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 自治体に代わって事業用地などを買い集める全国の「土地開発公社」が抱える借金の処理に、特別に認められた地方債(ローン)で6千億円超の公金が投入されることが分かった。土地が事業に使われないまま、水面下で借金の利子が膨張。生じた多額の損失のツケが、後の世代に回されたかたちだ。

 土地開発公社は自治体の債務保証・損失補償をバックに金融機関から金を借りて公共用地を取得する外郭団体。自治体が借金をして土地を買うよりも手続きが進めやすく、1972年の法律制定後からバブル期にかけて盛んに利用された。

 だがバブル崩壊後、こうした外郭団体の事業は各地で行き詰まる。国は2009~16年度に限り、第三セクター等改革推進債(三セク債)で清算などの処理をすることを認めた。

 朝日新聞が総務省の内部資料をもとに各自治体にアンケートや電話などで取材したところ、三セク債で土地開発公社の借金を肩代わりして解散や一部清算させた県や市町村が133あった。起債の総額は約6100億円。返済は10年以内が原則だが、岩手県北上市や埼玉県川口市、大阪府高石市など13自治体は30年で、より長期に影響が及ぶ。三セク債以外に、自治体の財源から支出したり、自治体が貸付金の回収を諦めたりした分も300億円以上あった。

 公社の借金がここまで膨らんだ要因に、公社が公共用に取得した土地には「かかった費用分の価値がある」と見なせる「簿価」と呼ばれる評価方式がある。

 例えば10億円で買った土地は、実際にその価値がなくても10億円分の資産とみなせる。土地が塩漬けのまま、借りた10億円に利子1億円がついても、土地の価値を11億円に加算できるので帳簿上は損が出ない=図参照。自治体が利子などの経費も含めた額で買い取る約束になっているためだ。だが、計画の甘さなどから、公共事業に使う見通しが立たないまま、利子が膨張。それでも帳簿上は「損」が出ないため、対処を先送りする温床となってきた。公共事業での使用を諦めた時、土地は市場価値を踏まえて評価され、簿価との差額が損失として表れる。

 朝日新聞が、簿価方式をやめて表面化した損失額を各自治体に尋ねた結果、総額は2700億円を超えた。6千億円超の公金投入額の半分近くだ。実際の価値が簿価の1割未満の事例も判明。国は自治体に、簿価方式を改めたうえで三セク債を使うよう事実上求めているが、簿価方式を続ける自治体も多く、損失はより多い可能性がある。

 さらに、15年度末現在で全国に700超の公社があり、10年以上持ったままの土地は8153億円分(4228ヘクタール)残る。(赤井陽介

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〈土地開発公社〉 土地開発公社 1972年にできた「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づいて、全国各地の自治体が設立した外郭団体。自治体の債務保証・損失補償をバックに民間の金融機関から金を借りて公共用地を取得する。その後、自治体は公社から経費も含めた額で土地を買って事業を実施、公社はその金で金融機関に借金を返す仕組み。