朝鮮半島周辺の軍事的緊張が高まる中、ロシアの出方が注目を集めている。いまのところプーチン大統領は踏み込んだ発言を控えているが、本心はどこにあるのか。
朝鮮半島情勢について、ロシアの公式的な立場は「外交的努力によって平和的な解決を望む」というものだ。具体的には、2008年から中断状態になっているロシアを含む6ヵ国協議の再開を訴えている。
プーチン大統領は4月27日、安倍晋三首相との首脳会談後の記者会見でも「修辞に陥ることなく落ち着いて対話を続けていくべきだ。6ヵ国協議の再開が必要だ」と述べた。この立場は中国も同様である。
これに対して、安倍首相は「現時点で6ヵ国協議を再開できる状況ではない」と協議再開に否定的だ。北朝鮮の核と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発が最終段階にある現状で6ヵ国協議を開いても、北朝鮮に時間を与える結果になるだけだからだ。
米国のトランプ大統領は中国に対して北朝鮮への原油供給停止を求め、応じない場合は北朝鮮と取引のある中国企業や金融機関に対して制裁する構えだ。まずは中国に圧力をかけて対応を見極める作戦である。
北朝鮮とすれば、中国が本当に原油供給を止めれば、戦争どころか経済活動が窒息してしまいかねない。
そんな中、注目すべき動きがあった。北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央通信が北朝鮮とロシアの接触を報じたのだ。
北朝鮮外務省の米国担当次官が4月30日、平壌で駐朝ロシア大使と会談した。NHKによれば、外務次官が「米国の脅威から国を守るために核抑止力を強化する」と述べたのに対して、ロシア側は「理解を示した」という(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170501/k10010967901000.html)。
それ以上の詳しい内容はあきらかになっていない。だが、これは中国が原油供給の停止あるいは削減に踏み切った場合に備えて、北朝鮮がロシアの支援を打診したとみるのが順当だろう。
つまり、北朝鮮側は「いざとなったらロシアが原油を供給してくれないか」という思惑でロシア側と会談した可能性が強い。
北朝鮮にとって原油は命綱だ。中国に止められた場合、他から入手できなかったら戦争どころか金正恩体制自体が危うくなる。それは世界が知っている。もちろんロシアも、だ。ロシアから見れば、北朝鮮からの接触はロシアの存在感を高めるうえで都合がいい。
なぜなら、中国が原油供給を停止すれば、ロシアが北朝鮮の命運を左右する立場になるからだ。つまりロシアが主導権を握る。そんな展開を視野に入れているからこそ、プーチン大統領はいま、じっと静観しているのではないか。