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♪「Pon pon pon…」
♪「愛の言葉をリル」
♪「シャイなハートがドキドキ」
♪「あの日観てた“サウンド・オブ・ミュージック”」
♪「瞼閉じれば蘇る」
♪「幼い頃の大事な 宝物だけは」
♪「ずっと この胸に抱きしめて来たのさ… Ah ah」
♪「夜の酒場で Lonely」
♪「あの娘 今頃どうしてる?」
♪「さなぎは今、 蝶になって」
♪「きっと誰かの腕の中」
♪「肩寄せ合い 声合わせて」
♪「希望に燃える 恋の歌」
(豊作)よ~い!(号砲)
(三男)俺を忘れねえでくれ!奥茨城村!
(時子)大好きだ 奥茨城村!
この みね子や時子 三男たちや奥茨城村青年団そして 村中が一つになって頑張っ
た聖火リレーはほんの短い時間ですがテレビで放送されました。
東京でも もちろん 茨城でも。
それは こんな映像でした。では ご覧下さい。
(みね子)始まった 始まった!お母ちゃん 早く!
(宗男)奥茨城が映ってっと!
(ちよ子)「人里離れた小さな村でも聖火リレー」。
(君子)人里離れた小さな村って 何よ?そんなに小さくないわ。(美代子)んだよね。
(テレビ)「来る東京オリンピックに向けて東京・千駄ヶ谷の国立競技場を目指して日本
全国を駆け抜けております聖火リレーは各地で 大変なにぎわいを見せております。そ
の人気に便乗するかのごとくあやかろうとここ 茨城県の北 福島に程近いその名のと
おり 奥茨城村では村主催の聖火リレーが行われました」。
(宗男)便乗とかあやかろうなんつって何か 棘があんな この男! な?(君子)んだ
よねぇ。
(テレビ)「さあ 間もなく スタートです」。
三男だ!恥ずかしいな。
(ちよ子)あれ?(きよ)太郎だ!
(テレビ)「こちらが聖火リレーの実行委員青年団団長の角谷太郎さん」。
(太郎)「奥茨城も 元気でやってるぞと村を離れだ仲間に伝えたいと思い計画しました
」。
何だよ 兄貴 いづの間に!
しかも自分が言いだしたみてえによ!
(征雄)これが政治っつうもんだ。
また政治かよ!(ちよ子)あっ!
走った!(拍手)
(三男)恥ずかしいな。かっこいいど 三男ぉ!
んだか? なぁ 時子。
まぁね。(2人)アハハ!
(テレビ)「第一走者は 角谷三男君。来春には 集団就職で 東京へ向かうことが決
まっている農家の三男坊。いかにも農家の三男坊という顔をしています」。
どういう顔だ。
だからおめえみてえな顔だっぺよ ハハハ!
(三男)あっ 母ちゃん!
「三男! 三男 頑張れ~!」。「三男~!」。
「三男~!」。
(テレビ)「孫を応援する おばあちゃん。おばあちゃんは 孫の雄姿に感動の涙が止ま
りません」。
ばあちゃんつったが 今?(征雄)言ったな。
俺はじいちゃんとは言われでねえ。
どう見ても 母ちゃんだっぺよ。
ばあちゃんには見えねえよ。んだっぺ? あ?
(美代子 君子)フフフフ!(きよ)何で みんな 黙ってんだ?
(笑い声)(きよ)何が おかしいんだ~!
(征雄)まぁまぁ。(きよ)何だよ 全く~。
あっ じいちゃん!
(テレビ)「村の重鎮も見守っています」。
重鎮?
(茂)ながなが分がってんでねえがこの男。 な?
(きよ)どごが~?
(テレビ)「村の子どもたちも一緒に走ります。おや めんこいねえ」。
めんこいだってよぉ ちよ子。ヘヘッ!
分がってんね ながなが。(美代子)いがったね~ ちよ子。
(テレビ)「村の男の子はたとえ 転んでも泣かずにすぐに起き上がります。都会の も
やしっ子とはそこが違う。さすが 大地とともに生きるたくましい子どもなのです」。
大げさだなや そりゃ。
(三男)あっ あっ 時子 時子!
「待ってろよ!」。
(三男)おう~ ほほほほ!
何だよ その気持ち悪い笑い方!
いや だってよぉ ほほ…。
(テレビ)「こちらのスラリとしたお嬢さんは 助川時子さん。奥茨城小町 ミス奥茨城と
村中が認めている村一番の美人さんであります」。
べっぴんさんだよな~。
(テレビ)「夢は 東京へ行って女優さんになることだそうで春には 東京へ夢を追って
旅立つことを決めているそうであります。全国から 同じ夢を持っておらが村の美人が
集結する東京で夢の翼が折れないことを祈ろうではありませんか」。
ん…? 何か 嫌な感じ。んだな。
(テレビ)「それにしても戦後生まれの女性のスタイルの向上には目を みはるものがあ
り」。
(みね子 時子)お~?
(テレビ)「どうか 翼が折れないことを祈るばかり」。
何度も うっとうしいわ!あっ みね子が見えた!(ちよ子)お姉ちゃんだ!
(テレビ)「いよいよ 最終走者は谷田部みね子さん。最終走者が女性であるというのも
新しい時代の女性を象徴しているかのようであります」。
いやいや そんなこどねえよ。
「頑張れ~!」。
(テレビ)「こちらは先ほどの時子さんのお母さんと今 走っている みね子さんのお母さ
ん。お二人によると これでも昔はこの辺りで一二を争う美人であったとか」。
「これでも昔は」って 何よ。
(テレビ)「なかなか 美人の多い奥茨城村。 侮れませんな」。
侮んな!(笑い声)
(テレビ)「みね子さん 涙で 顔がグシャグシャになってしまっています」。
(テレビ)「みね子さんは東京に出稼ぎに行っているお父さんの実さんのことを思って走
っているのです」。
(テレビ)「東京にいる お父ちゃん見てますか?みね子は 元気です。お仕事 頑張っ
て下さい。お正月には帰ってきて下さい。待っています。お父ちゃんに 自分の元気な
姿を見てもらおうと頑張って走っています。村人たちのひときわ大きな声援を受け走る
みね子さん。お父さんへの思いが届くのを祈るばかりです」。
(テレビ)「そして ついに聖火は 聖火台へと点火されます」。
(ちよ子)ついた~!(拍手)
(きよ)万歳!(一同)万歳!
おっ! おお~! お~!
(テレビ)「というわけで まるで金メダルでも取ったかのような奥茨城の秋の一日でした
」。
(テレビ)「続いて ニュースです」。(スイッチを切る音)
(君子)何か あれだね。
いがったんだけどちっと腹立づ感じもするねえ。
何か バガにされでるみでえでよ。
んなもんだっぺ 東京がら見だら。
んだっぺ。
まぁ でも みんな…ね? 楽しかったっぺ? ね?ね?んだな。
(宗男)まぁな… な?いっがぁ いがったか。うん!
でもよ 俺は一つだけ納得でぎねえこどがあんだ。
(茂)えっ 何だ?
なぜ 俺についではとぐに触れないのだろうか。
映ってんのに なぜに何の言葉もないのだろうか。
納得できねえわ。
何だ そんなこど。
いいでしょうよ だって あんた奥茨城村の人じゃねえんだしよ。
君子さん それ ないんでないの?
今 それを問うわげ?
俺はね これでもねずっと この村で育ってね。
(正二)いいんでねえが?ん?
映ってるだげでもいいんでねえの?
(宗男)えっ?(君子)えっ?
あんた 映っでながったの?
あんたの隣で顔が こんくれえ ちらっと。
「頑張れ~! 頑張れ~!」。
(君子)あら~!
(宗男)薄いよねえ昔から 正二さんはぁ。
(正二)うるせえわ。(きよ)確かに薄い。 ガハハハ!
ばあちゃんに言われたくねえわ!誰が ばあちゃんだ!
テレビの人 言ってたっぺな~?(きよ)おめえには影がねえんだよ。
(ちよ子)ねえ!ん?
東京で お父ちゃん 見でたの?
(進)お父ちゃん 見でたの?
ああ 見てたっぺ きっと。
(ちよ子)そっかぁ。(進)そっかぁ。
(茂)おう。
んだな! 見てだな!
うん。うん。見てだ!
さっ みんな おやつにしよっか!
♪~
奥茨城村聖火リレーから 1週間。
今日は1964年 昭和39年 10月10日。
東京オリンピックの開会式が行われる日です。
いい天気だねぇ。
あ~ 本当だね。
日本晴れだっぺ。
んだねえ いがった~。
お姉ちゃ~ん! 始まるよ 早ぐ!
始まる?お母ちゃん じいちゃん 行こう!
(ちよ子)おじいちゃんも 早ぐ!(美代子)早ぐ 早ぐ!
今 行ぐ!
日本人選手 来た~!頑張れ~!(進)日本 頑張れ~!
日本 頑張れ!(ちよ子)日本 頑張れ~!
かっこいいね~!んだな。
(ちよ子)あっ 聖火リレーだ!(進)聖火リレーだ!
(ちよ子)頑張れ!聖火台に 火が… 火が…。ついた~!(拍手)
これ お姉ちゃんがやったやつだ!んだよ。
ここお父ちゃんが造ったんでしょ?
そうなのけ?
んだよ。
(ちよ子)父ちゃん すげえ!(進)すげえ!
<お父さん…。日本中の人が テレビを見ている 今お父さんは どこでどう過ごされて
いますか?オリンピック 見ていますか?お父さん…。みね子は決めました>