概要
所長あいさつ
京都大学iPS細胞研究所 所長
山中 伸弥
臨床研究が始まろうとしている状況を考えると、iPS細胞研究に対する社会の問題意識を把握し、人々が抱く様々な疑問に応えることが必要であると考えています。上廣倫理研究部門の設置により、iPS細胞に関する倫理課題研究に積極的に取り組み、社会からの信頼のもとに研究を行うべく、課題への対処方法等の国内外へ向けた提言や教育・啓発活動を行いたいと思います。
プロジェクト概要
iPS細胞は、2006年にマウスで、2007年にヒトで樹立が成功して以来、ES細胞の大きな課題とされた倫理的問題を克服する多能性幹細胞として期待されています。iPS細胞誕生の地ともいうべき我が国では、iPS細胞を用いた世界初の臨床研究を端緒に、臨床応用に向けた研究活動がいよいよ本格化する節目の時期を迎えています。iPS細胞研究を迅速に進め、成功させるうえで重要な要素として、社会からの信頼は不可欠です。このためには、研究の目的や方法が科学的・倫理的に妥当であることを確認したり、社会のニーズや意識の所在を正確に把握し、適切な対処策を検討・準備、提案したり、法令や指針に則った正当な手続きのもとで研究活動を行っていくことが求められます。
京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門は、こうした要請に応えるべく、公益財団法人上廣倫理財団のご寄附を得て2013年4月1日に開設されました。本部門の研究者は、アンケートやインタビューなどの調査・分析を通じて社会意識を把握し、研究者や一般の方々に対処策を提案します。また、新しい科学技術の医療応用について問題意識を高めるために、研究者や青少年・一般の方々を対象とする教育活動にも取り組みます。さらにiPS細胞を用いた臨床研究などで求められる倫理審査等の手続きを含む法令や指針の遵守に向けた活動へも参画しています。iPS細胞を取り巻く医療の倫理的・法的・社会的課題の解決に向けた積極的な取り組みを通じ、iPS細胞研究に関する倫理研究の拠点としての役割を果たすことを理念としています。
組織
上廣倫理研究部門はCiRA内に設置された5つの研究部門の一つです。
- 未来生命科学開拓部門・・・細胞が初期化される仕組みを遺伝子レベルで解明
- 増殖分化機構研究部門・・・iPS細胞から目的の細胞へ分化させる方法を確立
- 臨床応用研究部門・・・疾患iPS細胞の作製、病因・メカニズムの解明
- 基盤技術研究部門・・・臨床応用の研究規制、細胞調製の運営・管理
- 上廣倫理研究部門・・・iPS細胞研究に関する倫理研究の拠点
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