書の中で…
「文化財を『楽しめる、くつろげる、勉強できる場』にしようとすると、困る人々も存在します。その代表が、文化財の専門家、とりわけ学芸員でしょう。文化財行政を変革すると、学芸員はこれまでのように(中略)文化財をあたかも自分の所有物のように扱うことができなくなります」(アトキンソンさん 『国宝消滅』より)
もちろん「がん」などとは一言も言っていませんが、趣旨としてはよく似た内容が。
「(文化財のルールで)水も使えない、火も使えない。だからお花を生けるのもいけない。お茶をすることもできない。バカげたことが起きている」(山本幸三地方創生相)
山本大臣が文化財を活用できていない具体例として挙げた、京都の史跡についても…
「先日も、二条城で生花を飾るイベントがあった際、水の利用が禁止となったようです。万が一のときにも畳を替えればすみますし、第一、その畳は元々のものではないのです」(アトキンソンさん 『国宝消滅』より)
重なる両者の主張。大臣の失言の発端となったのは、やはりアトキンソンさんだったのでしょうか?ただ、アトキンソンさんが特別顧問を務める京都の世界遺産・二条城を取材すると、現場はすでに「大きく変わりつつある」といいます。
国宝の二の丸御殿や重要文化財の唐門など文化財の宝庫ですが…以前は砂利道でベビーカーが移動しづらかったり、外国語の案内がほとんどないなど、観光客に不親切すぎると指摘されていました。今週、外国人観光客でにぎわう二条城を訪ねてみると…二の丸御殿の前には中国語からフランス語まで「7か国語」の看板が。
「この7言語で、訪日外国人客の9割超の言語をカバーできる」(元離宮二条城事務所 北村信幸所長)
御殿の中でも新しく設置された詳しい英語の案内板を観光客が熱心に読んでいます。江戸から明治へ、歴史の転換点となった「大政奉還」が行われた大広間。まさに歴史を肌で感じられる場所ですが…
「大政奉還というのをローマ字で『Taiseihokan』と示していましたので」(元離宮二条城事務所 北村信幸所長)
日本人にもわかりづらい難解な言葉を以前はただローマ字で表記するだけでしたが、ようやく「王政の復古」、天皇を中心とする体制が復活したのだと英語で説明されたのです。転換点は去年10月。国際フォーラムで外国から招待客を多数招いたことをきっかけに、展示や活用法を抜本的に変革。消防と打ち合わせした上で「唐門」の近くでかがり火をたいたり、二の丸御殿の黒書院で初めて水を使った「生け花」も披露されました。
「国宝の使い方としては一つの大きなターニングポイントかと思う」(元離宮二条城事務所 北村信幸所長)
学芸員を「がん」呼ばわりした大臣の発言。文化財を修復・保護し、展示の企画まで担ってきた現場の学芸員は、どう感じているのでしょうか?
「(学芸員の)彼ら彼女らも障壁画をどんな風に伝えるかは、これまでも一生懸命考えてきてるし、これからもそのスタンスは変わらない。(文化財の)保存と活用のバランスをどうとっていくかというのが、我々に課せられた課題」(元離宮二条城事務所 北村信幸所長)