2017年5月7日05時00分
先生たちのハードワークぶりが、文部科学省の10年ぶりの調査で改めて裏づけられた。
小中学校の教諭は平均で1日11時間以上働き、過労死ラインとされる「残業が月80時間」を超える例が、中学で6割近く、小学校でも3割に及ぶ。
財務省は昨秋、「少子化で児童生徒が減るので、教職員も今の69万人から10年間で4万数千人減らせる」との案を示している。だが現状の働き方を前提に単純計算で済ませていい話ではない。ことは命と健康にかかわる。激務がデータで示された以上、根本から見直すべきだ。
10年前と比べて目立つのは、授業とその準備にかける時間が長くなったことだ。
前回調査の後、ゆとり教育からの脱却を旗印に、小学校も中学も授業のコマ数を増やした。クラスを二つに分けるような少人数指導も広がった。
ところが教師の人数は近年、横ばいか減少傾向にある。やむなく残業して穴を埋める。そんな構図がこの調査から浮かぶ。
小学校では20年度から全面実施される新指導要領で3~6年生の英語が週1コマずつ増え、現場の負担はさらに重くなる。ただちに大幅な増員は無理としても、地域の実情に応じた効果的な補強策はあるはずだ。
たとえば、理科や音楽、小学校の英語といった専科の先生を増やし、複数校で兼任させる案などを検討してはどうか。
授業以外の仕事を引き受け、教師を側面から支える層を厚くする方法もある。生徒の心の相談にのるスクールカウンセラーや部活動の外部指導員、退職した元教員や学生らが放課後の補習指導をおこなう「学習サポーター」などだ。
先生の側も自分らの仕事の合理化に努めることが必要だ。今回の調査によると、中学では部活動に土日で計4時間強が充てられている。国の有識者会議が20年前に「週2日の休養日を」と提言したのに改まらない。生徒の健康のためにも、休養日の義務化を進めるべきだ。
教員の過重労働は教員だけの問題ではない。先生が忙しすぎると、子どもたちに向きあう時間にも質にも影響が及ぶ。児童生徒も被害者なのだ。
学校の役割が肥大していることにも目を向けるべきだろう。
情報教育、消費者教育といった「新しい学び」を求める声が相次ぎ、地域の防災拠点としての役割も期待される。どこまでを学校に求め、どこからは地域や民間が引き受けるのか。それぞれのまちの教育委員会や議会で議論を深めてほしい。
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