石原孝
2017年5月6日13時19分
結婚式会場に飾る写真を撮ってもらおうと、挙式前に日本を訪れるアジアのカップルが増えている。東京や北海道、関西の観光地や人気映画の舞台でドレスや和装姿で撮影する人も。高まりつつある「前撮り」需要に、自治体なども受け入れ態勢を整えている。(石原孝)
「もっと顔を近づけて。そうそう、グレート」。4月中旬、東京スカイツリーが見える隅田川のほとりで、カップルがほほえみ合った瞬間、シャッターが切られた。ドレス姿の花嫁を見た通行人は、「きれい」と歓声をあげた。
マカオの大学研究員、葛家傑さん(29)は12月の結婚式を前に、妻となる黄詩敏さん(27)と来日。「大好きな日本で撮りたかった」と笑う。訪日はすでに10回以上。撮影は、マレーシア出身で日本在住の写真家アン・ユウコンさん(33)に依頼した。
次に2人が訪れたのは東京都新宿区の須賀神社。昨年大ヒットした映画「君の名は。」の舞台だと、ファンの間で話題の「聖地巡礼」場所だ。私服に着替えた2人は、映画の主人公になりきってポーズを決めた。最後に渋谷駅近くに移り、約7時間に及ぶ撮影を終えた。
中国や台湾、シンガポールなどでは経済発展に伴って、ギリシャやフランスなどの海外で「前撮り」するカップルが増えている。
数年前までベトナムやシンガポールで働いていた藤井悠夏さん(33)は「日本は式場やドレス選びに時間とお金をかけるが、アジアは写真重視。挙式の時に飾り、招待客に見せるのが文化になっている」と話す。
日本での前撮りも人気が出ると考え、主にアジアの訪日カップル向けに2015年、カメラマンの予約サイト「Famarry(ファマリー)」を開設。料金は3万円台から衣装やメイク代込みで50万円のものも。海外から月に20件程度の問い合わせがあるという。
前撮りなどで来県したカップルの統計を取っている沖縄県では、昨年は2年前の2倍の409組に増加した。県の担当者は「香港や台湾からが多い」と話す。
東京や京都などにスタジオを持つラヴィ・ファクトリー(本社・神戸市)は13年から前撮り事業を本格化。香港や上海に事務所を設け、依頼は年間数百件に増えた。海外事業部長を務める宮沢省悟さん(31)は「お客様の多くは日本人だが、人口減で結婚する人も減っていく。世界に目を向ける必要がある」と話す。
観光庁や日本政府観光局によると、訪日外国人客は昨年、過去最多の約2404万人に。約6割が2回目以上の訪日だという。一方、1人あたりの買い物代や宿泊費などの旅行支出額は約15万6千円で、前年比11・5%減だった。
同観光局の担当者は「貴金属や家電購入などの『爆買い』が落ち着いてきた。リピーター客が増えており、『前撮り』も含めて訪日目的は多様化していくだろう」と話す。
外国人客が多く訪れる自治体や…
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朝日新聞国際報道部