中学の社会科の授業で、憲法の条文を繰り返し読み上げ、暗記したことを思い出す。試験に出る、という動機もあったが、覚えることで理解につながったと思う

▼アイドルグループAKB48の元メンバーだった内山奈月さんが、憲法条文暗唱の「特技」で以前注目を集めた。そんな内山さんと九州大学教授の南野森さんが3年前に共著で出版した『憲法主義』(PHP研究所)を手にした。これがおもしろい

▼「自衛隊は合憲と思いますか(南野)」「『戦力』の意味によると思います(内山)」。アイドルの恋愛禁止は憲法違反か-。講義を受けるような対談形式で憲法を考える。法律との違いなど条文だけからは分からない解説が豊富でひきこまれる

▼あらためて気づかされたのが憲法の意味だ。南野さんは「憲法は国家権力を制約することによって国民の権利を守ろうという目的でつくられたもの」と説明する

▼では、国民は憲法を守らなくていいのかと問う。内山さんは「守らなくていいんですか」と驚く。憲法を守らなければいけないのは国家権力で、国民は法律を守る。国家権力は強大なため、憲法はそれを縛るための存在なのだと

▼改正に向けた議論が動いている。さまざまな意見があっていい。大事なのはその議論にどう向き合うかだ。憲法は施行から70年を迎える。(赤嶺由紀子)