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 導管を通して供給される都市ガスの小売りが全面自由化され、一般家庭も購入先を選べるようになって1カ月がたった。

 だが、契約先を切り替える動きは鈍い。ガスの小売りに乗り出す企業が少ないためだ。自由化の恩恵を多くの消費者に広げるには、新規参入のハードルを下げ、事業者同士の競争を促す環境整備が欠かせない。

 小売り自由化は、地域ごとに1社の独占を認めてきた規制を取り払い、競争を通じて料金の引き下げや新サービスの提供につなげるのが狙いだ。業種や地域の垣根を越えて、エネルギーの供給を効率化する効果も期待されている。

 都市ガス事業の自由化は20年ほど前に始まり、対象が大口から小口の利用者へと広げられてきた。今年4月に家庭・商店向けが加わり、1年前の電力に続き自由化がひとまず完了した。

 ただ、今回自由化された約2500万件のうち、契約先の切り替えを申し込んだ利用者はまだ1%に満たない。家庭向けへの参入は10社余りで、電力の約200社に遠く及ばない。近畿地方で関西電力が大阪ガスに激しい競争を仕掛けているのを除くと静かな滑り出しだ。

 参入が少ないのは、都市ガス事業には調達や販売の面で大きな制約があるからだ。

 原料の液化天然ガスの輸入には大がかりな施設が必要で、すぐに小売りを手がけられるのは自前の施設を持つ電力・ガス大手やその提携先などに限られる。都市ガスの導管網は大都市圏の間でつながっていない所が多く、広域の流通が難しい。

 こうした制約を小さくするには、電力にならって都市ガスの卸市場をつくり、多くの事業者がガスを調達できるようにする▽大都市圏間を結ぶ導管を整える、といった対策が必要になる。制度の設計や整備コストをだれが担うかなど課題があるが、政府と関係業界は具体化の検討を進めるべきだ。

 各事業者の経営努力も問われる。すでに電力やガス大手が、電気・ガス料金のセット割引や家事代行などの新サービスに乗り出しているが、さらに知恵を絞ってほしい。

 電力・ガスの自由化で先行した欧州では、業界再編が進んだ。巨大な総合エネルギー企業が生まれる一方、地域密着型の事業者も省エネなどきめ細かいサービスで競い合っている。

 日本でも競争の環境を整えれば、効率化や多様化の動きが広がる可能性はある。エネルギー資源に乏しい国だけに、自由化をそのきっかけにしたい。

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