筆者の周り(SNS含む)には「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」や「Horizon Zero Dawn」で初めてオープンワールドの魅力に取り憑かれた人をよく見かける。そんな方達に向けて、剣と魔法・世紀末・クライム(犯罪)系の3つのジャンルに分け、現行機で遊べるタイトルをピックアップした。ただ、既にオープンワールドにハマっている人には役に立たない選出だということを始めに断っておきたい。
剣と魔法
「ウィッチャー3」 物語主導型、万人向け
本作は、用意された人物を通して世界を観る。物語主導型。以上の2点からJRPGと似た設計が特徴的でありながら、海外のRPGらしく世界観の背景が深いという、西洋と東洋のニュアンスを含んだハイブリッド型オープンワールドRPGと言えよう。今回挙げているリストの中で1番おすすめしやすいタイトルだ。またキャラクターのビジュアル的にも勧めやすく、洋ゲーらしからぬ美女揃いイケオジ揃いだ。
プレイヤーはウィッチャーのゲラルト視点で世界を観る。ウィッチャーとは、怪物退治を生業とする特殊なハンターの名称で、彼らは自身の身体能力を高めるために幼少の頃から薬物投与など常人離れした訓練を受けている。最強の戦士とも言える彼らは、村人から一国の高官まで依頼主が後を絶たないが、差別的発言を受けることも多い。
前作の終盤で記憶を取り戻したゲラルトの最初の目的は、愛娘同然のシリと、最愛の恋人イエネファーの2人を探すこと。最愛のというのがミソで、ゲラルトは大の女好きだ。勿論それはプレイヤーの選択によって左右されるのだが、イエネファーという恋人を思い出した後、旅の道中に出会う魔女や美女にどう接するのかはプレイヤー次第。
よく本作を勧める際に問われるのは「前作を知らなくても楽しめる?」という質問だ。
勿論、前作を知っていればより楽しめる面はあるが、知らなくても楽しめるよう設計されてあるとハッキリ言っておこう。前作を振り返るフッテージは仕込まれており、各キャラの細かい出自はいつでもメニューで確認できる。登場人物や経緯を知る上で過去作を遊ぶ必要がないように出来ており、知らずとも十分楽しめるようにできている。
物語主導型の本作のサイドクエストはというと、メインクエストに劣らず経緯やNPCの内情などを深く描写している。まるで短編小説を実体験しているかのような感覚を覚えることもある。殺人事件あり、愛憎劇あり、偶像(怪物)崇拝あり、宗教問題あり、魔女弾劾あり、そして怪物目線の話しも多い。ウィッチャーの本業である怪物退治のクエストは、ありきたりなものではない。面白いので順を追って説明したい。
怪物退治の多くは、まず依頼主に事情聴取し、モンスターの特徴を聞き出すことから始まる。見た目の特徴、鳴き声などを聞いたあとは、実際に被害者が襲われた現場へ向かう。散乱した荷物、死体、血痕、足跡などを発見した後は、いよいよ追跡だ。「ウィッチャーの感覚」という「アサシンクリード」でいう「鷹の目」のような特殊ビジョンを使い、ハイライトされた足跡や血痕を追っていき、モンスターの居所を見つけ退治する。この一連の流れは本作ならではの体験だろう。
戦闘はオープンワールドRPGとしては珍しく、剣戟アクションを特徴とし、難易度は若干高め。怪物なら“銀の剣”人間ならば“鋼の剣”と、相手に合わせ武器を選択し、印と呼ばれる魔法を使い、時には霊薬を飲んで自身を強化するなどしよう。印について紹介しなかったが、手から火を出す攻撃的な印から、ダメージを軽減するバフや、相手を洗脳する印などがある。
「Skyrim」 自由度重視、剣と魔法の金字塔
端的に言えば、剣と魔法の世界版「Fallout」だ。ドラゴンやエルフなどお馴染みの生物が登場するファンタジーを舞台としているが、世界観の構築が凄まじい。特にこの点においてベセスダのRPGは、他社から抜きん出ているように思う。バックボーンに辞書があるのを想像するちょうどいいかもしれない。
本作に出てくる人間はというと、史実のような歴史を繰り広げている。エルフ連合軍と帝国軍の戦争終結後に、こっそり条約に仕込まれていたタロス崇拝の禁止を受け、タロスを崇拝するノルド人が反乱軍を結成しはじめる。そんな世界でプレイヤーは、人間からオークまで複数の種族から自身の分身を作り、ノルド人と共に反乱軍に参加するもよし、帝国軍に参加するもよしだ。メインの勢力が以上の2つだが、他にも様々な派閥がある。
戦士ギルドの同胞団(狼になれるよ!うーがおー!)、魔術師ギルドのウィンターホールド大学(ホグワーツ魔法魔術学校)、盗賊ギルド(正義のアウトロー)闇の一党(ゼロから始める暗殺(おつかい)生活)など、あなたのロールプレイにあった派閥がきっとある。勿論、唯我独尊我が道を行くプレイもおすすめだ。
NPCとのインタラクションは非常に多用で、100時間経とうが新鮮な対応や会話が待っている。ただ、同じ声のNPCとよく出会う点が少し残念だ。メインストーリーで会うお偉いさんが、村人役などをこなしているのだから違和感を覚えないと言ったら嘘になる。
パーティーは存在しないが、従者(パートナー)は存在する。酒場にいる傭兵を雇ったり、二つ名持ちのユニークキャラクター、メインストーリーで出会うものなど選択肢は多い。彼らは往々にしてプレイヤーの荷物持ちになってしまうが「あなたの重荷は背負うって誓ったのよ」と納得してくれている。
戦闘は三人称視点と一人称視点から選べ、剣などの武器を使った近接攻撃から弓や魔法が扱える。魔法以外のモーションは、ただ武器を振り回したりしているだけなので、見た目はかなり地味。フィニッシュムーブはかっこいいが、この点は間違っても期待してはいけない……。魔法は手を前に突き出すモーションこそ地味だが、エフェクトは派手でかっこいい。しかし、魔法を極めしものより脳筋が勝る世界であり、最も強いのは弓だと筆者は思う。
「シャドウ・オブ・モルドール」 アクション重視、斬新なネメシスシステム
指輪物語が題材となっている本作の主人公はホビットではなく、悲惨な過去を背負う人間タリオン。時系列は「ホビットの冒険」と「ロード・オブ・ザ・リング」の間だ。彼は、エルフの幽鬼と手を組むようになり、幽鬼の力を得たタリオンは人の域を超えた戦闘力を得る。戦闘はとても酷くスタイリッシュで非常に楽しいし、壁登りなど一連のパルクールアクションはヌルヌルでストレスフリーだ。しかし、本作の特徴はなんといっても、ネメシスシステムと呼ばれる革新的なAIにある。
舞台となるモルドールは、上から黒の総大将、軍団長、小隊長の順で編成されているサウロン軍が支配していることを頭に入れておいて欲しい。サウロン軍の中では派閥同士の抗争が生じており、そこにプレイヤーは介入することができる。例えば、弱いウルクが率いる派閥の抗争相手を倒すことで、小隊長から軍団長に昇格させていくことが出来る。
また、小隊長ではない無名のウルク(いわゆる雑魚)も昇格できるようになっており、名無しからの下克上という浪漫もある。名無しのウルクから隊長クラスのウルクまで思うように変動させられるので、情勢を大きく変える黒幕のような気分を味わえる。これはまだネメシスシステムの一部だ。
ネメシスシステムにより、タリオンを殺した敵が小隊長や軍団長に昇格して再びプレイヤーの前に立ちふさがる場面は何とも言えない感動を覚える。敵はタリオンを殺したことを覚えており、同じ相手と再度相対すると「ゆっくりいたぶってやる」などといったセリフを吐くのが面白く、ライバル心が芽生えると同時に愛着が湧いてくる。
徹頭徹尾ウルク尽くしの一本だが、彼らは非常に人間味溢れている。指輪物語好きには勿論だが、NPCとの触れ合いに興味がある人に全力でおすすめしたいタイトルだ。
世紀末
「Fallout4」 自由度重視、イカれたヤツらと過ごす世紀末ライフ
世紀末といえばこれだ。核弾頭ミサイルにより崩壊し汚染されたボストンがモデルの世界を舞台とし、プレイヤーは誘拐された子供を探す旅に出る。法も秩序もない世界では荒くれ者が7、一般人が3の割合で生活している。レイダーと呼称される荒くれ者は、前作「Fallout3」と大差ないが、一般人のAIが激変している。道徳心ある生存者たちは、数人で集まり集落を作り、畑を耕し食物を育て、自給自足をしているのだ。これが非常に没入感と生活感、リアリティを高めてくれている。プレイヤーは集落の民と交流することができ、より良い設備を整えてあげたり、他所から人を呼び住民を増やすことも出来る。おっと、もちろん略奪することもできる。
筆者含めあまり馴染みないと思うが、ボストンをモデルにした様々な建造物の再現度は実に高く、世紀末と化しても観光のしがいが十二分にある。何かボストンが舞台の映画かドラマを見てフェンウェイパークやボストン公共図書館、バンカーヒル記念塔など著名な建造物を知っておくとより楽しめる。
シリーズ一番の変化であり、目玉要素でもあるのは、装備から街づくりまでを可能とするクラフトシステムだ。オープンワールドで装備を強化/クラフトするゲームは数多くあれど、自由に村を作れるゲームはないだろう。
居住地と呼ばれるNPCが集うエリアで、プレイヤーは資源さえあれば、更地から始まる居住地を好きにいじれる。畑を作り作物を植える所からはじめ、いま居る住人分の寝床と屋根のある部屋を用意、対外敵用のタレットやバリケードを設置、監視塔を作り住人を見張りに任命、余裕が出てきたら商いの場となる屋台を作ることで人の行き来を頻繁に発生させることもできる。
これはまだ氷山の一角の要素に過ぎない。本作は、居住地を経営するシミュレーションゲームの一面をも持つ恐ろしいタイトルだ。ハマったら最後抜け出すのに100時間は必要とするかもしれない……。
「ボーダーランズ ダブルデラックス コレクション」 ハクスラ重視
本作は「ボーダーランズ2」と「ボーダーランズ プリシークエル」本編に加え全てのDLCを収録している。ボーダーランズシリーズは、太くて濃い独特なトゥーンレンダリングと、「ディアブロ」のようにボロボロアイテムを落とすハック&スラッシュ要素が特徴的なRPGシューター。キャラクター(クラス)は2作とも6つ存在し、各クラスは独特のスキルを持つ。スキルツリーの分岐は豊富で、かなり洋RPGらしいレベルデザイン。武器や装備にもステータスを強化するバフがあり、これまた「ディアブロ」に近いスキル+アイテムベースのビルド要素を持つ。最近のゲームだと「仁王」に近い。
一癖も二癖もあるキャラクターが織り成すギャグ要素の強いクエストも特徴的だ。いくつか例をあげると、Bandit(荒くれ者)が依頼人のとあるクエストでは「今すぐ!(俺の)顔に弾を撃ち込むんだ! 俺には弾が必要だ! 弾が欲しいんだ! くれ!」と叫ぶ人が出てきたり、MMORPGが題材のクエストでは、狩場(経験値を稼ぐのに美味しい場所)争奪からのPvPに発展し「さっさとアンインストールしろ!」などの罵詈雑言が飛び交う。
主要キャラクターも皆ユニークで、シリーズのマスコットキャラクタークラップトラップを挙げよう。底抜けの楽観主義の彼の発言は余計な一言が多いが、可愛らしい一面も備える愛らしいロボットだ。プレイヤー以上にNPCからウザがられている様子を見ると構ってあげたくなってしまう。
「Sunset Overdrive」 アクション重視 JSR風 ギャグ要素強し
ジェットセットラジオが好き?デットプールが好き?どれか1つでも当てはまるなら諸手を挙げて勧めたい。はじめに、本作ほど“移動”そのものが楽しいオープンワールドはないと言っても過言ではないことを説明させてほしい。
サンセットオーバードライブの移動はグラインド(滑り)が基本だ。ジェットセットラジオのスケート走行からインプレッションを受け、現代的に昇華させている。ガードレールや手すりなど分かりやすいルートはもちろん、建造物の縁、電線の上など様々な場所をストレスフリーで容易にグラインド出来る。車など凸型のオブジェクトはジャンプ台の役割を果たすため、レールから外れても復帰が容易。さらには、ウォールランもできる。目に見えるオブジェクトのほとんどが移動手段になっている。そのため、慣れれば地面に一切足を着くことなく、マップの端から端まで移動することさえできる!豊富な移動手段を文字に起こすと複雑そうだが、パルクールアクションの操作は全て1ボタンで実行できる。
戦闘は「ラチェット&クランク」などで知られる“Insomniac Games”が得意とするTPSを採用しており、とにかく派手な代物が多い。爆発するテディベアを発射するグレネードランチャー、ボーリングの球を発射する武器など様々。そして武器は、使えば使うほど性能が強化される。
「デットプール」との共通点は、型破りなヒーローそして視聴者に向けて話したりするメタ発言の2点。
本作は悲壮感を感じさせない逆説的な世紀末を描き、メタ発言と悪ノリが満載のシナリオも特徴的。プレイヤーは自身の分身となるキャラクターを作るのだが、まぁそいつが「全滅させてもリスポーンするからな」「ファストトラベルがあって良かったぜ!」など、よくメタ発言をする。敵キャラクターもやけにテンションが高く、憎めない相手ばかりだ。
話しを少し戻すと、キャラクターのカスタマイズにも力を入れている。着せ替えは上着、中着、下着、靴、アクセサリー、と細かく区別され、組み合わせは自由だ。全ての服やアクセサリーは男女兼用で、制約は存在しない。勿論、イベントシーンでは着せ替えがばっちり反映されている。
無駄なのでは?といえばお終いだが、リスポーンの演出にも拘っており、死ぬのもまたひとつの楽しみになっている。緑の土管から出てきたり、ブラウン管テレビから出てきたりとネタが豊富すぎてアクションゲームが得意な人は全てを見ずにクリアしてしまうだろう。
ここまで書いて気づいたが、本作は隅々まで“エンターテイメント”で埋め尽くされている。
クライム系
「Grand Theft Auto V」従来のGTAと一線を画す
ロサンゼルスをまるまる再現し、ハリウッドの看板が見える山の向こう側まで世界が広がる「Grand Theft Auto V」は2017年現在でもクレイジーな規模と密度を誇る。
家族を持つ元ベテラン銀行強盗犯のマイケル、人肉を食べることもあるシリーズ1クレイジーなトレバー、元ストリートギャングで一般的な?黒人像を持つフランクリン、このプレイアブルな3人を主人公とし物語を進める珍しい手法を取り入れている。3人の描写は誰一人おざなりになることがなく、しっかり掘り下げられる。
ハリウッドの本場であり、多くの観光名所があるロサンゼルスという大舞台での各ミッションは非常に楽しい。バイクに乗って女優のパパラッチをしたり、スタジオに潜入し俳優になりすますハリウッドならではのミッションから、ヘリコプターを使ったド派手な銀行強盗まである。妻子を持つマイケルのミッションは海外ドラマを観ている気分になる。
GTAといえば豊富に用意されたアクティビティや自由な犯罪行使は勿論だが、メインミッションからサブミッションまでクレイジーなシナリオが用意されているので、個人的にはそこに注目してほしい。
戦闘は銃器を使った三人称視点のカバーシューターが主だったが、一人称視点で遊べるようになったので、FPSにもなる。他は従来のGTAスタイルだ。一人称視点でのプレイは非常に新鮮で戦闘以外にも良い効果を与える。単純に景色を観る時などは勿論だが、特に一人称視点で車両を運転するのがいい。ロサンゼルスをドライブしているような気分に浸れる。
「ウォッチドッグス2」ハッキング×オープンワールド
陰鬱な一作目の印象を払拭するかのように本作の登場人物は、皆明るく前向きでウィットに富んでいる。プレイヤーは精神年齢の格差が激しい若きハッカー集団「デッドセック」の一員となり、ハッキングという手段を使って悪徳企業を糾弾(茶化)していく。
オープンワールドの世界で、ハッキング出来るとはいえ実際にハックできる対象が少なく上手く活かされていない、前作の反省から今作ではより多くのものをハッキングできるようになっている。
例として1つあげると、車をハッキングして、バックさせたり前進させたりすることが可能になっている。個人的にこれの最も面白い点は、玉突き事故を間接的に起こし、車から降りて怒鳴り合ったり殴り合いになるNPCたちの喧嘩を素知らぬ顔で観察すること。カーチェイス中には、敵の車両を適当にカーブさせ追跡を防止でき非常に有用だ。
指定されたスポットを撮影することでリワードが貰える単純なクエスト「ScoutX」は、サンフランシスコを観光したいプレイヤーにもってこいだ。見晴らしが良いスポットから、コスプレ?をしたNPCの撮影依頼まである。また、乗客を車に乗せ目的地まで運ぶ「ドライバーサンフランシスコ」という「クレイジータクシー」のようなクエストでも同じような体験ができる。
ミッションは、ドローンとラジコンカーという新たなガシェットの登場によって柔軟性がより増している。例えばラジコンカーは、小さな排気口から侵入し、内側からロックを解除したり直接敵が気絶させられる。新ガジェットにより、ひとつの目的地にたどり着く方法や攻略手段は少なくとも2、3個はあり、多方向からアプローチ出来る。