古本屋は、これまでに出版されてきた既刊本を扱う商売です。将来の展望や計画を立てるにあたって、どんな本がどのように出版されて、どのように受け入れられてきたのか。はじめに、ある程度の歴史的な流れを押さえておきましょう。
まず、「書籍の新刊点数・発行部数」をみていきましょう。これによると、総発行部数、実売総部数、実売総金額は、いずれも1990年代後半をピークとして、それ以降落ち始めています。しかしその一方で、新刊点数だけは伸び続けています。
そこで、総発行部数を新刊点数で割って、一点あたりの発行部数を計算したのが、「書籍一点あたりの発行部数」のグラフです。これは、同じ古本が平均してどのくらい印刷されているかを示しています。ここでは、一点あたりの発行部数が1985年をピークにして急激に落ちているのがわかります。一点あたりの総発行部数が三万部を超えているのは、1973年から92年までの十年間です。
たびたび「大量出版の時代」などといってきましたが、現在では一点あたりの発行部数は決して多くありません。1985年に四万部を超えたのをピークに、2005年には一万八千部程度まで落ちています。これは1960年頃と同じ数字です。同じ本が大量に印刷される時代は、二十年前に終わっているのです。本の出版点数は増え続けていますが、93年以降は閉じ古本がたさんあるという意味で大量出版の時代ということはできません。2005年に刊行された新刊書のアイテム数は、1960年当時の六倍程度まで増えています。
そして2010年代には、古本はいよいよ多品種少量生産の時代に入りました。これによって、古書店業界にはどのような影響が及ぶのでしょうか。
古書店業界は、何でも二十年遅れで新刊書店と同じ道を歩むという説がもし真実だとすれば、現在の古本の状況を知るには、1990年代はじめ頃の新刊書店の状況を思い起こしてみればいいのかもしれません。