ISE英富裕層調査
年収1.4億以上のミリオネアでも「ほかの超富裕層ほど高所得ではない」と劣等感を覚えていることが分かった。
英男性の2013年度所得中央値 は2万4300万ポンド(約353万円)、女性所得中央値は1万9000ポンド(約276万円)である事実と比較すると、ずいぶん恵まれた境遇であることは確かだが、最高所得層の底辺に属する富裕層にとっては、「まだまだ十分な富を得ていない」という不満感が強いようだ。
この調査はロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(lSE)が英国で実施したもの。総人口のわずか1%という総年収14万ポンド以上を「最高所得層」と定義。年収14万ポンドから5000万ポンド(約2039万円から72億8164万円)の高所得層30人のインタビューを交え、富裕層間の所得格差について分析している(2010年度のデータに基づく)。
100万ポンド(年収1.4億円)調査から判明した。
調査に協力した最高所得層30人中、個人年収14万ポンドから40万ポンドが16人、最高100万ポンドが13人、最高500万ポンドが3人、最高5000万ポンドが6人だった。
英国の最高所得層1%の2010年の平均年収は、26万7000ポンド(約3877万円)。しかしそのうち0.1%の平均年収は99万ポンド(約1億4375万円)とかなりの差が開くことが、World Wealth and Income Databaseの調べからもわかっている。
英国における最高所得層の割合は1995年から2005年には約2倍に成長したものの、それをピークに急減している。それに対し、年収60万ポンド(約8712万円)以下の層の割合は、1995年から2010年までほぼ変化していない。
調査に協力した投資銀行家は何十万ポンドという年収を得ているにも関わらず、「子どもが通う私立学校のほかの両親に比べると、自分は貧しく感じる」と語った。これらの両親の9割が1億ポンド以上の資産を所有していることを挙げ、「所得と資産は違う」点を指摘している。
資産額が大きければ大きいほど、さらに巨額の富が生み出される。シビアな現実が「自分が子どもと過ごす時間を犠牲にして身を粉にして働いているのに対し、子どもの友人の両親の多くがほとんど働いていない」という言葉に反映されている。
レポートの著者、SLEのキャサリン・ヘクト博士は、「最高所得層の1%がそのうちの0.1%に仕えているケースも多い」と述べている。つまり年収26万7000ポンドの層は99万ポンドの層に、何らかの形で雇用されているということだ。
日常的に自分より所得が多い層と接することで富裕層間の格差が浮き彫りになり、否が応でも卑屈な感情が生みだされているといったところだろうか。低・中間所得層間の格差とは比べものにはならないぐらい金額であるだけに、敗北感がなおさら増すのかも知れない。
調査に協力した別のヘッジファンド・マネージャーは、「自分には大金を稼ぎだすだけの価格決定力がある」と自負している。「ほかの人にはない能力が高収入を生みだすのは当然」という見解だ。
しかしそれと同時に「だからといって、使いきれないほどの所得を得て罪悪感を覚えないわけではない」と、自らを含めたヘッジファンド・マネージャーの平均的な所得が、「ばかばかしいほど稼ぎすぎ」であることを認めている。
前出の投資銀行家は格差を嘆く一方で、「無一文でも情熱があれば、20年で百万長者になることは夢ではない」との野望を見せている。「100万ポンドはそれほど大金というわけではない」とし、富を生みだす要素は持ち前の資産だけではないことを強調した。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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