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 安否確認が義務づけられたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で、2015年1月から1年半の間に、死亡や骨折など少なくとも3千件以上の事故が報告されたことがわかった。制度上は民間の賃貸住宅に近いが、要介護者が入居者の大半を占める例も多く、国土交通省が改善に乗り出す。

 サ高住をめぐっては、15年夏に大阪市のサ高住であった「孤独死」をきっかけに、国交省と厚生労働省が自治体にサ高住への指導徹底を求めていた。

 朝日新聞は昨秋、全国約21万戸のサ高住を監督する都道府県と政令指定都市、中核市の計114自治体に情報公開を請求。97自治体が事故報告書、すべての自治体が運営報告書を今年2月までに開示した。事故報告書によると、15年1月~16年8月末の事故は計3362件で、最多は骨折(1337件)だった。病死を除く死亡は147件。

 ただ、自治体によって報告件数は大きく異なった。東京都の301件に対し、愛知県は0件。国が報告すべき事故として、死亡や虐待、窃盗などを例示したため、骨折や薬の配布ミスなどは報告を求めない自治体もあるのが一因だ。

 サ高住は、1日1回の安否確認と生活相談が義務付けられている。夜間は緊急通報システムがあれば、職員常駐は不要だ。事故報告書では、半数以上の1730件が個室で起き、そのうち991件は職員が手薄になりがちな午後5時~翌午前9時。北海道稚内市のサ高住では15年12月、個室の床で後頭部を打ち失血死していた入居者が午前6時半に見つかった。巡回は約5時間半前の午前1時が最後だった。

 サ高住は11年の創設時、自立した高齢者の「早めの住み替え先」として普及が期待された。制度上は民間の賃貸マンションに近い扱いだが、運営面の報告書では、入居者の88%が要介護認定(要支援を含む)を受け、要介護3以上の重度者も30%と「介護施設化」が進んでいるのが実態だ。民間機関の調査では、入所者の4割が認知症というデータもある。

 国交省は6月をめどに各サ高住の夜間の職員数などを明示する情報公表を始める。職員が手薄なサ高住に、手厚い介護が必要な人が入るなどのミスマッチを防ぐのが目的だ。17年度以降に登録されるサ高住には、補助金の支給要件として情報公表を義務づける。同省担当者は「利用者が選択できる環境が必要だ」と話す。厚労省の担当者は「事故ゼロは現実的ではなく、どこまで防げるのかを事業者はきちんと説明するべきだ」と話す。(山田史比古、宋光祐)

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 〈サービス付き高齢者向け住宅〉 2011年10月に高齢者住まい法の改正で創設された。60歳以上か、要介護認定を受けた60歳未満が主な入居対象。入居者は自分でサ高住を選び、安否確認と生活相談以外のサービスが必要ならば別途、介護事業者などと契約する必要がある。バリアフリーや個室25平方メートル以上などハード面での登録要件もある。株式会社も参入可能で、新築や改修には国の補助金があり、17年度予算では320億円規模。4月末時点の登録数は全国で21万7775戸。