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社説

日銀審議委員 反対票が消える危うさ

 政府は七月に任期を終える日銀審議委員二人の後任を決め、国会に提示した。これで政策決定に携わる同委員六人すべてが安倍政権下の任命となる。リフレ派ら「賛成派」ばかりなら危うくないか。

 安倍政権誕生に伴い、日銀総裁は白川方明(まさあき)氏が辞任、黒田東彦(はるひこ)氏が就任して四年余り。新旧の総裁をもじりオセロゲームにたとえるなら、白から黒へすべての石がひっくり返ったことになる。今回は特に象徴的な意味合いがある。

 それというのも、退任する木内登英氏(野村証券金融経済研究所チーフエコノミスト)と佐藤健裕氏(モルガン・スタンレーMUFG証券チーフエコノミスト)は政策決定会合で総裁案に異を唱えることが多かったからだ。

 二人は、二〇一三年四月の異次元緩和の導入には賛成したが、その後は(1)追加緩和(一四年十月)(2)マイナス金利導入(一六年一月)(3)追加緩和(同年七月)(4)長短金利操作の導入(同年九月)−にことごとく反対。決定会合は多数決制のため、二人が厄介な存在だったのは確かだろう。

 だが「二年で2%の物価上昇」という目標は四年たっても達成できていない。巨額の国債を購入する緩和策を長期間続けているが、景気回復で金利が上がっていけば財政赤字が急拡大するなどリスクは高まる。こうした現状や副作用を考えれば、反対票を投じた二人が間違いだとは到底いえまい。

 決定会合が異論も出ず、総裁案の追認機関となるなら危険だ。

 さらに大きな問題がある。後任の片岡剛士氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済政策部上席主任研究員)と鈴木人司氏(三菱東京UFJ銀行取締役)について、鈴木氏はともかく片岡氏は金融緩和に積極的な「リフレ派」の論者で知られている。

 だがリフレ派が主張した「デフレは貨幣現象であり、(量的緩和で)貨幣供給量を増やせば物価は上がる」との言説はどうだったか。異次元緩和の理論的支柱だった浜田宏一内閣官房参与(エール大学名誉教授)は昨秋、自らの理論が正しくなかったことを認め、「転向」まで口にした。

 リフレ政策の行き詰まりが明らかな中で片岡氏の人選は疑問だ。日銀は昨年九月の総括検証でマネーの量から金利重視に移るといいながらリフレ派にも配慮して量も続けている。そんなぶれた政策では、ますます信頼が失われることを日銀・政府は肝に銘ずべきだ。

 

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