FBI長官、大統領選に影響与えた可能性に「いささか吐き気」
米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官は3日、上院司法委員会のFBI監査公聴会で証言し、昨年の大統領選直前にヒラリー・クリントン氏のメール問題について捜査していると公表したことについて、議員たちの追及に答えた。コーミー長官は、大統領選の結果にFBIが影響したかもしれないと思うと「いささか吐き気がする」と認めた上で、「ひどいこと」と「壊滅的」な結果のどちらかを選択しなくてはならなかったのだと述べ、、今でも同じ決断をすると言明した。
大統領選投票日の11日前に、コーミー長官がクリントン氏のメール問題について捜査していると公表したことが、選挙結果に大きく影響した可能性が広く指摘されるなか、コーミー長官自身が自分の選択について公の場で説明するのは、これが初めて。
選挙を目前に、捜査の事実を発表するか隠蔽するか決断を迫られた苦しい状況についてコーミー長官は語り、「ひどい」結果か「壊滅的な」結果のいずれかを選択しなくてはならなかったのだと説明した。
「自分たちが選挙に影響したかもしれないと思うと、いささか吐き気がします。けれども正直言って、今から振り返ってみても、判断は変わりません」とコーミー長官は証言。メール問題の捜査を連邦議会に通知しなければ、それは「隠蔽(いんぺい)行為」に匹敵していたと述べた。
「地上最大の脅威」
上院司法委はさらに、ロシア政府がドナルド・トランプ氏に有利なように大統領選に介入した疑いについて、長官に質問を重ねた。ロシア政府は今でも米国政治に介入しているかとの質問に、長官は「はい」と答えた。
大統領選での経験から「ロシアがおそらく学んだ教訓のひとつは、『これはうまくいく』だったと思う」とコーミー氏は述べた。
ロシア介入疑惑に関する上院調査に関わるリンジー・グレアム上院議員(共和党、サウスカロライナ州)は、ロシアがどのような脅威なのか重ねて尋ねた。
これに対してコーミー長官は「(ロシアの)意図と能力からして、地上のどの国よりも大きい脅威だと思う」と答えた。
長官は今年3月に下院情報委員会で証言し、ロシアによる米大統領選介入疑惑の捜査に関連して、ドナルド・トランプ米大統領の陣営とのつながりも調べていると認めている。
民主党は、長官がクリントン氏のメール問題について公表したにも関わらず、このロシア介入疑惑について選挙前に公表しなかったことを、重ねて批判してきた。
しかしコーミー長官は、2つの捜査をいずれも「一貫性をもって」扱ってきたと説明している。
「選挙が10月27日にあったなら」
長官の上院証言に先立ち2日には、クリントン氏がニューヨークで開かれた「世界女性サミット」で、自分が敗れた一因はコーミー長官の発表だったとあらためて述べた。
「もし選挙が10月27日にあったなら、今ごろ私が皆さんの大統領でした」とクリントン氏は発言。コーミー長官はその翌日の28日に、捜査について議会に通知した。
クリントン氏は「私は勝つところだったが、10月28日にジム・コーミーが(議会に)手紙を書いたことと、ロシアのウィキリークス(ロシアが民主党本部をハッキングして入手した選対幹部のメールを暴露サイト「ウィキリークス」が公表したこと)が合わさって、私に投票するつもりだった人たちに疑念を抱かせ、怖がらせてしまった。2つの出来事が合わさって結果に影響したのは、かなり裏付けられていると思う」と述べた。
クリントン氏のこの発言に対して、トランプ大統領はすかさずツイッターで反論。
「ヒラリー・クリントンにとってコーミーFBI長官ほどありがたい存在はいないだろう。悪いことをたくさんやったのに、無罪放免にしてくれたんだから!」とトランプ氏はツイートし、「トランプ・ロシアのでっち上げ話は、民主党が選挙に負けたことの正当化に使ってる言い訳だ。ただ単にトランプの選挙戦が最高だっただけなんじゃないか?」と書いた。
(英語記事 FBI head 'nauseous' over his possible sway on US election)