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総合エネルギー調査会 原子力部会(第66回) 議事録

日 時:平成11年8月24日(火)14:00〜16:00
場 所:通商産業省 本館17階 国際会議室

出席者

〈原子力部会部会長〉
近藤 駿介
〈委員〉
石槫 顕吉
今井 隆吉    外門 一直
内田 茂男    福川 伸次
長見萬理野    原  早苗
川村  隆    前田  肇
木元 教子    松浦祥次郎
河野 光雄    松田  泰
佐々木 弘    真野  温
鈴木 篤之    森  一久
住田 裕子    和気 洋子
竹内 哲夫
寺田 二郎
都甲 泰正
敬称略
近藤部会長(東京大学 教授)
ただいまより第66回の総合エネルギー調査会原子力部会を開催させていただきます。
本日は各位におかれましては、大変お暑い中、またご多忙中のところご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の議題でございますが、お手元「資料1」に議題としては「(1)エネルギーを巡る現状とエネルギー対策について」、「(2)その他」となっておりますが、その本題に入ります前に、前回7月28日の部会におきまして審議をいただきました「今後の原子力政策に関する論点整理について」という紙がございましたが、これについて前回いろいろご議論いただきましたところ、若干の修正をしたものについて鈴木原子力産業課長からご説明をお願いいたします。
鈴木原子力産業課長
それでは、恐縮でございますが、「資料3:今後の原子力政策に関する論点整理」をお手元にお出しいただけますでしょうか。
まず冒頭お詫び申し上げなければいけない点がございます。実は、前回の原子力部会から今日に至るまで、高レベル放射性廃棄物の制度の更なる具体化で大変かまけておりまして、原子力政策に関する論点整理につきまして、前回ご意見をいただいた点について、まだ十分反映ができてないところが多々ございます。例について申し上げますと、「原子力というエネルギーについて、リスクの分析を行おうではないか」というご意見をいただいたところでございます。また、「これまでの原子力発電についてしっかりした評価を行うべきである」というご意見、「時間のスパンを考えるべきである」というご意見をいただいたところでございますけれども、まだこの論点整理の紙に反映できてないことは誠に申し訳ございません。お詫び申し上げます。ほぼ8月31日まで来年度に向けまして税制要求等々を今出す最後の作業を行っておりまして、今しばらくこちらの点についてお時間をいただきたいと思いますので、ご容赦いただければ幸いでございます。
それでは「資料3」につきましてご説明させていただきます。
本日8月24日でございますけれども、今、9月、10月、11月と委員の方々のお時間をいただいているところでございます。9月は21日、10月は19日、11月は24日の午後2時から午後4時までの2時間お願いしているところでございます。その後でございますけれども、来年1月、2月、3月、またお願いしたいと思っております。今年の12月につきましては、審議の具合いかんで予備日とさせていただければ、というふうに考えております。
今回お配りしております「資料3」でございますけれども、これは議論のまとまりごとにまとめたものでございます。
「1.エネルギー政策における原子力の位置付け」といたしまして、本日、企画調査課長のほうから説明をさせていただきますけれども、ご議論をいただければと考えております。
「(3)バックエンド対策を含む原子力発電全体の経済性」でございますが、この点につきましては、2ページの「4.核燃料サイクル政策」の「(1)バックエンド対策の確立」等とございます。現在、原子力の経済性を計算するに当たりましては、これまで算入されておりませんでしたバックエンド・コストを算入する、という点が非常に大事な点でございまして、「1.」の(3)と2ページの「4.」につきましては、11月24日の部会におきましてご審議を賜れば、というふうに考えているところでございます。
それでは次回9月21日でございますけれども、事務局に案といたしましては、安全性ということにつきまして、「これがまず第一にくるべきである」というご意見を前回の部会におきましていただいたところでございまして、9月21日につきましては「3.今後の安全確保体制」と、時間の配分等もございますけれども、「6.」の(1)の「原子力を巡る国際動向」等につきましてご議論等をいただければ、というふうに考えております。
来月でございますけれども、今のところ、「原子力を巡る国際動向」で私ども考えさせていただいておりますのは、特にドイツにおきましてどのような原子力を巡る議論があったのか、また地球環境問題等の観点からどういうような議論があったのか、等々につきまして、ドイツの新聞社でございますけれども、ハンデルシュプラットという新聞がございます。そこの記者の方ですけれども、シューマン博士という方がいらっしゃいます。この方は、長くケルンの経済研究所にお勤めでございまして、ずっと長い間、ドイツのエネルギー政策、様々の環境問題について様々の論文等を発表された方でございまして、その方に直接お越しいただきまして、ご説明いただいた上で委員の方々と意見交換をしていただけば、というふうに考えております。それと合わせまして、時間の許す限り、先ほどの「3.今後の安全確保体制」についてご審議をいただればと考えております。
その次の10月19日でございますけれども、「5.原子力分野の技術開発」、このような点につきましてご審議を賜る、というふうに考えております。
11月24日につきましては、先ほど申し上げましたように、核燃料サイクル政策、また原子力発電のコスト、経済性につきまして、私ども試案をご提出させていただきまして、ご議論を賜ればと思っております。
その後でございますけれども、12月はもしこの3回分の積み残しがあればご審議を賜るということで、来年の1月からでございますが、非常に重要な国民社会の理解、それから引き続きまして「6.」の(2)の原子力産業の現状と課題等々につきまして、1月、2月でご審議を賜れば、というふうに考えております。
どうしてこのような順番を想定したかと申しますと、まずは原子力とほかのエネルギーとの比較といいますか、全体のエネルギー政策の中でどのように原子力を位置付けるのか、非常に重要だと考えておりまして、これを一番先にもってこさせていただきました。その次に安全性というのが大事であるということで、安全確保体制について次回と考えております。その後の順番でございますけれども、大体このくらいにこういう準備ができるかなということで、誠に申し訳ないんですが、事務局の都合でこのような順番をこの後考えているところでございます。
以上、簡単でございますが。
近藤部会長
ありがとうございました。
今後の予定について他、何かご質問がございましょうか。
それでは続きまして、先ほどご紹介ありましたけれども、本日のメインな議題でありますエネルギー政策における原子力の位置付けに関連して、宮本企画調査課長からご説明をお願いします。
宮本企画調査課長
お手元の「資料4 エネルギーを巡る現状及び今後のエネルギー対策について」をお出しいただきたいと思います。先ほどご紹介いただきましたが、「エネルギー政策における原子力の位置付け」に関連いたしまして、いささかお時間をいただきまして、ご説明申し上げたいと思います。
「目次」に入ります前に一言、釈迦に説法でございますが、私どもが「エネルギー政策の基本は何か」と問われたときに、いつもお答えする言葉を最初に申し上げたいと思います。
私どもは「エネルギーの基本は3つのEにある」というお答えをいつも申し上げているわけでございます。3つのEというのは、1つが安定供給(Energy Security)、2つ目が地球環境保全(Environmental Protection)、3つ目が経済成長(Economic Growth)ということで、いずれも英語に直しますと、頭文字がEで始まるものですから、「エネルギー政策の基本は3つのEにある」ということを申し上げているわけでございます。
今回こういう時点でこういうお話を申し上げるときも常にこの3つのEとの関係でご説明するほうがよろしいかと思いますが、本日は「目次」に書いてありますとおり、今申し上げた3つのEのうち特に最初の2つ、Energy Security、それから Environmental Pro−tection に関して、足元どういう状況になっているか、という点からご説明申し上げたいと思います。
まず3つのEの最初のEでございますが、Energy Security を取り巻く最近の足元の現状をひとつおさらいをさせていただきたいと思います。
下に数字をいろいろ細かく書いてございますが、我が国のエネルギー消費量及び伸び率の推移を最終エネルギー消費ベースで、かつ中身を3つの部門に分けてみた数字であります。3桁の数字で書いてございますのが、単位年当たりの原油換算の消費エネルギー量でございます。その3桁の数字の間に書いてある小数点のついた数字が、年率の伸び率であります。
まず一番上の段でございますが、最終エネルギー消費の伸び率のところを左から右にごらんになっていただきますと、1973年、1次石油ショックのとき、それからその次の79年の2次ショックのとき、この間は年率0.9%で消費は伸びておりました。というよりも、それまでのかなり高い伸びから急激に落ち込んだのがこの時期であります。
それから79年から86年にかけて第2次石油ショックの学習効果がまだ新しい頃、実はこの当時、GDPはマイナスにはなってないんですが、エネルギー消費はマイナスになっております。
その次の86年は、私どもがご説明するとき、「一つのエネルギー消費の転換点になっている」とご紹介するんですが、86年度以降、残念ながらエネルギー消費は単調増加をずっと続けております。もちろん、86年以降の前半のほうは、いわゆるバブル景気ということで、ある程度経済が大きくなる中で必然的にエネルギー消費が多くなった、という感じもございますが、私ども大変残念に感じておりますのは、ごく最近の経済の低迷期においてもなおエネルギー消費が単調増加のままである、ということであります。
例えば、一番最後の0.7という数字は、1997年度の年率エネルギー消費の伸び率でございますが、この時点でGDPは▲0.4でございました。
私どもは、エネルギー消費と経済の拡大との比率を見るときに、エネルギー消費のGDP弾性値という数字をよく使います。これが1を超えれば「ちょっとエネルギーを使い過ぎだね」、1より減ったら「いいね」という議論をやっているわけですが、大変残念ながら97年度においては符号が逆転しましたので、弾性値が計算できない、というはめに陥っております。これが今後、GDPが多少元へ戻ったときに、このままの弾性値といいますか、このままのエネルギー消費構造のままいくと、さらに大幅に伸びが増えるのではないか、という危惧を一部もっているわけでございます。
これがこの数字の読み方の第1のメッセージでございます。
もう1つメッセージを申し上げますと、部門別に見ますと、産業部門、民生部門、運輸部門とございますが、ごく足元の数字で申し上げますと、全体の半分は産業部門、残り4分の1ずつを民生と運輸で分けているわけでございますが、産業部門の3桁の、すなわち実消費量の数字を左から右に見ていただきますと、1973年から97年まで産業部門で使った総エネルギー消費力はほとんど増えておりません。一方で民生と運輸部門がどんどん増えているわけでございます。したがって、73年時点で産業部門の全エネルギー消費に占めるウェイトは大体3分の2で、6割から7割であったんですが、現時点では産業部門のウェイトは5割にまで下がっております。残りの民生、運輸がどんどん増えている、そういう姿でございます。
この点を少しビジュアルに見ていただくために、もう1枚めくっていただきたいと思います。2ページの上のところに、今のいわゆるエネルギー消費の劣等生であります運輸部門と民生部門をさらに2つに分けた、全体で5分類に分けた73年以降の消費の折れ線グラフがあります。
今申し上げたと同じでございますが、産業部門はほとんど横ばいであるのに比べまして、一番劣等生は上の運輸・旅客部門であります。これはほとんど自家用自動車の部門であります。もちろん、個別の車1台1台の燃費は格段に良くなっているわけでございますが、社会経済全体で見ると、増えている。例えば、1000ccで乗っていた方が2000ccの車に乗る、4人で相乗りしていた方が1人で乗る、あるいは電車に乗っていた方が車に乗る、こういうことの積み重ねがこういう数字になっているわけでございます。
以上申し上げたのは使う側から見たエネルギー・セキュリティ、つまり、エネルギーにあまり依存しないようにしようと思う、そういう観点からのセキュリティでございますが、供給側からのセキュリティ、ちゃんと十分エネルギーを供給できるかどうか、こういう観点からのお話をひとつ申し上げたいと思います。
2ページの下のところに、73年度以降の供給構造を構成比で見たものがございます。まず石油のところをごらんになっていただきたいんですが、73年度、1次危機のときに全エネルギーの中の77.4%を石油が占めておりました。石油ショックの学習効果はいろいろありましょうが、1つの学習効果は「石油に過度に依存すべきではない。石油依存度を下げるべきだ」という議論がありました。その結果、97年度には53.6%まで下がっております。この結果、石油に過度に依存しないという意味では、従来よりはセキュリティは上がっている、ということが言えるかと思います。石油が2割強減った分、これを賄ったのは上から3番目の天然ガス、それから4番目の原子力であります。それぞれウェイト的に1割強増えているわけでございまして、これで大体帳尻が合っているということでございます。
ただ、子細に見ますと、石油依存度が下がったきたのは事実でございますが、85年度の時点ですでに50%の半ばまで下がっておりまして、それ以降の12年間、ほとんど50%半ばで横ばいになっております。これは諸外国と比べますと、諸外国のほとんどが4割を切っているところから見ますと、まだまだ高いところに下げ止まっている、というのが実態であるわけでございます。
もう1枚めくっていただきまして、3ページの上を見ていただきたいんですが、石油危機の学習効果の中でもう1つ、「仮に石油に依存するにしても、中東に過度に依存するのはやめようじゃないか」という議論があったかと思います。中東依存度の推移を見たのが上の折れ線グラフであります。1次ショックのときの78.1、2次ショックの76.3、その後ずっと下がってきまして、65%をちょっと超えるあたりまで下がってきたんですが、最近は逆に82.4まで上がっております。中東依存度だけを見れば、実は1次・2次石油ショックのときよりも今のほうがセキュリティは低い、ということが言えます。
以上が需要と供給両面から見たセキュリティの足元の姿でございます。
4ページに入りまして、2番目のE(Environmental Protection)、環境保全の足元の姿を、これもすでにご承知の方が多いかと思いますが、簡単におさらいをしたいと思います。
一昨年の12月、京都で開かれました気候変動枠組み条約第3回締約国会議、いわゆるCOP3の場で日本を含む先進国は、2010年に向けての温室効果ガスの削減目標を国際公約いたしました。下の表に書いてございますが、日本は下から3つ目の項目、▲6%というところに位置しているわけでございます。
この▲6%というのは、CO2を含む6つの、いわゆる地球を温める効果、温室効果をもっているガスを一定の基準でトータルしまして、その合計で6%減らす、ということでございますが、実は6つのガスといっても、その大半はCO2でございます。5ページの上をごらんになっていただきたいんですが、6つの温室効果ガスのうち9割はCO2の効果であります。
そういうことを念頭に置きながら、実は日本はこの国際公約の6%をどういう内訳で達成しようかという、いわば政府内での想定をつくった表がございまして、これが5ページの下の表でございます。左側の▲あるいは+の内訳を全部足しますと、先ほど申し上げたトータルで▲6%になるわけでございますが、そのうち一番中心になりますのが一番上の▲2.5%のところで、6つのガスのうちの最初から議論に上った3つのガス、CO2、メタン、亜酸化窒素、このトータルを合わせて1990年から2010年に向けて2.5%減らそう、ということでございます。
さらにその内訳を右の横長の箱の中に書いてございますが、この▲2.5を達成するための内訳として、0%という数字があります。これはエネルギー起源のCO2排出抑制ということであります。上の円グラフにCO2 89.1%と書いてありますが、このさらに9割がエネルギー起源のCO2であります。それ以外の1割はエネルギー起源でない、いわゆる化学工程プロセスなどから発生するCO2でございます。
9割の9割でございますので、全体の8割。したがって、温室効果ガスを6%削減するといっても、その大半はこのエネルギー起源のCO2をどうするか、という議論なわけでございますが、私どもの今の想定では、これを0%、つまり、90年度から2010年にかけて伸びないようにする、ということを想定しているわけであります。
そこで、今、申し上げた2つのE、それから3つ目の経済成長、この3つのEをにらみながら、それぞれの姿を描いていく中で、昨年の6月、総合エネルギー調査会の場で「長期エネルギー需給見通し」というのをおつくりいただきました。この中身も一言だけ触れさせていただきますが、7ページをお開きいただきたいと思います。
今申し上げた3つのEの足元の姿、それから2010年に向けてのいろんな意味で制約要因を受けてつくった数字が7ページの上と下の表であります。上が需要面での見通し、下が供給面の見通しであります。
表の見方でございますが、上の表でいきますと、左側、90年度あるいは96年度と書いてあるのが実績ベースの数字であります。右半分に書いてある2010年度の数字がこの見通しでつくりました2010年に向けての我々の目標であります。
中が2つ分かれておりまして、1つが基準ケース、もう1つが対策ケースであります。基準ケースというのは、現在のエネルギー政策あるいは政府のスタンスをこのまま延長すれば到達するであろう姿であります。我々は自然体ケースとも呼んでおりますが、何もしない場合に到達するのではなくて、今のエネルギー政策をそのまま進めた場合のケースであります。他方、対策ケースというのは、今後さらに追加的に政策努力を行って達成すべきであると考える理想的なケースであります。
そういうことを前提に置いて数字を見ていただきたいと思いますが、合計の欄だけを追いかけていきますと、96年度の合計の欄に3.93という数字があります。これは3億9,300万klで、96年度日本全体で使ったエネルギーを石油換算した場合の数字であります。これを2010年に延ばした場合に、自然体ケースでいきますと、4億5,600万klまで伸びるわけでありますが、これを先ほどの3EあるいはCOP3との関係で抑えていく必要があるわけでございまして、がんばって抑えた結果、到達する対策ケースのところが4.00となっております。ちょうど4億klであります。いわば、このままの趨勢でいくと4億5,600万klになりかねないエネルギー消費をグッと抜本的に抑えて、抜本的な省エネを行って、対策ケースの4億klに減らす、ということであります。
この基準ベースと対策ケースの差分、4.56と4.00の差分、これは5,600万klですが、これがどの程度のマグニチュードか、ということを簡単にご説明申し上げます。
この5,600万klを基準ケースの4億5,600万klで割りますと、12%という数字が出てまいります。
先ほど私は石油ショック以降の歴史的なエネルギー消費の推移を申し上げましたが、歴史的に日本が一番省エネをやったのは、実は第2次石油ショック直後の3年間でございました。この3年間トータルでエネルギー消費は11%減らしました。
他方で、ここに書いてある数字の意味は、この見通しの中で2010年度、基準ケースと対策ケースの差分は12%あるわけであります。これは、いわゆる石油ショックのときに実際に行ったマグニチュードの省エネを超える省エネを、石油ショックを起こさずに平時で行うというほど、極めて難しいといえば難しい抜本的な省エネというのが、この4.56と4.00の差分に意味されているわけでございます。これが上の表のメッセージであります。
他方、こういった抑えに抑えてもなお4億kl使うであろう最終エネルギー消費を、一次エネルギーベースでどのようなエネルギー源で賄うか、というのが下の表であります。これも表の見方は先ほどと同じで、左側2つが実績、右2つが2010年、しかも基準ケースと対策ケースということであります。ここに込められているメッセージを2つ申し上げます。
まず石油の欄の構成比を左から右に見ていただきたいんですが、90年度の石油の構成比58.3%であったものが96年度には55.2になっております。これが基準ケースで51.6まで下がりますが、さらに押し下げて対策ケースは何とか47.2までもっていきたい。5割を切りたい。そういう意味で、石油依存度を下げて、先ほど申し上げた Energy Security を高めていきたい、という思いがここに込められております。
もう1つのメッセージは、2番目のE、地球環境問題との関係で出てくるわけですが、同じエネルギー量を供給するにしても、極力CO2を出さない、地球環境に優しいエネルギー源にシフトをしていきたい、という思いでありまして、具体的には、この表で言うところの石油から石炭あるいは天然ガスまでの化石燃料、つまり、燃やせば必ずCO2が出てくる燃料から原子力以下の燃料、すなわち発電過程においてCO2を全く出さないエネルギーにシフトをしていく、という流れであります。
数字を追いかけてみますと、石油が構成比がどんどん下がってくるのは申し上げました。石炭ももちろん下がってまいります。他方で、上がってくるのは、一番大きいのはやはり原子力であります。96年度の構成比で見ますと、原子力は12.3%ありますが、2010年度の対策ケースではこれを17.4%まで増やすことを想定しております。
構成比の左側に実際の発電量と発電容量を書いてございますが、96年度の4,250万kWという発電容量から対策ケースにおいては7,000〜6,600万kWという設備容量に増やす、ということでございます。この差分を平均的な原子力発電所の設備容量で割りますと、20〜16という数字が出てまいります。これから2010年に向けて原子力発電所の新増設が20〜16基必要だと申し上げているのは、この数字の意味であります。
もう1つ、非化石燃料、CO2を出さない燃料として期待しておりますのは、一番下の新エネルギー等であります。96年に1.1%であった構成比を2010年度の対策ケースでは3.1%、約3倍まで増やしたいと思っております。
もちろん、伸びとしては3倍なものですから、飛躍的な伸びではあるんですが、量的な程度の議論で申し上げますと、少なくとも2010年度の対策ケースの中においても、石油や石炭、そういったものの構成比を下げていった大半の見返りとして期待するには、量的には残念ながらまだまだ小さい。量的にはどうしても原子力に頼らざるを得ない、というのがこの数字の上での姿であります。
以上が昨年6月につくりました長期需給見通しの需要、供給両面のメッセージでございますが、ここでこの見通しについて一言で総括いたしますと、需要面でおいては抜本的な省エネ、5,600万Klの省エネ、供給面においては非化石燃料、取り分け原子力、そして新エネの導入の促進、ここに尽きるわけでございます。
したがって、最後にこの2点について若干詳しめに「参考資料」でご説明をしたいと思います。ページを打ってあるページが全体で12ページまでございますが、その後、(参考資料1)と(参考資料2)がございます。ここでちょっとご説明をさせていただきたいと思います。
まず「(参考資料1)省エネルギー対策について」ということであります。ここでは最初に申し上げた3つの部門ごとに、2010年に向けてどういうことをこれからやろうとしているのか、ということを簡単にご説明してございます。
まず第1ページは、「産業部門における省エネルギー対策」であります。先ほど申し上げたとおり、産業部門というのは非常な優等生でありまして、ここをこれ以上やることは、「乾いたタオルをさらに絞れと言うのか」という議論もいろいろ聞こえてくるわけでございますが、さらに一層努力してもらいたい、という思いがこの中に込められてございます。
その具体的な形の第1は、下半分に書いておりますが、経団連環境自主行動計画であります。これはCOP3に先立つこと約半年でありますが、97年の6月に経団連さんの自主的な行動計画として当時は36の業種ごとに2010年に向けた、いわば省エネあるいは環境保全のための業界ごとの努力目標をつくっていただいた。これが経団連環境自主行動計画であります。現時点では業種の数は41まで増えておりますが、本日は特にエネルギーをたくさん使うと言われております4業種について抜粋しております。
もちろん、自主行動計画でございますので、業種ごとにそれぞれ目標の設定の仕方、カウントの仕方は微妙に違います。例えば、鉄鋼であれば、90年から2010年に向けて生産工程でのエネルギー消費量10%減、化学であれば、エネルギー原単位を10%減、製紙であれば、製品当たり購入エネルギー原単位を10%削減、セメントは数字は出ておりませんで、最大限のエネルギー消費削減。どの業種もそれぞれいろんなご苦労がありましょうが、とにかくできる範囲内で極力2010年のCOP3の見通しに合うように業種ごとに自主目標を立てている、ということであります。
これは自主行動計画ではございますが、他方で私どもはいろんな場で、これが本当にそのとおり進んでいるのだろうか、という意味でのフォローアップを実は毎年させていただいているわけでございます。
上の罫線の中をごらんになっていただきたいんですが、義務的措置として「※上記計画及び追加措置を確実に実施するため、→審議会の場でのフォローアップ」。通産省所管の28業種について、4つの審議会の下に小委員会を設けまして、その合同会議の場で、各業種がそれぞれつくっていらっしゃる自主行動計画が、そのとおりレールの上を走っていらっしゃるかどうかのフォローアップを毎年させていただくことになっております。あるいはそれ以外に誘導的措置で幾つか書いてございますが、全部まとめますと、一番上にありますように、省エネルギー量で約2,100万klを2010年に向けて行う、ということであります。
1枚めくっていただきまして、民生部門の省エネは具体的に何を想定しているか、ということを申し上げます。
上の罫線の中で《義務的措置》というところがございます。家電機器等につきまして、「省エネ法上の省エネ基準をトップランナー方式の考え方の採用により強化」。というのがあります。
省エネ法を昨年の6月に改正いたしまして、今年の4月から新しい法律が施行されておりまして、内容はすでにご案内のとおりかと思いますが、簡単に申し上げますと、従来の省エネ法の枠組みの中では、エアコンですとか、車ですとか、そういう大量にエネルギーを消費する機種を幾つか選定いたしまして、その機種がそれぞれ守るべき省エネ基準というのを大臣が設定いたします。その省エネ基準を下回るようなことがある場合には、大臣からその当該メーカーに対して勧告をする、そういうものがあったわけですが、その際、設定される省エネ基準は、エアコンの省エネレベルのいいものから悪いものまでズラッと並びまして、大体平均的なレベルを省エネ基準として大臣が設定したわけでございます。
今回の法律改正で変えたのはこの省エネ基準の設定のレベルでありまして、平均的なレベルではなくて、現時点で生産可能な、あるいは商業化されているすべてのエアコンならエアコンの中のナンバー1の省エネレベルを設定いたしまして、一定の年限までにすべてのメーカーがすべての機器をそのレベルまで引き上げるようなことをしたい。これが今回の法律改正の第1点の内容でございます。
さらに、従来は省エネ基準に満たない場合も勧告をすることで終わっていたんですが、新しい法律では、勧告のみならず、勧告に従わない場合は名前を公表し、場合によっては命令を行い、言うことを聞かない場合には罰則をかける、という仕組みにしてございます。最近、規制に対しては規制緩和の動きが大変激しいわけでございますが、この分野においてはそういう意味で規制を非常に厳しくしている、というのが実態であります。
こういうトップランナー方式の考え方の採用によりまして、450万klの省エネを想定しております。
それから同じ罫線の中の《国民の努力》というところでちょっと一言ご紹介申し上げます。
今申し上げた家電機器等々はある意味でメーカーに対して規制をかけてしまえば、消費者のレベルではそれほど意識をしなくても自然に省エネが図れる、ということでありますが、どうしても国民に直接訴えかけなければいけないのは、例えば冷房温度を下げ過ぎないように、暖房温度を上げ過ぎないように、ということであります。それは確かに直接訴えてはいるんですが、これは産業に対する直接な規制と違いまして、なかなか効果を発しにくいというのもまた現実であるわけで、私どもは声を大にして言っておりますが、実効が上がっているかどうかは、残念ながら、はなはだ心もとない状況であります。
今、今日の議論とはちょっと外れますが、サマータイムという法案を通そう、という議論を別途やっているわけでございますが、実はサマータイムもこういう民生分野において直接エネルギー消費を節減しようということでやっているわけでございます。こういう民生部門は、先ほど申し上げたとおり、今、一番劣等生なわけでございますから、こういう部門、あるいは後ほど申し上げます運輸部門の省エネをどうやって図っていくかというのは、非常に重要ではありますが、なかなか難しいものがある、ということであります。
それから、もう1枚めくっていただきまして、3つ目は運輸部門でございます。
運輸部門も罫線の中を1つご紹介いたしますと、自動車であります。これも先ほどと同じく、省エネ法の改正によりまして、自動車をいろいろ重さごとに分けまして、そのランクごとにあるべき省エネ基準をナンバー1のレベルに設定しまして、今、トップランナー方式によって、今後の一定年度の間にすべての自動車をそのレベルまで上げる、ということをやっているわけでございます。そういったことを含めまして、省エネ量では1700万klをやろうとしているわけでございます。
以上3つのものを全部合わせますと、先ほど申し上げた抜本的な省エネ、つまり、平時において石油ショックを起こすようなマグニチュードの省エネ、5,600万klになるわけであります。
以上が省エネ対策であります。
最後に、(参考資料2)で新エネ対策について、これも簡単にご紹介をいたしたいと思います。
先ほど「供給面での現時点での需給見通しのメッセージが非化石燃料、取り分け原子力と新エネの導入促進にある」ということを申し上げました。原子力につきましてはこの部会で何度もご説明、ご議論がおありかと思いますので、今日は新エネのほうについてだけご紹介申し上げます。
最初の「1.」でございますが、新エネは大きく3つございます。
いわゆる再生可能エネルギー。無尽蔵にエネルギーがあるという意味では、どんどん再生が可能だという意味での再生可能エネルギー。具体的には、太陽光発電、風力発電、太陽熱利用、こういったものを再生可能エネルギーとしてくくっております。
それから若干種類が違うものにリサイクル型エネルギーというのがございます。廃棄物発電、廃棄物熱利用。いわゆるゴミ、廃棄物を今でも燃やして処理をしているわけですが、そのときに燃やすということで一応廃棄物の処理という目的は完結しているわけですが、その際、発生する熱を空気中に捨てるのはもったいないということで、その熱を直接利用したり、あるいはその熱を利用して発電を行ったりする。これがリサイクル型エネルギーであります。
これ以外に、エネルギー自体としては最終的に使う姿でのエネルギーの形は特別新しくはないんですが、使い方において従来とは違った形態があるというものに、クリーンエネルギー自動車、コージェネあるいは燃料電池というものがあるわけでございます。
「2.」に書いておりますように、こういった新エネは最初に申し上げた3Eのすべてにかなう非常に理想的なエネルギーである、と我々は理解しているわけであります。
ただ、現実に足元、エネルギー供給のかなりの部分を新エネにお願いするにはなかなか難しい、という側面もあるあるわけでございまして、次のページの「3.」でちょっとそのへんをご説明したいと思います。
まず新エネ導入の制約であります。
「1.潜在性の面における制約」と書いてございます。技術性といいますか、あるいは仕組みとか、本来的性格に由来する制約ということであります。新エネということでイメージに一番のぼりやすいのは太陽光発電かと思いますので、これを一番上に書いておりますが、確かに太陽光発電は今でもやっているところはございますが、ネックが2つございます。1つは、住宅の屋根等日当たりの良い遊休スペースの確保には限界があるわけであります。それから、もちろん雨の降っている日あるいは夜は使えないあるわけでございまして、出力が不安定なため、太陽が照ってないときの発電を賄うためのバックアップが別途必要なわけであります。
太陽光発電についてだけ「2.」のほうも申し上げますと、経済性の面について太陽光発電は、今の状態でいきますと、既存エネルギーと比較した場合に、電力料金ベースで約2.5〜6倍の経済性、つまり、経済性がなかなかない、という状況であります。
さらに、こういったことを前提として、それでも太陽光発電をやるという判断をやったときに、どの程度の物理的なスペースが必要なのか、というイメージをもっていただくために、一番下の《参考》を書いてみたんですが、ここにありますように、出力100万kWの原子力発電所に相当する発電量を太陽光発電で単純に賄うためには、山手線の内側の面積に相当する日当たりの良い空間が必要になってくる、という話であります。これを住宅に設置する場合であれば、220万軒の屋根と原子力発電1基とが電力容量的には等価である、ということであります。仮につくるとしても、そのくらい相当物理的な制約がある、ということであります。
もう一度上に戻っていただきまして、太陽熱利用以下を一言ずつ申し上げます。
太陽熱利用も太陽光と同じ制約があるわけでございまして、スペースの確保には限界があるということ、出力が不安定であるということではございますが、これは現実にはすでにかなり普及をしておりまして、「3.」に書いておりますように、全国で400万台以上が導入されております。逆にいうと、これ以上追加的に増えることがあまり期待できない、というものであります。
次は風力発電。これも最近、テレビ、新聞等々でかなりがんばっているという感じで宣伝されているわけですが、これも基本的には幾つかの制約があります。「1.」の(1)でありますが、風速が秒速6m以上でないといけない。そういう場所でないと、つくってペイしない、ということがあります。それから「2.」の出力が不安定という議論があります。風がなくなってきたときのバックアップをどうするか、という議論が太陽光と同じようにございます。
それから次の2つ、廃棄物発電、廃棄物熱利用は、先ほど申し上げたとおり、ゴミ、廃棄物を燃やすときに捨ててしまう熱を有効活用する、という話であります。そういう意味では、現在行っているゴミを焼却した時点で完結させているものに比べれば、追加的に出てくるCO2はありません。どうせ出ていくCO2だったものを、それに加えて、その捨てているエネルギーを利用するというものでありますので、エネルギーを取り出すことに際して追加的にCO2が出るわけではないわけです。ただし、逆にいいますと、ゴミの量というのは別の要因から決まってきますので、電気が必要だからといって、ゴミを急に2倍に増やすというわけにもいきません。というようなことがこの廃棄物発電と廃棄物熱利用の最後の行にありますが、潜在的な発電可能量あるいは潜在的な熱利用可能量におのずと限界がある、というところでございます。これを新エネあるいは全体のエネルギーの中の中核エネルギーとして位置付けるにはなかなか苦しいものがある、というところでございます。
それから、1つ飛びまして、一番最後の黒液・廃材のお話を一言申し上げます。
これは聞き慣れない言葉かと思いますが、パルプをつくるときの製造過程である種の廃棄物として出てくる黒い液体、あるいは捨ててしまう、もともとは木であった廃材がございます。これを有効活用して発電等をやろう、ということであります。
以上の新エネはそれぞれ制約があると申し上げたわけですが、足元どのくらい導入が進んでいるか、ということを次のページでご紹介申し上げます。
「(1)新エネルギー」の96年度の数字を上から下にずうっと眺めていただきたいんでございますが、一番下の「1次エネルギー総供給に占める割合」というところに685万klとあります。これが上の新エネルギー全部を足して、かつ石油に換算した総供給量であります。これを全供給量の中のウェイトで見ますと、1.1%ということであります。この1.1%の内訳を書いたのが上の表であります。
多い順に申し上げますと、一番多いのは最後にご説明した黒液・廃材であります。490万kl。新エネ、新エネと言っておりますが、足元を見る限り、実は新エネの8割弱は黒液・廃材で、パルプ工程から出てくるものを有効活用するということであります。ナンバー2は太陽熱利用でありまして、104万kl。ただ、これはかなりもうマチュアである、ということは申し上げたとおりであります。それから3番目は廃棄物発電。これも今燃やしているゴミを有効活用する、という話であります。
この3つだけで685万klのほとんどを占めます。逆にいいますと、残りの通常、新エネと言ったときに一番イメージにのぼりやすい太陽光ですとか、風力とかいうのは、実は規模、ボリュームの点で見る限りは、もともと全体の1%ちょっとしかない1次エネルギーの中の、さらにゼロ・コンマ2桁下くらいのウェイトくらいしかない、ということであります。
ただ、繰り返し申し上げますが、もちろん、これは地球環境保全との関係では今後何とか推進していかなくてはいけないと思っておりまして、2010年度に向けて約3倍に増やしたい、ということにしているわけで、先ほども申し上げたとおり、2010年度には3.1%のウェイトまで高めたいと思っているわけです。そのために、今は少ないですが、それぞれの内訳ごとに、例えば太陽光発電は今の90倍、風力発電も20倍、そういったレベルで相当の伸び率でネジを巻きたいと思っておりますが、それでも到達点は全体の3%というのが実態であります。ただ、もちろん将来的には期待しているわけでございまして、今の段階から政策的な支援を新エネには相当やっております。
2枚めくっていただきまして、「6.新エネルギー開発導入支援策」をごらんになっていただきたいんですが、法律あるいは財政措置等々で、まだまだ小さな芽を何とか長期的に大きくしようとするいろんな政策をやっております。
予算措置で1つだけご紹介いたしますと、トータルの金額でいきますと、11年度で875億円。7年度以降、この厳しい財政制約の中で相当増えている予算であります。こういった予算の中で1つだけご紹介いたしますと、「予算の体系」という表の中で、下半分「導入促進」の中の上半分「市場自立化」というところでございますが、その右側に例で「住宅用太陽光発電等導入支援」というのがございます。一般家庭で使う電力の約7割を賄えるための設備容量というのは3kWくらいの太陽光発電を付ければいいそうですが、これを付けるのに全体で必要な金額は約300万程度ですが、このうち約3分の1の100万円を補助金の形でお出しして、何とか経済的にペイしにくい太陽光発電の導入を促進し、大量生産して、コスト低下にもっていこうとする呼び水効果のための予算であります。
こういったことを新エネはやっているわけですが、具体的にある程度効果が上がったきたもの、あるいは国際的に遜色のない水準まで上がってきたものを2つご紹介申し上げます。
さらに1枚めくっていただきまして、「(1)太陽光発電電源設備(1997年、暫定値)」でありますが、太陽光発電の設備容量はアメリカが世界1位で、11.5万kW、日本は第2位で9.1万kWであります。かなり確実性のある数字として97年の暫定値をもってきておりますが、私どもが入手しております98年度末の推計値で見ますと、実はアメリカと日本が約13万kWということで、ほぼ並んでおります。おそらく現時点ではアメリカと並んで、場合によってはちょっと超えるくらいの世界最高水準というのが日本の太陽光発電の設備容量であります。
それから風力について下の横長の表を見ていただきたいと思います。94年度末には0.6万kWであったものが98年度末には4.3万kWまで増えております。年度内着工まで含めると、6万kWまできていると思われます。
先ほどの「長期エネルギー需給見通し」の中の新エネの見直し、その中の風力だけをとらえてみますと、実は2010年度において30万kWというのを想定しております。風力は最近、急に伸びているとはいえ、2010年の見通しに比べれば、まだまだ小さくはございますが、このままの伸び率でいえば、かなり期待ができる、そういう数字であります。
最後のページでございますが、今申し上げた新エネよりは若干定義が広うございますが、国際的に使われている定義で言うところの再生可能エネルギー。これは、日本で今までご説明申し上げました新エネルギーに加えて、やはり発電過程でCO2を発生しない水力、それから地熱を合わせた、いわば地球環境に優しいエネルギーから原子力を除いたものの総称、これを再生可能エネルギーと呼んでおります。このカバレッジで束ねてみますと、この表にありますとおり、実は日本は世界で一番高い水準にある、ということであります。96年の時点ではまだまだアメリカ、EUよりちょっと低いわけでございますが、このままいけば、2010年の時点では世界で一番。アメリカ、EUよりかなり高いレベルまで到達する、ということであります。
申し上げたかったことは、新エネルギーに対して「日本はまだまだ遅れているんじゃないか」という議論がたくさんあるわけでございますが、もちろん相当な経済的制約、技術的制約があって、なかなか進まないのは事実でございますが、相当な支援策等々を通じまして、国際的にはかなり遜色ない水準まできている、ということが1つ、ただし、くどく申し上げますが、そういうことをやってみても、例えば2010年程度の近い将来を見た場合に、セキュリティあるいは地球環境保全等々の関係から見るべきエネルギー・バランスの中で石油の依存度や化石燃料の依存度を下げていく中で、それを賄うような量的な期待は新エネだけに負わせることは非常に難しい、ということがあろうかと思います。
ちょっと冗長な説明で失礼いたしましたが、以上でございます。
近藤部会長
どうもありがとうございました。
それではご質問、ご意見がございましたら、よろしくお願いいたします。
今の一番最後の表で、カナダはEUに入っているんですね。
宮本企画調査課長
あ、失礼しました。
近藤部会長
それから、EUアベレージで4.8なり5.1であるところ、ここには非常に高い数字の国もあるけれども、もっぱらドイツとイギリスが足を引っ張っている、そういうふうに見ればいいわけですか。
宮本企画調査課長
そうでございますね。
松浦委員(日本原子力研究所 理事長)
今、最後に、新エネを導入するためにどんなふうに努力しているか、またどういうふうに投資をしているか、というご説明がありましたが、環境保全といいますか、CO2を排出するのを抑制するために投資によって効果があるかといえば、抑制の投資効果という点から見たときに、新エネといいますか、再生エネルギーあるいは原子力その他はどういうふうにやるんでしょうか。
宮本企画調査課長
ビジュアルにご説明したいと思いますが、6ページを開いていただきたいと思います。
先ほどくどくど申し上げました「長期エネルギー需給見通し」の数字を折れ線グラフで描いたのが5ページでありますが、上の折れ線グラフが最終エネルギー消費の姿で、96年で以降が2つに分かれておりますのは、見通しの中での上がいわゆる基準ケース、下が対策ケースであります。この上と下との幅、56と書いてあるのが、先ほど申し上げた抜本的な省エネ政策でございます。下のほうはCO2の排出量でありまして、これも96年の314から2つに分かれて、上が基準ケース、下が対策ケースです。
下の対策ケースが到達する287というところが、1990年のCO2排出量のレベルの287と一致しているのは、最初に申し上げたCOP3を受けたエネルギー政策の命題が90年から2010年に向けてエネルギー起源のCO2を0%にする、ということを言いましたけれども、それが実はこの287で横ばいになっているということの意味であります。
今おっしゃった、新エネのところがこの数字の中でどのくらいのウェイトを占めるか、ということをビジュアルに申し上げますが、上の折れ線グラフでエネルギー消費だけ申し上げますと、96年度以降ほとんど横ばいでございます。393から400と横ばい。先ほど申し上げた石油ショックを超えるような抜本的な省エネをやっても、実はエネルギー消費量は横ばいにしかすぎません。我々が目標としているのは、90年度の比較で横ばいでありますので、今申し上げた287なら287という90年から見て横ばいにするのが、大まかにいうと、必要になってくるわけです。
したがって、この絵の見方ですが、一番上の456からグッと押し下げて、96年度と横ばいにまで下ろすもの、これが大体省エネの効果であります。それをさらに押し下げて、90年のレベルと横ばいにするもの、これが残りの効果、すなわち、原子力と新エネを合わせた、つまり、エネルギー消費量は減らないかもしれないけれども、CO2を出さないようなシフトの効果です。その効果のかなりの部分は原子力ですが、新エネもかなりございます。半分より若干多いのが原子力、若干少ないのが新エネ、そういう位置付けかと思います。
投資効果につきましては、ちょっと担当課と相談して、お答えできれば、この時間内にお答えしますし、できなければ、後ほどお答え申し上げます。
都甲委員(核燃料サイクル開発機構 理事長)
経済的なメリットもあって非常に進んだと私は理解しております。それで、続きまして、(参考資料1)ですか、経団連が今、計画を立てておられます自主行動計画では、その点はどうなんでしょうか。つまり、省エネをやることで経済的なメリットはむしろマイナスになるとしますと、どこまで投資を。つまり、バランス点以上にどこまで投資を増やして省エネをやろうとしているのか、という目標設定が要ると思うんですけれども、そのへんの関係はどうなっています
でしょうか。
稲垣省エネルギー対策課長
おっしゃるとおり、第1次オイルショックあるいは第2次オイルショックのときに抜本的な省エネを行いまして、各業種、大所の省エネ対策はもう講じた、というのが実態でございます。ここで、各業種ごとに目標を立てていただいておりますが、それはおおむね各産業ごとに10%のエネルギー原単位の向上という目標を立てていただいております。大所の省エネ対策は終わってしまって、わりと細かい対策を個々に積み上げていただいている、あるいは省エネ投資をしても、今まではやれば1年くらいで回収できた対策がだんだん3年とか、5年とか長くなっている、そういうわりと痛みの伴う省エネをやっていただいている、というふうに認識しております。
真野委員(原子燃料工業株式会社 代表取締役会長)
先ほどの数字で第1次・第2次ショックのときの例を出されたんですが、あのときは価格効果がほとんどリードしたようなもので、1年や2年ではそう政策的な手段が役に立ったとは思えない。今度こういう省エネを11%か12%やるということになると、価格的な面でのあれがない限り、なかなか難しいだろうと思うんですよ。こういう数字を出されて、「これをやるんです」と言うんですが、果たして可能なのかどうか。あのときはほとんど価格効果で産業界、あるいは電気料金が上がるということで省エネという形が動いた。これがないときに果たして可能かどうか、という問題が1つ。
それからもう1つ、これは別の話ですが、最初のほうで我が国のエネルギー消費というのを出しておられますね。実は、我が国のエネルギー消費の中で非常に大きいのが、外交海運のバンカーオイルなんですよ。これが一番最初に世界的に詰まってくる。この前の石油ショックのときの実例で申し上げると、日本でバンカーオイルを供給しないと日本へ船を持ってこない、という事態があったので、我が国のエネルギー消費の中でそういった世界中から来る日本向けの物資、資源、食糧等の必要なタンカーのオイルというのは、実は外にあるんですね。これはおそらくこの統計では外、外で表面から入ってない。それから世界中ほかの国で供給してくれるやつが入ってない。これは一体どうなっているんでしょうか。これは実は日本の石油の一番大事なポイントなんですけれども、これはC重油ですから、C重油が日本で供給できないと、船が入ってこないという事態が起こる。現に起こりかけていたことがあるので、それに対する評価というのをどうするのか。平和時点だけのあれだけでいいのか。それも日本の石油需要として今後考えていかなきゃいけないことじゃないでしょうかね。これはいつも統計がないんですよ。外、外なもので、統計が入ってこない。これはおそらく発電用C重油と競合するだろうと思うんです。この点はどういうことになっているか、ということをちょっと指摘しておきたい。
宮本企画調査課長
第1の価格的な点がないと抜本的な省エネというのはやっぱり難しいのではないかというのは、全くおっしゃるとおりだと思います。ただ、そう言ってしまいますと、両手を挙げてしまうことになるんですが、確かに1次ショック、2次ショックのときにこれだけ落ち込んだのは、とにかく一番影響があったのは価格効果だったと思います。我々はそういう意味でいいますと、逆説的にいいますと、今、石油ショックが起きれば、あるいは石油価格がドンと上がれば、こういうふうな省エネが楽になる。でも、そういう危機を起こさないために我々はこういうことをやっているわけで、目的と手段が逆転するようになるわけです。我々としてはとにかく石油危機を起こさないで、混乱を起こさないで何とか石油を確保したい、という思いを数字でつくると、こういうことになろうかと思います。
おっしゃっている趣旨を多少私なりに延長線上で考えますと、そういう価格効果がないまま、やれやれとか音頭を取ってみても、ここまで絞っていると、さらに絞るのはなかなか難しいから、よく言われているいろんな経済的措置、例えば税金とか、そういうことを新しく考える必要があるんじゃないか、というご指摘かとも思いますが、私どもとしては、3つのEの3番目の Economic Growth もございましたので、その三者を同時達成するのが我々の見通しの目的だと思っておりますので、極力経済に影響がない姿でギリギリ努力をしてみたい。もちろん、これで2010年の数字が本当に達成可能かと言われれば、それは難しいことには変わりはないんですが、可能性がゼロになる前までとにかくギリギリ努力をしてみたい。もちろん、それでだめな場合にはまた新しくあり得ると思いますが、現時点ではまだ努力をしてみたい、という話でございます。
それから、もう1点蛇足で申し上げますと、価格効果が効くところはどこか、という議論で申し上げますと、石油ショックの中で一番エネルギー消費を減らしたのは産業部門でございます。だからこそ、いまだにあまり増えてないわけでございますが、残ったところ、つまり、劣等生をたたくという政策をもしやるとすると、民生、運輸なわけですが、これまでの歴史的な経緯で見ますと、石油ショックのときも実は悠々と伸びていたのが民生、運輸でありまして、もしこれからたたくのが民生、運輸だとすると、もちろん価格効果も重要ですが、価格効果がなかなか効きにくい分野を今からたたかなくてはいけない、という前提で政策を組む必要があるとは思っております。
それから第2点のバンカーオイルは、おっしゃるとおり統計の外にありまして、そういう意味では政策の外になるんですが、COP5の議論の場でも「これをどこの国のCO2とカウントすべきか」という議論も別途国際的にやっておりまして、いろんな意味で我々の視野の外になっているのは事実です。今後ちょっと勉強させていただきたいと思います。
稲垣省エネルギー対策課長
今の省エネのほうを補足させていただきます。
5,600万klの省エネでございますが、10ページで5,600万klをさらに詳細に積み上げてございまして、産業部門、民生部門、運輸部門それぞれ2,100万kl、1,740万kl、1,730万klの積み上げを行っております。これはおっしゃるとおり、価格効果というのが一番効くわけですけれども、事業者の方々に最大限の省エネ努力をしていただくということを前提にして、この5,600万klというのを積み上げてございます。
以上でございます。
有馬統括省エネルギー対策官
先ほど松浦理事長のほうからCO2削減の投資効果というご質問があったわけでございますが、一つのラフな数字でございますけれども、「新エネルギー対策について」という(参考資料2)の2ページの一番下に、出力100万kWの原子力発電所による発電量を太陽光発電で単純に賄った場合、太陽光発電に必要な投資コストとして7兆円が必要となります。100万kWの原子力発電所をつくるのに必要な投資コストは、約5,000億円というのですから、単純に比較いたしますと、1:14ということになります。
ただ、これは投資コストということでございまして、税金を使って政府の資金として幾ら投入して、効果が幾らか、そういう数字ではございません。もう少し詳細な試算ができるかどうか、私どものほうで検討しまして、後ほど事務局を通じてご回答申し上げたいと思います。
松田委員(財団法人原子力発電技術機構 理事長)
今のご説明で、いつも思うんですけれども、100万kWの原子力発電所による発電量、つまり、キロワット・アワーでしょう。キロワット・アワー対応で換算すると、220万軒の屋根の太陽光設備が要る。たぶんキロワットの比較でしょう。出力同士の比較じゃないですか。つまり、太陽光発電を考える場合に、設備規模というのか、投資量というのか、そういうのは出力同士で比較するんですけれども、最大の問題点は、太陽光発電の場合には出力に見合うキロワット・アワーが出ないということなんですよ。つまり、稼働率がものすごく落ちますから。
有馬統括省エネルギー対策官
今のご質問でございますけれども、もう1つラフな試算がございます。原子力発電所と風力発電所と太陽光発電から同じ発電量を確保する、71億kWh確保する、という前提をとります。当然ながら、今ご指摘がありましたように、稼働率の違いというのがある。したがって、例えば原子力発電所の場合であれば、71億kWhを発電するのに必要な設備容量は100万kWhということになるんですが、太陽光発電の場合には効率が非常に悪うございますので、100万kWに相当する設備容量というのは675万kWということになります。それで比較いたしますと、71億kWhを発電するのに必要な100万kWの設備容量を有する原子力発電所をつくるのに必要なコストというのが約3,000億円。これに対しまして、同じ71億kWhの発電をするのに必要な675万kWの太陽光発電所をつくるのに必要なコストが6.8兆円ということでございまして、やはり1:20くらいのコスト比較になる、ということでございます。
近藤部会長
それでは。
福川委員(株式会社 電通 電通総研究所所長)
新エネルギーのコストですが、今、一応想定されるコストが(参考資料2)の2ページにあるわけですが、将来、これを引き直したときにどういう条件が実現すれば、これがどういうふうに下がっていくか、というコスト予想の先行きはどういうことになっているのか。これがたぶん化石燃料との、相対比価でどういう条件ができ上がっていくか、ということだと思うのです。「今、こういう状況なので、これは3つのEでやらせざるを得ないんだ」というのですと、説得力に若干欠ける点があって、これは将来どういう政策をとって、どういうところを目標に下げていって、少なくとも3つのEの経済成長を考えるとすれば、やっぱりそこは他の化石燃料とも一応ある程度競争がいけるという展望がないといかなものか、という気がするので、そのへんはどうかということが1つ。
それから、依然としてIEAでは「2010年くらいから石油価格は上がる」という予測なんでしょうけれども、今、世界的に経済成長がかなり鈍化し、アジアも危機は脱したといいながらも、かつてのような成長は実現しそうもない。世界情勢も通貨不安等もあって、今後、どういう成長になっていくのかというと、石油はあまり上がらないのではないか。ということになると、これはまた前提が非常に難しくなっていますが、今は短期的に少し減産して上がっていますけれども、長期的に石油価格はどういう見通しをおもちか、その2つをちょっと教えていただきたいと思います。
有馬統括省エネルギー対策官
福川所長からの「将来どういう姿を思い浮かべているのか」というご質問でございますが、事例をご説明したいと思います。
先ほど企画調査課長のほうからご説明しました太陽光発電の96年度末の導入実績が5.7万kW。これが2010年には500万kWという想定をしているわけでございますが、内訳とそのときの姿についての想定がございまして、例えば住宅用についていいますと、5.7万kWのうち1.2万kW、これは4,000軒程度に導入されているわけでございますが、今、我々フィールドテスト等を通じまして、住宅用の太陽光発電につきましては相当程度の補助金を出しているわけでございますが、こうした措置によって需要が創出されて、それによってマーケットが拡大する結果、現在80万円程度であるものが40万円くらいまで下がって、ここで我々は市場が自立化するという言葉を使っているわけでございますが、それを期待している、ということでございます。
以降、年間の住宅着工件数が約70万件、及びら屋根の葺き替えの戸数20万軒の約1割強、10万軒程度に3〜4kWのシステムが導入される、ということを想定しておりまして、こういった需要の増大を通じて、コストが40万円くらいまで下がっていって、最終的に日当たりの良い住宅、ある試算によると、日本全体で日当たりの良い住宅というのは1,500万軒あると言われておりますが、そのうちの15軒に1軒程度太陽光発電が導入されれば、コストも今申し上げたような低下が期待できるのではないか、という見通しをもっております。
宮本企画調査課長
原油価格についてご説明申し上げます。
「今後、原油価格がどうなるかということについて通産省・エネ庁としてはどう思っているか」と言われますと、正直申し上げて、よくわからないというところかと思います。
お答えできる範囲内で申し上げますと、この見通しではどう想定していたか、というところでごかんべんいただきたいんですが、一応この見通しでは、足元の実績値、96年の実績値が1バレル当たり22ドルであったものを、2010年度においては30ドルと想定します。物価上昇も加えて考えれば、実質ベースではほぼ横ばいだという前提をおいております。横ばいとおくしかないので、おいているということが実態かと思います。
前田委員(関西電力株式会社 取締役副社長)
全然わからないんですけれども、ただいまのご説明で新エネルギーの現状、それから将来、そのへんは非常によくわかったんですけれども、この会議の目的としては新エネルギーと原子力等をエネルギー政策全体の中できちんと位置付けるということなので、原子力についても、これは前回もちょっとご意見があったようですけれども、きちんとした現状評価といいますか、そういうものをここでもう一度やっておく必要があるのではないか、こう思うわけです。
具体的にどういうことをやる必要があるかと申しますと、先ほどから出ていますけれども、現在、原子力がエネルギー供給に占めている比率とか、あるいはそれによって代替された石油の消費量とか、あるいはこれはちょっと難しいかもわからないけれども、それが石油の価格抑制にどのような効果があったのかとか、あるいはCO2をどれだけ削減しているのかとか、あるいはもっと大きく見るならば、原子力によってどれだけ雇用創出とか、産業効果があったのかとか、そういった足元をきちんと見る。今、原子力のいい点ばかり申し上げたわけですけれども、逆にいろいろご批判もあります。原子力に非常に研究開発費等をたくさん使っているんじゃないか、というご意見もあるわけですけれども、どのくらいの費用をかけているのかとか、そういった原子力の現状をきちんともういっぺん整理をして、先ほどお話いただいたような新エネとの比較というか、そこをきちんとやる必要があるのではないか、こう思います。
それからもう1点、先ほどのエネルギー政策の基本の3Eのうちの Security の話ですけれども、将来の石油需給はどうなるか、エネルギー・セキュリティに対する見方はいろいろございましょうけれども、グローバルなエネルギー・セキュリティーもさることながら、日本の国のエネルギー・セキュリティ、それからリージョナルな東アジアのエネルギー・セキュリティということをやはりよく考える必要があろうかと思います。特に東アジア地域は人口増加が非常に大きく見込まれますし、経済成長がやはり相当高く見込まれる。そうしますと、東アジア地域のリージョンとして全体がエネルギーの輸入地域になってくるわけなので、そういうエネルギーの輸入地域というリージョンの中でのセキュリティというと、そこでやはり原子力のもつ意味合いというものが出て、クローズアップされてくるんじゃないか、このように思うわけです。
そういった2点をちょっと申し上げたいと思います。
鈴木原子力産業課長
今、前田委員のほうから「原子力についてもしっかりした評価を行うべきである」というご指摘がございました。前回の部会におきましても、「原子力のもついい面、悪い面を踏まえて、リスク的な分析も行う必要があるのではないか」というご提言をいただいたところでございまして、この点についてはいましばらくお時間をいただきたいと思っております。今、事務局で作業をちょうどこれから始めるところでございますので、いましばらくお時間をいただければと思います。
宮本企画調査課長
第2点、リージョンで見た石油について私の知っている限りをちょっとご紹介申し上げます。
昨年10月、沖縄でAPECエネルギー大臣会合というのが開かれまして、与謝野大臣が議長をやりまして共同宣言をまとめたんですが、その中で、アジアというよりはAPECレベルで恐縮でございますけれども、「APECレベルで2010年に向けてセキュリティが相当が危ないぞ」ということを数字の上で確認した、ということでございました。
3つ数字を申し上げますが、APECレベルで2010年に向けてエネルギー消費は41%伸びるであろう。他方、生産は31%しか伸びないであろう。その差分が輸入になるわけですが、したがって、エネルギーの輸入総量は2倍になるだろう。したがって、危ない。若干平たく申し上げれば、そういうメッセージを共同宣言に入れたことがございます。
最初の説明で3Eの中の最初のセキュリティを日本国内の需要と供給のセキュリティとだけご説明申し上げましたが、実は1点申し忘れたことは、正におっしゃるとおり、東アジアあるいはアジアレベルで見たセキュリティだと思っております。25年前のレベルで見ますと、当時の東アジア地域でエネルギーをボリューム的に見て議論する価値のある経済は日本くらいだったんですが、今や日本を超えるエネルギーを相当の国が日本のごく周辺で使っているわけでございまして、日本一国だけでエネルギー・セキュリティを議論することは実はほとんど意味がないと思っております。うちの長官の言葉を借りますと、「セキュリティ問題について一国平和主義はあり得ない」という表現になりますけれども、そのとおりでございまして、今やセキュリティ問題は実は日本だけではなくて、アジアレベルで一緒に議論をしていかなくてはいけない議論だと思っております。
原委員(消費科学連合会 事務局次長)
5点質問があるんですが、質問すればポンポンとみんな回答が返ってくるので、ちょっと怖い気もするんですけれども、簡単なところからですが、ちょっと遅れてきて、ご説明があったのかもしれませんが、本文の2ページのところで、運輸と民生はとても比率が高い、伸び率が高いというのはよく聞いているんですが、特にこの10年に限ってみると、運輸・旅客という部門が非常に伸びが大きい。やっぱりここの分析と対策というのが省エネの中で一番やられるべきではないかな、というふうに思うんですが、これについてもう少し具体的にお聞きしたいというのが第1問です。
それから2つ目の質問ですが、今日の説明の一番のポイントになるかと思うんですが、7ページのところで「長期エネルギー需給の見通し」ということで、実際に対策ケースをとった場合こう、というふうな構成割合が出ているんですけれども、この構成割合を決めるときの一番制約というのはやっぱり石油だ、というふうに考えてよろしいですか。石油を50より落とすということで、すべてのことが組み込まれてきているのかどうか。それとも原子力を例えばここまで伸ばすから、こういうふうになるのかとか、新エネルギーの伸びはここまでしか見込めないから、こういうふうにしているのかということで、この構成割合を見るときの一番ポイントは、お話からすると、たぶん石油であろう、というふうには思いますけれども、石油では今、47という目標が出ていますけれども、例えばその10年後とかいうふうになると、これを例えば30くらいに落とすというふうな感じがあるのかどうか、ということも含めて、この構成割合をお聞かせいただきたいと思います。その場合いの例えば原子力とか、新エネというのは、ここは2010年までしか書かれていませんけれども、もう少しその先20年くらいどういう構成割合を考えていらっしゃるのか、ということをお聞きしたいと思います。
それから3点目が原子力ですが、原子力を17.4にするということで、これは新しい発電所を16〜20基建設をするということに対応するという話で、これも2年か3年前から出ている話でありますけれども、「16〜20基建設をするということが本当に可能なのかどうか」というふうな議論がもちろん一方で出ております。このことはついては、当面それは考えずに、ここの机上でこういう形で17.4という目標で立てられているのかどうか、ということをお聞きしたいと思います。
それから4点目と5点目は新エネルギーについてですが、新エネルギーについては私も燃料電池とか、太陽光とかに関わっていて、いろいろと見ているんですけれども、一番最後につけられている話ですと、ヨーロッパ諸国と比肩をしても、日本のレベルというのは結構高いということで、割合としても肩を並べるくらいの比率になる、というふうなお話でしたけれども、全体から見ると、やはり1%が3%になるくらいの伸びしか期待はされないということで、全体の中の比率は非常に低いです。
ただ、今、福川委員のほうからもお話がありましけれども、まだいろんな制約がありまして、それからコストについても、原子力はある程度技術的に固まっていますけれども、コストについても非常に流動的な、先ほどkW80万が40万になるというふうな話でしたけれども、これは需給から見ると、そうですけれども、技術開発からすると、もっと下がる可能性があるということがあって、そのあたりはまだ非常にフレキシブルな状況だ、というふうに私は考えておりますので、条件としては非常に厳しいものをつけて、ここの3%が出ているような気がするんですけれども、このあたりについては実際には補助金のつけ方にもいろんな私どものほうにもご意見を寄せていただいておりますけれども、やり方によってはもっと伸びるような気がしておりますので、もうちょっと実情をお聞かせいただきたいと思います。
それから5点目ですが、(参考資料2)の2枚目ですが、新エネルギーについて既存エネルギーとの比較ということで、既存エネルギーのコストとの比較というのが出ているんですが、例えば太陽光発電の場合、電力料金だと、2.5〜6倍というふうな非常に幅のある数字で出ているんですが、この幅というのは一体何なのか。太陽光発電のバラつきによる差なのか、それとも電力料金はそれほど変わりませんから、たぶんそうではないかな、というふうに思いますけれども、この幅の意味を教えていただきたいということです。
それから、私どもとしては原子力、それから火力それぞれに分けてのコスト比較をしたいということで、出してほしいというふうに言っておりますけれども、そういった意味で原子力とか、火力というものと比較をしての太陽光発電のコスト比較というのはどういう形で出てくるのかということも、わかれば教えていただきたいと思います。
河野委員(内外情報研究会 会長)
2つ、3つ意見だけ述べさせてもらいます。
第1に、この議論をやるときに、普通、建前論でいったら、省エネをやることが絶対的な優先順位をもつんですよね。その次に、供給面をどうするか、というのが建前の議論としてある。それは正しいと思うんですけれども、日本の足元の現実と第3次オイルショックなしという前提で話を進める限りは、しかも、さらに炭素税を導入して、そちらの価格を大いに人工的に引き上げるということでもやらないと、ということになったときに、一般家庭がそんなに反応するとは思えない。反応しないのは反人道的で自覚が足らないばかな庶民だ、というふうにはいかない。それは世の中の当たり前の話。
そうすると、省エネのこの目標というのは実現不可能であることは全部わかっている話でしょう。それに比べれば、供給面で、新エネから原子力からいろいろ並んでいるけれども、やり方によってはまだしもこちらのほうが可能性があると思うんです。
もう1つは、今日の説明でいろんな思惑をもって質問されているし、意見も述べているけれども、要するに、新エネというのを、10年後、20年後を全部含めて、我々がどの程度に評価するのか、という話ですよ。原子力については、改めて数字をひねくり回さんでも、ほとんど固定的な評価はあるわけです。現実があるわけです。新エネは、これからスタートして、「無限の可能性をもっている」と日教組が子供に向かって言うような話を言う人もいるし、「いやいや、これはなかなか性格上、問題があるんですよ」と言う人もいる。わからないんですよ。
「電力とか、原子力推進の学者とか、通産省の役人が『新エネを一生懸命やっている。補助金も付けて一生懸命やっている』なんて言うけれども、腹の中では限界があるんですよ、ということを言いたいためにやっているんだろう」というふうな誤解だか、正解だか、曲解だか、ひがみだか知らないけれども、そういう見方をしている人が現にたくさんいるわけです。
そこで問題は、そういう新エネの位置づけをどうするか、というのがものを考える場合のかポイントなんですよ。それをどう説明するかなんですよ。
一番いけないのは、よく原子力の中心でやる人が「技術的にはかなり可能なんだけれども、いろいろ計算してみると、これは限界がありますよ」ということを強調する人がいるんですね。これは理屈の上では正しいんですけれども、こういう言い方をすることは政治的、社会的には全く音痴なんですよ。どういう展開をするかわからないし、少なくとも太陽エネルギーで人間、植物は全部生きているわけで、太陽関係の恵みは無限にあると思っている。これは庶民の体験論なんですよね。一般の人は、その上に光発電が出てきて、原子力が嫌いだというのがあるものだから、「そっちを進めよう」という議論になっているだけで。
結局、新エネの説明をどういうふうにわかりやすく誤解を招かないように、「やっぱりそういうことかね」となることが政策のポイントなんですよ。現に存在して、3割を供給しているわけですから、おのずから原子力の地位なんか決まってくるわけです。しかも、動燃の「もんじゅ」のチョンボを別にすれば、軽水炉というのは世界で全く安全に運転されているんです。実績はあるんですよ。この問題は、新エネをどういうふうにやるか。仕事は「新エネを大いにやる。しかし、限界がありますよ」。その「限界があります」ということを政治的に社会的に対世論的にどうしゃべるか、なんです。
僕は、今の説明もかなりできていると思うんですよ。ところが、なかなか新聞、テレビは報道しないわけだ。これが一番肝心なことですよ。もっとフェアにこの議論を一般国民を相手にやろうと思ったら、報道機関がもうちょっと客観的にフェアに報道するようにならないかんのですよ。「今だってフェアだ」と言うかもしれないけれども、僕の経験によれば、絶対にそんなことはない。これからもうちょっとフェアにやってもらえば、日本のエネルギー選択について、そんなにひん曲がったことにはならないと私は思うんです。
もう1つ。2、3日前に総理府が発表した世論調査があるでしょう。あれはなかなか面白いんですよ。いろんな解釈が可能だと思うんだけれども、その中で六十何%が新エネ期待論なんですね。ところが、ドイツ社民党と緑党が政権をとって脱原発を言いながらなかなかそういかないので、これから勉強して新聞記者を呼んできてやる、というのは大変いいことだと思うんだけれども、あれを見てもやっぱり……。日本では、心情的に何か漠然と新エネに対する期待感が大きい。それも私はよくわかるんです。しかし、同時に脱原発というのは2割くらいだということで、新エネもやらないかんけれども、それで原子力の代わりができるとも思っていないんですね。この統計はそうも読めるんですよ。あの中にずいぶん悲観的な数字もあるわけで、でも、見ようによる。
これからマスコミ媒体が客観的に公平に国の進路を誤らないためにやるか。この2つですよ。
今井委員(財団法人世界平和研究所 理事)
私が伺おうと思ったことはだいぶご返事が出ているんですけれども、6ページの図についてで、4億5600万kl(注3)というのは、「2%の平均経済成長率を仮定し算出」というので、これは消えてしまっていて、4億klになるということは経済成長しないという意味なのか、というのが1つ。
であるとすると、CO2の排出量について、下の「原子力発電4,800億kW、新エネ1,910万kl」。これは「経済成長はしないで、エネルギーは増えないで、炭酸ガスは減る」というふうに読むのか。あるいは「エネルギーについては4億でとまるんだけれども、CO2については下がっている。実際には経済成長はしている。その内訳が10ページに出ているいろんなことで、経済成長をしながらもエネルギーの消費は増えないでいる。それが省エネだ」というふうに読むのか。そこのところがグルグルと回っていて、どういう手順で読んでいくとどうなるのかがよくわからない。
ですから、原子力発電4,800億kWを達成すれば、あるいは新エネのこれを達成すれば、CO2のレベルは下がるけれども、経済成長はするのか、しないのか、というのが1つです。
それから別の質問で、これは先ほどご質問が出ましたけれども、日本だけがエネルギー安全保障のバランスをとっているわけではないので、当然、日本のエネルギー・経済成長にリスクが出てくるときには、ほかの国にリスクが出てくるし、ましてや先ほどもご指摘があったように、アジア全体としては、日本というのは最大手ではなくなっている、という状態ですね。そうだとすると、今の原子力発電を達成して経済成長も達成するのか、しないのかでもって、アジアのほかの国の経済成長というのを達成するのか、しないのか。どっちに読むんですか、ということです。
アジアの経済成長は、人口爆発を考えると、今でも経済成長を想定しないと話の辻褄が合わないというか、話の具合が悪くなる。だとすると、その場合のエネルギーはどこから出てくるのか。日本と同じように原子力をやりなさいということなのか、あるいは石油の価格がうまく調整されて、分散が成り立って、それぞれはそれぞれの必要なものが手に入る、ということなのか。
逆に、リスクのバランスがうまくとれて、2010年までにこういう線が達成されるんだとすると、その間に石油の価格というのは、今ちょうどサウジとベネズエラがいじっているように、価格が一体どういうふうにいじられていくかというのは、今は想像はついても、本当は検討はつかないわけです。
したがいまして、日本の石油の消費が減る分がコストの上昇に伴うものであるとすれば、当然ほかの国もコストの上昇に伴って石油の輸入が減らなければならなくなって、その場合に、当然日本は一番金持ちだから、日本が一番買って、ほかの国は買わなくなって、それはアジアのエネルギー安定を考えるときに非常に具合の悪い話になっていく。あんまり言いたくはないけれども、そうなってしまう、というような気がします。
それから3つ目に、新エネルギーについての話ですけれども、新エネルギーというと太陽光と風力と何とか、というふうに大体決まり物ができていて、河野さんのお話があったように、それについては大体みんな見当はついているんです。
ただ、昔から言われているように、技術について25年先を予測するということは、何もわからない、というのと同じだという話があって、25年先の技術を予測して当たったのはイギリスの小説家だけなんですね。ですから、25年先を論じているときの新エネルギーというのは、今、我々が知っている新エネルギーが、今、我々が知っている形態で伸びただけを想定してやるのか。2010年〜2030年とか、2050年とかいう時期について、エネルギーの総額は想定として考えなければ考えようがないから、考えなればいけないんですけれども、しかし、「そうなるんだ」と信じて、それに伴ってストーリーをつくってしまって、それで本当にいいのか。
いろんなことがバラバラになりましたけれども、そんなことです。
佐々木委員(神戸大学 教授)
全体として本日のご説明は非常にわかりやすかった、というふうに思います。その点では評価いたしますが、2点だけ感じたことを申し上げます。
1つは、最初にお話があった例の3つのEです。これを同時達成するということが我が国の今後のエネルギー対策、政策をつくる上で重要だ。これは当たり前のことですが、本日のご説明を聞いている限りでは、その中で一番最後のE、経済成長のところがちょっと弱いのではないか、というふうに思いました。
いろいろとらえ方はあるかと思いますが、例えば欧米、特にヨーロッパの各国の環境政策をつくるときに議論の焦点はどこにいっているかというと、エネルギー政策あるいは省資源、そういう政策をとったときに各国との競争力にどういう影響を与えるのか、与えないのか、あるいは与えるとしたら何%くらい与えるのか、というところに大体いっているですね。そういうようなご説明というか、分析というのは本日の資料からは出てこなかった、ということがちょっと残念であります。
もう1つ、劣等生という言葉を使われましたが、特に運輸部門における省資源で、10ページに幾つかの対策があるわけですが、非常に難しいと言っておられますが、しかし欧米と比べた場合に、我が国の大都市圏における公共交通のシステムというのは非常に発達しているわけですね。ですから、もしやろうと思えば、もっと抜本的なことをできないことはないと思うんです。いろんな例はありますが、例えばマイカーの使用を抑制するとか、そういうようなことを抜本的に考えれば、かなりのCO2は抑制されると思います。ところが、そういうような実現の可能性の問題があるんですが、そのときのCO2はどれくらい削減されるのか、というようなことは10ページの政策のところには全く書かれていない、というように思います。
その2点です。
住田委員(弁護士)
先ほどの河野委員のお話を聞いていまして、ちょうど私が全く何も知らないままF懇に入ったときの考えを思い出しているところなんですけれども、やはり私たち一般国民が情報を入手する先といいますのは、本当に新聞報道がかなりの割合を占めておりまして、その中で書かれていることが先ほどの総理府の世論調査の結果に反映しているんだろうと思います。
そういう意味で言いますと、河野委員のおっしゃるように、今日のお話にあるような事実関係というのものを、きちんと国民に対して正確な形で情報発信していただくことが本当に必要ではないかなと思っております。
ただ、その場合に、例えば今日のつくり方も、新エネルギーをどういう位置付けにして考えておられるか、ということを聞く場合に、私ども原子力発電の必要性というのは十分に勉強してきて知っているつもりではありますけれども、一方、新エネ等のものに対して、クリーンで安全な、というイメージがあるものに対しても、やはりそれなりの努力をしていただきたいと思っておりますが、この新エネ対策について、最初から「新エネの導入の制約」ということがボーンと出てきまして、潜在性の面における制約、経済面における制約。これも確かに大事なことなんですけれども、まずは導入目標とその考え方というのを打ち出していただきまして、しかも、それに対しての予算措置がどのような形で、今、割合としてどうあるか。伸びているのがそうであれば、逆に内訳項目もどうあるのか、ということをきちっと示していただいた上で、「ただ、非常に難しいんだ」と。最初に難しさをやって、エクスキューズのためにしか新エネはやっていないという姿勢ではないか、というふうな変な形で誤解されることを恐れます。
そういう意味でいいますと、情報発信側として問題だと思いますのは、最後の図表2枚なんですけれども、例えば四角の罫線の中の囲みで、おそらくまとめとして書いておられるんだと思いますが、「再生可能エネルギーのうち、太陽エネルギーについては、世界的にもトップクラス」ということと、「風力発電についは、日本は、近年大幅に増加」。これは裏を返せば、「今までは太陽エネルギーにかなり偏重していて、しかもソーラーシステム等の補助金にずいぶんお金がいってしまっていて、風力の関係では漏れていたのではないか」という新聞の批判記事が出たこともございまして、そういうことで言われかねないわけですから、逆に、どこが問題点であるか、ここらへんにも力を入れるべき、というマイナス情報はきちんと出さないと、どうも揶揄されてしまうのではないか。その次もそうですね。「日本の再生可能エネルギーの導入量は、高い水準である」と書いてありますけれども、大体引き合いにされるのはスウェーデンとか、北欧諸国でございますから、それなら、そこらへんと地理的条件がどう違うので、ここらへんと比べるのが穏当であるとか、一方的に都合のいいところだけを抜き書きするからこそ、逆に痛くもない腹を探られるような部分があるかと思いますので、情報発信として十分ご注意をいただきたいと思います。
木元委員(評論家)
今、住田委員もおっしゃったことと、前に河野委員がおっしゃったこととも関連があるんですけれども、2つばかりお願いしたいことがあります。
1つは質問ですけれども、今おっしゃった「3.新エネルギー導入の制約」のところで、いろいろ住田さんがおっしゃった問題点もるるあると思いますが、「2.経済性の面における制約」の中の点線の囲みの中の設備容量は、さきほどの「71億kWhを発電するには」というご説明の中でわかりますけれども、風力と太陽光発電の場合に稼働率を何%見ていますか。たぶん風力20%くらい、それから太陽光発電12%くらいとごらんになった上での計算だと思いますので、その根拠をちょっと示していただきたいということが1つ。
それからもう1つ、昨日、円卓会議の中でも問題になったんですけれども、原子力は要らないとお考えになっているお立場の方が、「脱原発のシナリオ」という言葉をお出しになったんです。私は、原子力をなくした場合のシナリオを国は考えてみたらどうだ、という前向きのご発言とあえて受け取ります。そして、もしあなたたちがおっしゃるように原子力発電をなくしてしまった場合に、どういう電力供給の形が描けるのか、ということをいろいろの角度から試算してみる必要があると考えております。これは大変な宿題になるかもしれませんけれども、今井委員のおっしゃったように、例えば現段階で先を考えれば、いろいろな技術開発がありますから、これは難しいですけれども、例えば、現段階でCO2排出量は90年のレベルで固定するか、▲6%としてしまう。化石燃料はこれ以上使えない、という制約をつけた上で、原子力をなくしたら、じゃ、何で発電できるんだろうか。後から資金的なもの経済面はついてくるという例えばの計算で、太陽とか、風力とか、あるいはもっと言えば新エネだけではなくて自然エネルギーすべて。地熱も水力も入ります。ドイツは自然エネルギーとして再生可能エネルギーをに入れているはずですから、そういうような形で、原子力反対の方たちがお望みになるような自然エネルギーを使っての発電をした場合には、どういう供給の形が考えられるのか。すると、大変非現実的なものが出てくるだろうと思うんですね。
そういうシナリオ、イメージというものをつくっていただけないだろうか。先ほどからメディアの情報のことが出ていますけれども、そのときに「メディアで言っていることとずいぶん違うじゃないか」と、その差異も明確になると思いますので、やはりそういうものをつくっていただく必要があるのではないかなと思います。
今回、こういう資料をいただいて、大変参考になりますので、それにプラスαで、宿題で申しわけないんですけれども、つくっていただければありがたいと思いますので、お願いと質問です。
長見委員(財団法人日本消費者協会 理事)
今日から参加させていただきますので、もう議論がなかり進んでいる部分に同じことを申し上げることになるかもしれませんけれども、ご勘弁いただきたいと思います。
こういうエネルギーの政策というのを聞いていますと、常に既存の形、既にある日本の形を踏まえて計算されていく、というところに特に環境問題をされる方たちの不満がよく聞かれるわけなんです。私もその点では同じような考えがあります。エネ庁がやっていることなどはエネルギーの観点だけで計算の数値が出ていくわけですが、我々から見れば、もっと大きな観点での日本の国のあり方みたいなのを変えることで、そういうことも変わるのではないか、というふうに思っている人たちもけっこういるわけです。
それは、例えば都市の集中化というような問題ですね。どうしても地方の県レベルでも県庁所在地に集中してしまうとか、もちろん首都圏には非常に集中してしまう。ということは、高層化するとか、運輸上の問題とか、非常にエネルギーを食ってしまう部分になるわけですね。そういうことが、どうしても民生部分をエネルギーを食う構造にしていっているのではないかな、といふうに思うわけです。
そういうことをもっと平準化して、こんなに狭い日本なんですから、もっと地域を分散させていくということによって、そういう無駄なエネルギーを使わないですむことはたくさんあるだろう、というふうに思うわけです。それはゴミの問題も緩和する問題になりますし、要らぬ国民の通勤地獄のような労力を防ぐこともできますし、例えばライフサイクル、ライフスタイルの変更ということも、サマータイムを導入しないまでも変更していく可能性もある、というようなことがあると思うんです。
日本の国の形そのものを少しも変えようとしないで、エネルギーの部分だけを計算していくということでは、もう間に合わないのではないかと思うわけです。ここで数字を積み上げて、2010年という比較的間近なところで見ても、現実的に本当に達成できるかどうかというのは、はなはだ疑問があって、数字をつくられる方たちはもっとそう思っていらっしゃると思うんですね。ですから、もうちょっと国策的なそういう観点をエネルギーの立場からも主張していいのではないかと私は思うわけです。
それから税制上とか、河野委員もおっしゃっていましたけれども、炭素税的なものの導入とか、やはり誘導策をしないことには、省エネのほうに我々の生活はなかなか向いていかないと思うんですね。いつも「民生部分とか、特に家庭生活部門が伸びて落第生になっている」ということを言われると、私は自分が言われているように思うんですけれども、消費者の人の大方は、「じゃ、一体何を切ればいいんですか。暑いのをがまんして、エアコンを切れと言うんですか」とかいう話になるわけですね。
それと、豊かな生活をある程度維持していくという前提の省エネの考え方が正しいのか、というのももう1つあると思うんですね。そういう点を私は率直に出さないといけない、というふうに思うわけです。
それが私の意見です。
それから、1つ質問は、今日の論点に関係ないのかもしれませんけれども、こういうエネルギーの危機的な考え方について、どういう広報をされているのか、それにどれくらいの経費をかけていらっしゃるのか、ということもお聞きしたいわけです。
第2次オイルショックのときのような、モノがなくなる、エネルギーがすごく高価になる、というようなものが出てくると消費者もはっきりとわかるんですけれども、今の状況では、たぶんエネ庁なんかは莫大な労力をかけているという気分があるでしょうけれども、一般庶民の立場になると、何も情報が下りてこないというか、聞こえていない、ということになっていると思うんですね。そういう点、有効に使われているのだろうか、本当にみんなにわかってもらえるような対策が本気で考えられているんだろうか、というようなことを、今日でなくてもけっこうですので、ご報告いただきたいと思います。
内田委員(日本経済新聞社 論説委員)
私、感想だけなんですけれども、最初に思うのは、経済成長で、これは今頃言ってもと思うんですが、2010年くらいの、あと10年くらいということを考えると、かなり短いとも思いますけれども、今のような技術変化の非常に激しい時代だと相当な変化もあり得るということだと思うんです。これは私の感想ですから、感想として聞いてほしいんですけれども、その中で、まず確実にものすごい勢いで変わるんだろうなと関心をもって見ているんですが、情報技術革新ということがありまして、これはアメリカでもここ数年、95年くらいからということで言えば、まだあまり日が経っていないということで、どういうことになるのか。いろんな議論がある段階でわからないんですけれども、人によっては、環境問題とか、省エネ、つまりエネルギー問題というのは、情報技術革命によって相当問題が緩和される。しかも、この発展のスピードというのは、よくドッグイヤーと書きますけれども、人間の1年が7年。つまり、今まで7年かかるやつを1年でやる、というような感じで、たぶんもっと速いんだろうと思うんですね。最近のアメリカの商務省報告などを見ますと、1年経つと全く数字が変わってしまうということですから、こういうことをある程度は考えておく必要があるのかな。つまり、それくらい先が見えない、ということでもあるのかもしれませんね。
それからもう1つは、新エネと原子力という話ですけれども、さっき河野委員もおっしゃいましたけれども、国民というか、我々一般から見ると、原子力発電というのは、最初からあって、「まずこれがあるんだ」ということでずっと言われてきた、というようなことがあると思うんですね。さっき、どれだけ資金投入したかという話もありましたけれども、これは財政も含めて、民間企業、電力会社ですけれども、原子力に大変膨大な資金を投資してきているんですね。一方、新エネルギーというのは、民間では最近ようやく若干のマーケットもできつつあるということで、民間企業で率先して投資しようというところも出てきていますけれども、これまでは現実には民間はほとんど。もっぱら財政でしか資金はこなかったということでいえば、ここに数字がありますけれども、原子力に比べれば圧倒的に少ない金額しか投入してこなかったということでいうと、新エネはなかなか技術的に難しい問題があるということは我々もよくわかるんですけれども、「じゃ、実際にきちんとやってきたのか。まともにやらないで、そんなこと言えるのか」そういう感情があると思うんですね。
それが感想です。
それからもう1つは、先ほどから原子力報道の問題で、河野委員などは昔新聞記者でしたし、いろいろ内情もよくご承知だと思うんですが、これは常に問題になりますし、我々も常に頭にありますけれども、解決の難しい問題があるんです。反省もありますし、私どもは少なくともそれほど間違ったことを書いているとは思っていませんけれども、社会部とか、そのへんの……。新聞社の中の内部事情を言ってしまうのはまずいんですけれども、いろいろ報道体制のあり方というのもからんでいまして、なかなか変わっていかない、ということもあります。
しかし、もう1つは、この前、2月のこの部会で「意見を聴く会」というのがあって、私は出なかったんですけれども、何回か各紙やられた。その議事録を見せていただいたんですけれども、つまり、行政側からの、あるいはこの審議会で議論している側からの情報、円卓会議は私は知りませんけれども、国民一般の人たちと話そう、という今回の原子力部会でやられたあれは果たしてプラスだったのかな、という印象をもちますね。全体でせいぜい2時間か3時間でしょう。しかも、一人一人何人か選んだ人に発言させて、議事録を見ると、議論が30分か40分でしょう。非常にステロタイプの反対意見ももちろんあるわけですけれども、その人ときちんと議論してどうか、ということはあるんですけれども、多くの人は「なんだ、言いっぱなしじゃないか」ということで帰ったんだろうと思うんですよ。ほとんど議論が全くないということでしたよね。ああいうのは反省すべき点はあるかな、と。
それから、ここのところ「もんじゅ」以降、いろいろ事件があるわけですけれども、やはり行政の第一次の対応が非常によくないなという気もしますよね。これにはいろんな事情があるんでしょうけれども、そんな印象をもちました。
石槫委員(東京大学 教授)
今まで何人かの委員の方がおっしゃっていることの繰り返しになるんですが、今日、例えば新エネルギーに関して、いろんなデータを含めてご説明をいただいたようなことは、取り扱いのスタンスは、今までのご意見のように手直しが必要かもしれませんが、先ほどのマスメディア、新聞という話のほかに、できればもう一つ、こういうデータを非常にわかりやすく教育現場に対してきちっと提示していくということが非常に重要ではないかと私は思っております。例えば、高等学校の教科書などを見ると、環境とエネルギーという形で、エネルギーの問題が環境とからめて取り上げられているんですけれども、その中で原子力については、たいていチェルノブイリと廃棄物の問題が書かれいている程度で、あとは新エネルギーに対して、非常に大きな期待感で書かれています。ただし、そういった実際の技術の現状については何も書いてないことが多い。むしろ現場の先生と話をすると、「我々はそういうデータを与えられてない。実際に教科書には詳しいことが書いてなくて、生徒に話をするときに、なかなか突っ込んだ話ができない」というようなことを言われます。今日伺っているのだとちょっとわかりにくいところもあるので、ぜひ、わかりやすい形のものを出していただきたい。
これは前回議論されたということですが、資料3の「2.国民・社会の理解」という中に教育というのがあってもいいのではないか。全くその言葉が抜けておりますので、ぜひ、それを入れていただくようご検討いただきたいと思います。
近藤部会長
ご意見をたくさんいただいたわけでございますが、これごとに委員の間でご議論をいただくべき課題もたくさんあると思いますけれども、それは次回以降、議論させていただくことにいたしまして、取りあえず事務局からお答えできるところについてお答えいただくということで、まず鈴木原子力産業課長。
鈴木原子力産業課長
冒頭、今後の進め方についてご相談させていただいたところでございますけれども、12月は予備日と申し上げましたけれども、さっそく「予備」というのを取り消させていただきまして、12月も行う前提で、原子力産業課長がしゃべると信頼度をなくすということかもしれませんけれども、新エネルギーにつきましては、今回は時間的に制約等ございましたので、ごく簡単にご説明しておりますが、次はもう少し時間をかけさせていただきまして、今日いろいろとご質問をいただきましたところを中心にご説明させていただきまして、それで再度ご審議をいただければ、というふうに考えております。
それから広報の問題、様々な報道につきまして、また私どもの対応、教育につきまして整理させていただきますと、先ほど1月以降と申し上げました「国民社会の理解」のところで、まとめて取り扱わさせていただいたらどうかと思います。私ども今まではマスコミに迎合すると言っては語弊がございますけれども、「マスコミの言われることはごもっとも」と言っておりましたが、私ども、今はできるだけマスコミに対して批判的に臨む姿勢でおります。こういうことも含めましてご説明させていただければと思います。
そのほかの点につきまして、経済成長の問題、また原委員のほうから運輸部門のあり方の関係、それから構成割合の主な制約といいますか、どういうふうな考え方で構成割合をしたのか、また原子力発電というものが16から20基、これは本当に可能なのか、ということにつきましてご意見をいただいたところでございます。この点につきまして、もし近藤部会長にお許しをいただければ、逐次担当課長からお答えをさせていただきます。
近藤部会長
では、よろしく。
宮本企画調査課長
2点。供給見通しの中の構成割合の考え方について、原委員のほうからご指摘をいただいたので、ご説明を申し上げます。
これは先ほど河野委員からもご説明がございましたけれども、供給というよりは、供給と需要を我々は考えるわけですが、まず第1に、河野委員がおっしゃったように、抜本的な省エネをやって、必要なエネルギー需要量を減らす、ということがきます。そういう意味で、先ほどの表の上半分でございますが、需要量をグーッと減らして、なお必要なエネルギー量をどういうエネルギー源でカバーするか、というところで供給にくるわけでございます。
それから先の話で申しますと、先ほどおっしゃった石油を落とすのが先か、原子力や新エネを増やすのが先か、ということでございますが、これは全く同じでございまして、石油は極力減らしたい。先ほど申し上げたとおり、先進国で見ると、大体4割を切っているのが実態でございます。日本はまだ50の半ば、これを何とか落としたい、というのが1つでございますが、同時に原子力、新エネを環境保全という第2の意味の観点から極力伸ばしたい。この2つでギリギリ努力をやった、ギリギリの接点の数字がやっとできた、あるいは省エネを比べて3つの接点がやっとできた、その数字がここに表れているわけでございまして、どれが1番ということはございません。ギリギリの接点をやっとつくったのがこの数字であります。
それから今井委員からご指摘がございました「経済成長率」に関連する数字でございますが、お手元の6ページをもう一度お開きになっていただきたいんですが、ご質問の趣旨は、6ページの下のグラフで、上の折れ線グラフの基準ケースが456(注3)とございまして、これが2%成長の仮定をした。「それでは、そこからグッと抜本的な省エネをやって押し下げた400のところは経済成長しないのか」というご指摘かと思います。
結論から申し上げますと、押し下げてもなお2%程度の成長をいたします。といいますよりも、私ども、この見通しをつくる際のスタンスが3つのEと申し上げましたとおり、3番目のEのEconomic Growth につきましては、2%程度成長を果たすことも目標の一つとしてつくったわけでございますから、最終的に2%が達成できなければ、これは見通しをつくり直す話でございます。私ども最終的には2%にしたわけでございます。
「では、なぜ456(注3)でも2%なのに、押し下げても同じなのか」というご意見でございますが、まず、456、つまり自然体ケースの数字をつくるときに、我々は目標である2%を想定して、たぶん到達するであろう2010年のエネルギー消費の数字をつくったのが、この456でございます。それから抜本的な省エネをやった結果、これがGDPに多少はマイナスの影響がございますが、もし、ものすごく大きな影響があって、差し引き2%を大きく下回るような数字になった場合には、もう一度モデルを回し直す、あるいは政策を練り直す、ということが必要だったわけですが、その検証を実はやりまして、その結果、この抜本的な5,600万klの省エネをやっても、多少のマイナスはございますが、2%の幅よりは下回らなかった、最終的に政策目標である2%程度というのは確保できた、ということが確認できましたので、この数字を使った、ということでございます。
直感的に申し上げますと、なぜこれだけの石油危機を超えるようなマグニチュードな省エネをやっても、なお経済成長がほとんど変わらないか、ということでございますけれども、10年、十数年という長期を見た場合、経済成長に対してプラスの影響を与えたのは、実は省エネ投資でございます。もちろん短期的には省エネはかなり厳しいGDPマイナスでございますが、中長期的にはそれが逆に経済成長にプラスに働いた。それが2010年のベースでいうと、ほとんど相殺をした、というのがこの数字でございます。
取りあえず、私からは以上でございます。
稲垣省エネルギー対策課長
原委員のほうから運輸・旅客部門の対策、佐々木委員からも「輸部門で、もっと抜本的な対策ができないか」というご指摘をいただきましたので、ご説明させていただきます。
資料の後ろの(参考資料1)の3枚目でございますけれども、ここで「運輸部門における省エネルギー対策」ということで、17百万klを省エネすることを目標としております。その内訳が書いてございますが、まず、義務的措置として、省エネ基準のトップランナー方式を採用したということで450万kl。これは、従来はガソリン自動車しか省エネ法では規制の対象としていなかったんですけれども、今回の改正でディーゼル自動車を追加したり、あるいは基準を、従来はいろんな自動車の平均値を目標にしていたんですけれども、トップランナーよりさらに上の、今後の技術開発の動向を見込んで、今はまだ達成されていない、さらに技術開発がこれだけ予想されるということで何%かの向上を埋め込んだ、そういうトップランナー方式の基準を採用しております。
あと、誘導的措置で、いろんなクリーンエネルギー自動車の普及とか、あるいは物流システムとか、交通体系の整備、それから国民の努力ということで、ここではアイドリングの自粛等、いろいろ掲げておりますが、メーカーあるいは国民の皆さん方にこういう最大限の努力をしていただいて、ここで1,700万klの省エネを可能とする、ということを考えております。
それから佐々木委員のほうから「もっと抜本的な対策が可能ではないか」ということなんですけれども、これも前回のオイルショックのときに、日曜、祝日のガソリンスタンドの閉鎖とかいうのをやったわけですけれども、そのとき国民生活に多大な影響を及ぼしたわけです。そういった国民生活に対するいろんな影響ということも考えまして、今回は、そのへんのところはまだ踏み込まないで、これらの対策で一応トータル5,600万klの省エネができるのではないか、というふうに考えております。
これは河野委員がご指摘のとおり、中身にはいろいろ濃淡がございます。濃淡がございますが、これを最大限、国民一丸となって省エネを達成する、ということでございます。
それから長見委員から「エネルギーの観点だけでなくて、もっと大きな観点から考えるべきだ」ということで、都市の集中とか、地域分散とか、ライフスタイルの変更ということをご指摘いただきました。
ライフスタイルの変更に関しましては、この中の木元委員が座長をしていただいておりますスマートライフ分科会というものを開催しております。省エネというと、どうしてもがまんするとか、そういう非常に暗いイメージがございます。スマートライフ分科会、これは従来にない女性だけの委員でご審議いただいているんですけれども、いろんな服装とか、あるいは教育の問題とか、あるいはレシピ、食の問題とか、あるいは建築とか、そういった様々な観点から今ご審議いただいているところでございます。以上でございます。
近藤開発課長
今、原委員のほうからのご質問は「原子力発電所の20基というのについては本当にできるのか」こういうご質問でございます。私どもといたしましては、COP3の国際的な公約を果たすために、資料にございますように、4,800億kWh、約16〜20基程度の原子力発電所の増設が必要だと思っているわけでございますが、一方、私ども今、持っているデータでも、2010年頃までに21基の運転開始が計画をされているところでございます。その中には、すでに着工済みの例えば女川の3号であるとか、浜岡の5号、東通の1号等々、そういうものも含めまして、15基についてはすでにほぼ用地が取得済みというような状況でございます。もちろん、20基、21基というものをすべて予定どおりに着工できるかどうか、なかなか難しい点もございますけれども、私どもといたしましては国民の方々の理解をいただきまながら、立地地域の振興策の充実等も努力を傾注いたしまして、目標の実現に努力をしてまいりたい、このように考えているわけでございます。
稲川資源エネルギー庁長官
大変恐縮でございますが、総括的な部分でちょっと補足を3点させていただきたいと思います。
第1点は、「省エネについて価格効果なしでこれができるのか」というご質問が多々ございましたが、「2ページの部門別最終エネルギー消費の推移」の意味しているところは、全体の5割を持っております産業部門から始まってビジネスに関係する効果が非常に大きく効いた。裏返して、過去25年間に壮大な社会実験の結果、民生・運輸の部分、いわゆる個人生活の部分では効果が効かない、という内容と理解をいたしております。
したがって、需給見通しのときに何を考えたかというと、今から省エネは極めて難しい時代に入る中で、個人の各種の省エネマインドに期待もするけれども、まず機械そのもので省エネをしてしまおう、すなわち、トップランナーでございます。それからインフラでいこう、と。そういう部分を多々織り込みながら、この難しい時代の省エネ、個人生活の省エネにタッチしていこう、ということでございます。
原委員から「運輸増の分析をしたか」というご質問がございましたが、答えは極めて明白でございまして、シフト。すなわち、鉄道に乗らないで自動車に乗る。渋滞をする。積載量が下がる。答えは極めて明白でございまして、その明白なものにどうやって対応するのか、というところから、1つは、インフラなんでしょうけれども、それは10年間で解決できる話でないとすれば、できるところはまず機械から、燃費だというところから入っております。もちろん、インフラのことも入っております。
全体として何を言っているかというと、強制削減の世界には入らない手前まで何ができるかというので、これはつくってあります。これができなければ、片方で供給サイドのものができなければ、あるいは強制削減、電気の割当て、あるいはマイカーの規制、そういう世界に入らざるを得ないかもしれないけれども、その前までにやれることがあるとすれば、こういうことで、こういうことが我々としての価値ある選択ではないか、トライしてみよう、というのがこの全体的な構造でございます。
それから第2点は、石油の将来像をどう考えるか。もちろん、よくわからないわけでありますが、今、短期的に戻しております。これは、短期的な生産削減による戻しのみならず、アジアの中では日本と韓国が非常に大きなシェアでございますが、それが危機の前のレベルのですでに戻っている。
加えて、俗によく言われておりますが、アメリカが1人当たりドラム缶28本使って、中国の奥地では1年間にドラム缶の2分の1も使ってない。生活程度がある程度上がるのはエネルギーでありますので、このドラム缶の2分の1が1本になっても倍増する。
そういう趣旨から見れば、アジアの需要増というのは、経済成長のみならず、いろんな生活水準などから見て、急増するのは必須だろうという考え方で、これはIEAも共通でございます。また、去年の沖縄会議で考えたところもまたそういう並びでございます。
石油で見れば、アジアの需要は10年間で輸入が倍増する。世界でただ一人アジアが中東に依存する。そういう新しい事情が生じているのではないか。石油価格はそういう中で上がるし、日本のセキュリティ問題にもかなり新しい需要が入っている、ということだろうと思っております。
それから第3点目は、新エネの説明の仕方についてずいぶんご意見をいただきました。「エクスキューズのために新エネをやっているのではないか、という印象すら受ける」というお言葉でございました。いたく身にしみます。次にもう1回ご議論をいただくそうでございますので、我々の説論の仕方を含めて、ぜひご指導賜りたいと思います。
以上です。
近藤部会長
それでは、本日は大変活発なご議論をいただきまして、ありがとうございました。本日ご議論いただきました点を事務局で整理・検討いたしまして、再度お諮りしたいと思います。
以上をもちまして、本日の審議は終了させていただきます。なお、次回9月21日、先ほどご紹介したとおりでございます。よろしくお願いいたします。
これをもちまして、第66回の総合エネルギー調査会原子力部会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。
 

最終更新日:2010年2月22日