次に使用されている漢字に注目してまいりましょう。
247の元号のうち、漢字4文字が天平時代の一時期の5元号、残りの242元号はすべて漢字2文字であります、すなわち延べ504字の漢字が使用されているのでございます。
延べ504字の漢字が使用されてはいますが、一覧を見ても明らかなように使用されている漢字には明らかに偏りがあります。
それでは歴代元号247で使われている漢字の出現頻度を調べてみましょう。
調べたみれば、使われている漢字の種類はわずか72種類であります、1372年間の247の元号でたった72の漢字ですよ、読者の皆さん。
では出現頻度順に全漢字をまとめてみましょう。■表2:「日本の元号」使用漢字ベスト10
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■表3:「日本の元号」使用漢字ベスト10(11位以下)
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うーむ、やはりよく使われている漢字は趣(おもむき)がありますな。
ベスト10の漢字はいかがでしょう、列記して声を出せば、
「永、天、元、治、応、和、長、正、文、安」
「えいてんげんじ、おうわちょうせい、ぶんあん!!」
あら不思議、何やら高貴な祝いのお言葉のような、南総里見八犬伝の水晶の八玉の「仁義礼智忠信孝悌」に似た、霊験新たかな響きが醸し出されるではありませんか。
さて、今は21世紀であります。
元号も「記号化」されてしまう時代です、明治・大正・昭和・平成と直近の元号もそのイニシャルは「M」「T」「S」「H」と異なります。
では、過去の元号のイニシャルを徹底的にヘボン式にて洗い出してみましょう。■表4:「日本の元号」イニシャルベスト10
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■表5:「日本の元号」イニシャルベスト10(11位以下)
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うーむ、意外なことにトップはイニシャル「K」なのでありますね、247元号中63元号、イニシャルKは実に25.5%であります。
また逆に母音でもあるにもかかわらず、イニシャル「U」と「I」の元号は存在しないのでございます、読者のみなさん。
なぜだろう、「う」とか「い」で始まる元号はこの国の過去にひとつもない、ということでございます。
・・・・・・
さてまとめです。
元号法は、この国で法文が一番短い法律であります。元号法(昭和五十四年六月十二日法律第四十三号)
1 元号は、政令で定める。
2 元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 昭和の元号は、本則第一項の規定に基づき定められたものとする。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S54/S54HO043.html
これだけです。
法律が短いということは、関わる決め事が少ないということです、決め事が少ないということはその運用の自由度が高いということでありましょう。
そもそも1372年前、飛鳥時代、「大化」という元号が日本に初めて生まれた時代的背景を考えましょう。
「元号」、君主が特定の時代に名前を付ける行為は、古来中国の王朝が、君主が空間と共に時間まで支配するという思想に基づいて考案したことであります、そこで周辺国は、「正朔を奉ずる」(天子の定めた元号と暦法を用いる)ことがその王権への服従の要件となっていたのであります。
したがって独自の元号が政治的支配の正統性を象徴するという観念は、独自の元号を建てることにより、中国王朝よりも自らの正統性が優越しているか、少なくとも対等であることを示すことができるという意識に基づくことは自明です。
つまり独自の「元号」制定は、時の中国王朝に対するレジスタンス・反抗の意思表示だったのであります。
逆に、中国王朝の政治制度を受容した周囲の王権は元号制度もともに取り入れています、
例えば朝鮮半島では、ときに制定される独自元号はひとつも続くことがありませんでした、独自元号の使用と冊封は両立しない要素であったのです。
実際、中国周辺国で独自元号の使用を実現したのは、中国王朝との戦争に勝ったベトナムと冊封すら受けなくなった日本2国のみだったと言われています。
このような歴史ある我が国の「元号」制度を、はたして経済合理性からだけで廃止することが、許されましょうか?
・・・時代にいかにそぐわなかろうが、元号制度は断固維持すべきであります。
そこにはこの国の尊厳に関わる歴史的必然が存在するのでございます。
そうは思いませんか。
読者のみなさん。
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